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年度はじめの学級経営のスタートをどうするか【やき先生のとっておき学級経営の実践ノート】①

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やき先生のとっておき学級経営の実践ノート
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やき先生のとっておき学級活動の基礎・基本
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宮川八岐

宮川八岐・元文部科学省視学官による「やき先生のとっておき学級経営の実践ノート」の新連載が始まります。今回のテーマは、「年度はじめの学級経営のスタートをどうするか」です。学校現場において「学級経営」という用語はよく使われています。しかし、必ずしもその内容や方法について正しく理解されているとは言えない現状があります。そこで新連載として、学級経営の概念、その内容や適切な方法などの事例と合わせて基本的な考え方などをやき先生に紹介していただきます。

執筆/元文部科学省視学官・宮川八岐

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「年度はじめ」の捉え方

学級経営のスタートは、学級担任の発表があったその日からです。始業式・入学式の日の前に、それらの日も含めて1年間担任する学級の学級経営をどう進めていくかの構想を立て始めることになります。その際、どれだけ「年度はじめの学級経営」の用意周到に見通しをもつことができるかが学級担任の学級経営力といえます。

そこで、「年度はじめ」とはどう捉えたらよいかです。厳密な規定などないとは思いますが、一般的には4月の1か月と考えてよいのではないでしょうか。ここでも5月の連休前までぐらいを考えています。

入学式の日の風景。
入学式の日の風景。

「7つの実践課題」とは何か

学校・学級生活がスタートする4月は、担任教師としてやらなければならないことが山ほどあります。しかし、肝心なことに見通しをもっておかないと、学習指導要領が求める根本課題の実現は到底叶いません。いろいろありますが、ここでは次に述べる「7つの実践課題」に焦点を当ててみてはどうかと考えています。

①「出会いづくり」の実践課題(始業式、入学式の日からなじめる人間関係づくり)
②「学級目標づくり」の実践課題(学校教育目標の学級化)
③「学級の組織づくり(1)」の実践課題(生活班などの編成)
④「理想・めあてづくり」の実践課題(「○年生になって」の授業を)
⑤「学級の組織づくり(2)」の実践課題(自治的活動の推進組織づくり:オリエンテーションなど)
⑥「生活(活動)づくり」の実践課題(学級生活の充実・向上を目指した活動づくり)
⑦「評価改善づくり」の実践課題(学級担任による年度当初の学級経営の成果と課題を)

上の7つの実践課題は、やき先生の独善的な提案や単なるひらめきなどではありません。<学習指導要領の総則に示されている課題>であり、<生徒指導の充実の課題>でもあり、いわゆる<教育課程を生かす学級経営の実践課題>を重点化して掲げた7項目です。研究校などでは大きな成果を挙げている学級経営の指標なのです。①~⑦は理念上の順番であって、②から⑥は、児童の気付きや教師の助言などで順序は変動し得るダイナミックな展開が考えられるものです。それぞれの課題の取組を具体的に以下に述べてみましょう。 

①「出会いづくり」の実践課題

始業式・入学式の日に!

4月1日から始業式・入学式の日の前日までに、児童とどう出会うか、不安と期待を胸に保護者に手を引かれて学校の門をくぐる1年生をどう迎えるか、学級編成替えをした2年生以上の児童に対してもどう対面するかを準備しておくことが、「学級担任の学級経営の第1の課題」ということです。

「教師と児童の親和的関係」をつくる―自己紹介の工夫を!

学級経営の基本課題の1つが、よりよい人間関係を育成することですが、まずは教師と児童の人間関係を好ましいものにすることです。学習指導要領の総則には「教師と児童、児童相互の信頼関係を築くこと」を求めています。始業式、入学式のその日から信頼関係を築くことは難しいでしょう。

しかし、やき先生は「親和的関係を築くこと」はできると言っています。そのためには、初日の学級担任による自己紹介の工夫が必要なのです。それは学級担任のユニークな「出会いの演出」によって可能になります。つまり、「今度の先生は面白そうだな」「とても優しそうだな」「何でも相談できそうだな」という主観、感情を抱かせる自己紹介をすることが親和的関係をつくることになり、やがて信頼関係をつくることになるということです。

1年生との出会いの演出
1年生との出会いの演出

ある学校の先生方の「出会いの工夫」には、次のようなユニークな実践がありました。校内研修会で、「年度はじめの学級経営・学級活動スタート7つの実践課題(①「出会いづくり」の実践課題)の必要性に目覚めたことから生まれた実践の数々です。

例1「出席の取り方の工夫
A君を呼名して返事を聞いた後、「オッ、A君は大きな声で元気そう。見ると運動が得意そうだね。野球なんか上手そうだが、どう?」などと言うのです。A君はニコッとします。実は、家庭環境調査などでA君がスポーツ少年団の野球チームに所属していることを把握していたことから出会いづくりの演出を考えたのです。

例2「しおりのプレゼント」
色画用紙を本の間に入れるしおりの大きさに切って、穴を開けて紐を付け、その子その子にふさわしいメッセージを書きます。それを一人一人にプレゼントするというのです。

例3「ギター演奏をする」
高校時代からギターを習っている先生が、自分の得意とする曲を「君たちとの出会いを記念し……」と自慢のギターで演奏するというものです。

このほかに、「歌を熱唱する先生」「縄跳びの技術を披露する先生」「折り紙で動物を作ってプレゼントする先生」など、それぞれが個性的な出会いの演出を工夫しているのです。

「出会い」の関係づくりは、共感的触れ合いの生徒指導の機能を生かす学級経営力です。学級担任がこうした指導観に立つことで、児童に学校生活への期待感が生まれ、学級集団への帰属意識が高まるのです。学級担任がこうした出会いを工夫するようになってからは不登校が出なくなったという事例が少なくありません。

「どんな○年生になってほしいですか」のアンケート用紙の配付

アンケート用紙

これまでも紹介している千葉県八千代市立大和田小学校では、ずいぶん前から始業式、入学式の日に配付するものがあります。「どんな○年生になってほしいと思いますか」(保護者の願い)のアンケート用紙です。「明日か明後日には持ってきてください」と言って配ります。そのアンケートは、次の②の実践課題である「学級目標の設定」に生かすために必要だからです。千葉県八千代市立大和田小学校では、それらを模造紙にまとめて掲示します。このことは、研究校などに広がっている取組でもあります。

②「学級目標づくり」の実践課題

始業式、入学式の日に配付したアンケートを回収した後、保護者の願い「どんな○年生になってほしいか」を下の写真例のようにまとめます。児童にも「どんな○年生になりたいか」の思いを書かせます。次は、学級担任は学校教育目標を踏まえて「どんな○年生になってほしいか」の目指す児童像(学級目標)を明らかにすることになります。 その学級目標を児童に示し説明すると同時に、年度はじめの授業参観・懇談会で保護者にも紹介し、「1年間頑張りますので、どうぞお力添えのほどよろしくお願いします」と学級担任の学級経営方針などを説明するのです。

児童も保護者も学級目標は、自分たちの願いや思いが反映されていることを知り、学校、学級担任の方針を理解するのです。学級目標を設定するには、このような手順を踏むことが肝要です。学校教育目標や保護者の願い、児童の思いが学級目標に反映されているという理解が、学校と保護者が協力し連携する具体的な形の1つと言えます。

保護者の願い
保護者の願い。
児童の思い
児童一人一人の思い。
学級目標
教師が設定した学級目標。

教育基本法→学校教育目標→学級目標へ

教育基本法には、「教育の目的は人格の完成を目指すこと」とあります。その人格の構造は<知>・<徳>・<体>であると言われており、従って、学校教育目標が、例えば「進んで学ぶ子」「誰にでも親切にする子」「体を鍛える子」などといった目指す子供像の構造になっているわけです。その学校教育目標を学級化したものが学級目標なのです。 

学級集団があるから学級集団目標としての学級目標ではないのです。また、担任教師の個人的な座右の銘でもなければ、児童がスローガンを設定するものでもありません。

学級担任が学級目標を設定する      

学級目標は、学級教育目標であり、そうした観点で学級担任が学級目標を設定するのが、学級経営の基本課題です。このような考えに立って、保護者、児童、学校教育目標を統合して学級目標を教師が設定するもので、学級会で児童が決めるものではありません。

③「学級の組織づくり(1)」の実践課題

我が国の学校教育において「当番」の仕事が昔から行われていて、日本型学校教育の特色の1つとされていますが、学習指導要領に、特に示されてきたわけではありません。一部の学校以外の全国のほとんどの小学校では、1年生から6年生まで「掃除当番」「給食当番」「日直当番」などが行われています。

当番の組織編成の方法

この当番(掃除・給食)の組織編成は、学校の児童数などとの関係で様々ではあるものの、校務分掌上では「生活指導部」が担当したり、「清掃指導部」「給食指導部」が担当したりし、両者ともいわゆる「生活班」を編成して、例えば、1週間担当させてから交替させ、児童全員がそれらの仕事を輪番で同じように行うようにするというのが一般的です(「自治的能力」を育てる教師力とは【やき先生のとっておき学級活動の基礎・基本】⑦参照)。日直当番については、座席の隣同士(男女)が協力して仕事をする形で毎日交替させるというのが一般的です。

近年、学級の様々な仕事を一人一人に担当させる「一人一役の仕事」の学級経営を行っている事例が見受けられます。しかし、その多くが教師がすべきことであったり、気が付いた児童がすることでよかったり、児童の仕事として適切とは言えないことであったりと、学校の学級経営のあり方が問われる事例を多く目にするようになっています。単なるアイデアだったり、どこかの研究会の実践提案をまねたりするのではなく、研修会などを通して学校としての基本方針の下に実践する必要があります。

日直当番の仕事
日直当番の仕事。

生活班の編成方法

当番など生活指導の小集団の指導である「生活班」は、基本的には教科の学習でも活用してきました。その生活班をどのように編成するかは、年度当初の学級経営の重要な課題です。

生活班編成の基本方針を学校として共通理解を図っている学校もあるとは思いますが、個々の教師に編成が任されているというのが実態だろうと思います。例えば、学級会で決めさせているケース、くじ引きで決めているケース、数人のリーダーを先に決めて、そのリーダーになる児童が自分の班のメンバーを取り合いするというケース、学級担任がいくつかの観点から各班の構成を決めるケースなどが見られます。

理想的な生活班の編成方法は、の学級担任が様々な配慮の下に決めることです。活発さ(リーダー性)、教科の学習面、運動面、人間関係や特別な配慮が必要な児童などを考慮して、可能な限り「均等グループ」となるように編成することです。

ところが、実際の生活班の指導の中には、の編成方法にこだわって、しかもその生活班で教科学習や当番、係活動などすべてを指導するという、いわゆる「生活班万能主義」を学級経営の方針にしている教師もいらっしゃると言います。しかし、学習指導要領は、「個を生かす」を根本にしています。「興味・関心別」や「能力別」「課題別」など学習活動のねらいや特性などで小集団の編成を工夫することが求められています。

給食当番の仕事
給食当番の仕事(生活班)。
計画委員会の活動
計画委員会の活動(生活班)。

④ 「理想・めあてづくり」の実践課題

年度はじめの学級経営の重要な実践課題の1つは、「新しい学校・学級生活への期待感」を高めることです。それには児童たちの不安や心配事を解消するとともに、児童一人一人が希望や目標をもって年度はじめをスタートできるように指導することです。この課題の実現を目指す指導として「○年○組、理想の学級生活のイメージづくり」であり、それらの資料を活用して、「○年生になって」といった学級活動(3)の授業」を実施することです。

それらの事例を次に紹介しましょう。

〇年〇組、理想の学級生活のイメージづくり

の「○年○組、理想の学級生活のイメージづくり」の指導の意義について考えてみましょう。始業式、入学式後に保護者へのアンケート「どんな○年生になってほしいか」を実施します。あわせて児童には「どんな○年生になりたいか」のアンケートを取り、学校教育目標を踏まえて学級担任は「学級目標」を設定します。そうした学級経営に合わせて、「○年○組、理想の学級生活」のイメージづくりを行うようにします。こうしたことが年度はじめの学級経営の重要な課題であると考えています。

目標カード

上の写真は、ある学校の5年1組の児童が短冊に書いた「理想の学級生活」です。これを書かせるに当たっては、その趣旨を説明し、「例えば……」などと児童が思いをはせる様々な例を紹介して、できるだけ具体のイメージを言葉にできるようにしてから書かせることがポイントになります。その際、「どんなクラスが……」と言うと、「明るいクラス」「楽しいクラス」「喧嘩のないクラス」などと当たり前のことしか書けませんから、「こんなことができたらいいな、あんなこともしたいな……」と豊かな学級生活のイメージを膨らませてから書かせます。もちろん相談にのってあげてもよいのです。自分の名前も書かせましょう。

この事例は、模造紙に寄せ書き風にしたものですが、書き上がったら例えば教室の廊下側の壁面などに掲示します。

学級活動(3)「○年生になって」の授業

「7つの実践課題」のうち、前述の①から③は、学級経営の課題ですが、④は「学級活動の授業」になります。学級活動(3)「一人一人のキャリア形成と自己実現」のア「現在や将来に希望や目標をもって生きる意欲や態度の形成」に関わる授業を行うことが学級経営の重要な課題です。その題材として平成10年学習指導要領改訂時から「○年生になって」を例示してきました。例示し始めた頃は、学級活動(2)の題材でしたが、平成29年改訂から学級活動(3)の創設に合わせて移行されています。

年度はじめの児童は、新しい学習や生活、人間関係などに期待があるものの不安も抱いているものです。そこでそうした不安や心配なことを解消し、新しい学校生活への期待感を高めることを目指して行われる授業が重要になります。平成10年改訂の際、学校週5日制への対応もあって教育課程の改善から、それまでの学級活動(2)の題材だった<不安や悩みの解消>と<意欲的な学習態度の形成>を統合して「希望や目標をもって生きる態度の形成」としたものが、再度学級活動の構造が変わって現在の形になったのです。

児童一人一人が学級集団に適応し、主体的に生活できるようにする意欲や態度を育てるには、次のような授業の展開(4段階展開法)が理想と考えています。

1「問題の把握」(つかむ) ―アンケート結果について話し合う

⭕️「新しい学年・学級になって」のアンケートの結果をグラフ(資料)などにまとめて提示。

⭕️<うれしい・楽しみ>も多いが<不安や心配>もあることを知る。

2「原因の追求」(さぐる) ―どんな不安や心配、気になることがあるのかを話し合う

⭕️グループで話し合ったことを発表し合う(グループごとに短冊に書いて提示)。

⭕️学級全体で意見交流をし、予想されることも含めいくつかの課題に分けて整理する。

3「解決策」(見つける) ―課題ごとにどのような解決策があるかを話し合う

⭕️例えば、学習面、生活面、友達関係(人間関係)などの心配事などに関する具体的な問題を話し合う(学年の発達的特質などを踏まえた指導を工夫する)。

⭕️ここで、「学級目標」や「○年○組:理想の学級生活」に触れながら、多様な解決策を見いだす話合いを行う。

4「個人目標の自己決定」(決める) ー自分なりの実践目標を自己決定する

⭕️自分なりの実践目標を「めあてカード」に記入する。

⭕️隣の席の児童とペアになり、互いのめあてを紹介し合い、励まし合うようにする。
(友達のめあてなどを聞いて自分のめあてを修正する児童もいる)
※学級担任からの励ましなどを子供たちに伝える。

ここで研究校などでの実践事例を紹介します。「○年生になって」は学級活動(3)の題材とするのが一般的ですが、本題材に学級活動(2)イ「よりよい人間関係の形成」も関連付けた指導計画(指導案)にしている学校があります。

めあてカード

この考え方は、学習指導要領の総則においても「よりよい人間関係の形成」に関わる指導の充実を特に重視する課題としていることに鑑み、当然ながらその指導の題材として1単位時間を確保はするものの、年度はじめの学級活動(3)アの指導に含めて指導充実を図ろうということなのです。

「めあてカード」を多くの学校では教室のどこかに掲示しています。

⑤ 「学級の組織づくり(2)」の実践課題

学級経営の⑤は、特別活動における児童の自発的、自治的活動を生かす学級担任の指導をどうするかということです。③「学級の組織づくり(1)」では、年度はじめに学級生活や学習活動を維持・充実するための小集団指導の組織の編成に関することになります。このこと自体は学習指導要領上の具体的な課題ではありませんが、学級会や係の活動を児童が自主的に運営する組織編成の指導は教育課程の実践課題です。

教育課程上の意義等に関するオリエンテーションの充実

オリエンテーションの内容で押さえる基本的な課題は、「掃除当番」「給食当番」などの当番の仕事や座席が隣同士のペアで行う日直当番の組織編成や仕事と、児童による自発的・自治的活動としての学級会を運営する「計画委員会の組織や活動」、あるいは「係活動の組織編成や活動」の特質上の違いを明確にするオリエンテーションの工夫が欠かせません。特に、の取組の意義や方法については、児童の自治的能力の育成の観点を踏まえた適切な指導が必要です(「係活動」の指導とは【やき先生のとっておき学級活動の基礎・基本】⑥参照)。

発達の段階に応じた指導の工夫

学級会のオリエンテーションの指導では、特に小学校入門期の段階的な指導の工夫がポイントになります。その実施の仕方には大きく見て2通りが考えられます。1つ目は、1年生が学級生活に慣れてきた頃に学級会のやり方の説明(オリエンテーション)をしてから活動に入る方法があります。2つ目は、教師が学級会を進めて見せながら学級会のやり方などを理解させて活動意欲を育てるといった方法が考えられます。
やき先生は、後者の方法で指導していました。その方法ですと4月の中旬に教師主導で「どうぞよろしくのかいをしよう」といった学級会ができます。“為すことによって学ぶ”の指導原理によるオリエンテーションの機能を果たしつつ、実践活動をしているという考え方です。

係活動についても、1年生のスタートには2通りのやり方があります。1つ目は、オリエンテーションをして最初から組織をつくってスタートするやり方。2つ目は、「一人一役の仕事見つけ」から始め、やがて「一人だと不便だ」ということに気付かせてから何人かで行う係を学級会で話し合ってから実質的な係活動に移行するというやり方が考えられます。やき先生が1年生を担任したときには、後者の指導でした(「係活動」の指導とは【やき先生のとっておき学級活動の基礎・基本】⑥参照)。

2年生以降では、1年生の経験を生かして活動を進めながら、必要に応じて適宜オリエンテーションを工夫していきましょう。

⑥「生活(活動)づくり」の実践課題

学習指導要領は、児童の自発的・自治的活動の充実を求めています。児童が自分たちの手で生活を豊かなものにする実践的態度の育成を重視しているのです。学校・学級生活の中で生起する様々な問題に気付き、学級会で問題解決を図って全員の創意工夫と協力で実現していく過程で人間関係がよりよくなっていき、楽しく豊かな生活を創造できるよう学級経営を工夫することが学級担任に求められています。
研究校など「7つの実践課題」の実践に取り組んでいる学校では、4月に「○年生になって」(学級活動(3)ア)の授業はもとより、学級活動(1)ア・イに関わる生活づくりの学級会を行っています。

年度はじめの学級会の議題

年度はじめの学級経営・学級活動スタート7つの実践課題の1つは、新しい学校生活に期待感をもって「理想の学級生活」の実現に向かってスタートができるように、例えば、「どうぞよろしくの会をしよう」だったり、「進級お祝いの会をしよう」といった4月にふさわしい議題で学級会に取り組んだりすることです。

活動内容を創意工夫し合い、全員で役割を分担、協力し合って計画を実現できるようにすることが、よりよい人間関係や豊かな生活づくりの学級経営の課題です。従って、各学校の学級活動(1)の年間指導計画の「予想される議題例」には、先に挙げた議題例を設定しておくようにします。ただ、学級の実態によっては、始業式直後に「先生、学年が変わったので新しい係を決める学級会をしたいと思いますが……」ということになれば、その思いを生かすダイナミックな学級経営観をもって対応したいものです。

どうぞよろしくのかいをしよう
1年「どうぞよろしくのかいをしよう」(4月15日)。 先生の司会で学級会の前半で「なにをするか」と「やくそく」を決め、後半で「決めたゲームをする」。
2年生もがんばろうね会をしよう。
2年「2年生も頑張ろうねの会をしよう」。大きな声で! 歌(動作化)から始める学級会。

学級活動の指導を生かす教室環境の整備

年度はじめの教室掲示は、今回の 「7つの実践課題」に関わって必然的に生まれるものがあります。「学級目標(保護者の願い、児童の思い)」「○年○組、理想の学級生活のまとめ」「生活班、当番の組織」「係の組織と活動計画表」「1学期のめあてカード一覧」など、徐々に掲示物が増えていきます。

学級担任によっては、例えば、「予想される1学期の学級会の議題例」などを掲示しています。当然ながら「計画委員会の組織」や「学級活動や児童会活動などのお知らせコーナー」は設定するでしょう。ある学校では教室内に「学級生活のあゆみ」を掲示しますが、紹介の意味を込めて廊下に掲示している学校もあります。 

こうした教室環境づくりによって児童は学級生活が豊かに広がっていくことを実感し、この中から学級会の議題が生まれることもあります。集団活動を生かす教室環境整備は、学級経営の基本的な課題です。

⑦ 「評価・改善づくり」の実践課題

7つ目の実践課題は、「年度はじめの学級経営・学級活動スタート7つの実践課題」に関する教師自身の指導の振り返り(自己評価)です。①と⑦はいずれの学級担任によっても変わりませんが、②から⑥は学級の児童の問題意識(活動意欲)や担任教師の児童への働きかけなどでダイナミックに順序は変動可能で、そうしたことも含めて、7つの指導がどうであったかを振り返ることです。

その振り返り(自己評価)には、児童の意識がどうかのアンケートを実施して、「指導の成果と課題」をまとめるようにします。それによっては、不十分だったことについては、その後の指導に生かすようにする必要があります。この実践課題は、4月末あるいは5月連休あたりまでと考えているものです。 

まとめ

今回は、これまで長く講演会などでお話ししてきた「年度はじめの学級経営・学級活動スタート7つの実践課題」の考え方や指導のあり方などを紹介しました。それなりの成果が出ています。また、近年、毎年4月当初の2日から1週間ほどの間は、毎日午前・午後と学校単位だったり、中学校区ごとの小中合同だったり、市町村単位だったりと研修会の講師として招聘されて講義しています。

受講された多くの先生方から、「生徒指導観が変わった」「学級経営や学級活動などの基本的なことについて学校としての共通理解を図ることがなかったことから自己流でやってきて児童には申し訳ないことをしてきた」といった声をお聞きしています。今回、紹介したことが新年度の4月から多くの先生方に活用していただけたら幸いです。

次回は、「学級経営の内容」について整理したものを紹介したいと思います。どうぞお楽しみに!

宮川八岐(ミヤカワ・ヤキ)

宮川先生イラスト

埼玉県公立学校教員、教頭、草加市教育委員会、草加市立氷川小学校校長を経て、平成6年から文部省初等中等教育局小学校課教科調査官(主に特別活動、生徒指導、学校図書館等)に。平成12年から同局視学官。平成16年度国立妙高少年自然の家所長、平成17~20年度まで日本体育大学教授、平成21~27年度まで國學院大學人間開発学部教授を務める。

構成/浅原孝子 イラスト/畠山きょうこ

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