サプライズ連発の学年末フィナーレ【4年3組学級経営物語25】

3月②「来年度の飛躍に向かって」レッツ・トライだ!
文/濱川昌人(よりよい学級経営を考える大阪教師の会)
絵/伊原シゲカツ
4年3組担任の新任教師・渡来勉先生……通称「トライだ先生」の学級経営ストーリー。学年末おたのしみ会で、子どもたちが内緒で進めたサプライズ企画が始まった! そして瞬く間に過ぎていく学年末の日々。4年3組、チーム4年の行方は…。さあ、飛躍の春を目指してレッツ・トライだ!
(3月の回は、新作書き下ろしです)
目次
<登場人物>

主人公。教職1年目。教師になる熱意に燃えて、西華小学校に赴任。 やる気とパワーは人一倍あるものの、時には突っ走り過ぎるのが玉にキズ。しばしば飛び出す口癖から「トライだ先生」と 呼ばれるようになる。4年3組担任。

教職20 年の経験豊富な学年主任。4年1組担任。一見いかついが、 温かく見守りながら的確なアドバイスをしてくれ、 頼れる存在。ジャグリングなど意外な特技も。

教職3年目。4年2組担任。新採のトライ先生を励ましつつも一 歩リード。きまじめな性格で、ドライな印象を与えてしまうことも。音楽好きでピアノが得意。

大和川くん(大和川強/やまとがわつよし)
西華小学校にボランティアで手伝いに来ている教育学部生。小学生時代、イワオジのクラスで、イワオジに憧れて教師をめざす。ルックスがイワオジに似ていることから、クラスメートから「小イワオジ」と呼ばれていた。
トライだ先生にレッツ・サプライズだ!

4年3組、学年末のお楽しみ会。その途中で、黒板に『ありがとう! トライだ先生』の大きな手作り掲示物が張られ、子どもたちは画用紙を片手にニコニコ顔…。
子どもたちからの電撃サプライズに、渡来先生はパニック状態です。
「先生、内緒にしてゴメン。全員で準備したんだ。これから、感謝の気持ちを先生に届けるよ!」
司会のカズが嬉しそうに告げると、渡来先生を中心にした輪の形にイスが並べ替えられました。
「最初はパネルトーク! マリがトップです」
画用紙を掲げ、勢いよく立ち上がるマリ。
「…バレそうになったパネルです。先生、春の遠足の時のトライだ弁当、…絶対に忘れません」
画用紙のパネルに描かれた遠足の弁当。そして電話をしているトライだ先生。…マリの体内時計を治すため、毎朝電話でアドバイスしていたときの様子です。
「最近、笑顔が素敵って言われました。こんな面倒な私を素直にしてくれた先生に、…感謝です!」
深々と礼をするマリ、真っ赤な顔の渡来先生。
「先生の秘密の特訓で、僕は泳げるようになりました。秘密の特訓をしてくれてありがとう!」
プール水泳を描いたパネルを掲げるハジメ。
リュウは得意の漫画で、渡来先生と合作で作った漫画の事を描きました。
「漫画オタクは素晴らしい才能だって教えてくれて、自分に自信が持てたよ。…ありがとう!」

ヒロは、窮地に立った自分と友人を救ってくれた渡来先生に、自分の将来の夢を重ねました。
「僕の夢は小学校の教師です!」
その言葉にみんなが頷き、誰からともなく拍手が湧き起こりました。渡来先生の眼にキラリと涙が光り、やがて止まらなくなりました。
静まり返り、じっと見詰める子どもたち。渡来先生は、ズルズル鼻を啜り立ち上がりました。
「気付かなかったよ、サプライズ。…ゴメンな。こんな未熟な担任でも、君たちのお陰で頑張ってこられた。少しは教師らしくなれた…、かな? この一年間、本当に…、本当にありがとう!」
深々と頭を下げる渡来先生。心を動かされたカズは、涙をぐっと堪えて司会を続けます。
「サプライズ…、続けよう。次は……、あっ、僕だ」