保護者の多様な声に寄り添う、現代の教頭の役割! 7つの保護者相談スキルを身につけよう

連載
GKC(がんばれ教頭クラブ)

元山形県公立学校教頭

山田隆弘

「うちの子は大丈夫かな?」「学校でうまくやっていけるかな?」保護者の悩みはつきることがなく、学校にはさまざまな相談が寄せられます。こうした保護者の不安を解消し、学校への信頼を高めることは、教頭の重要な役割とも言えます。他のせんせいたちに範を示すことにもなりますし、また他のせんせいの業務の軽減にも繋がりますね。教頭が保護者との電話相談で実践できる、具体的なコミュニケーションスキルを紹介します。学校と家庭のかけ橋になりましょう。

【連載】がんばれ教頭クラブ

1 「現代の保護者」とは?

地域コミュニティが喪失し、地方都市ですらパーソナル化が進んでいます。学校や保護者が置かれている状況は、かなり深刻です。

① 「わが子」が最優先である

少子化や核家族化が進み、親と子が一対一で向かい合うような環境が当たり前になりました。そのため、「わが子」中心の考え方が極端になり、学校やほかの児童との関係性よりも、個人の成長や幸せを最優先してしまう傾向が見られます。そのため、学校のルールや規律などの集団生活への適応より、わが子の個性や才能を伸ばすことの方が何倍も重要だと感じ、過度な要求をするケースが頻繁に起きるようになりました。

②不安と孤立感を抱いている

少子化や核家族化に伴い、子どもを持つことは多くの親にとって人生最大のイベントとなりました。そのため子育てに関する不安やプレッシャーも増大しています。 SNSでの過度な「幸せアピール」や、子育てに関するさまざまな誹謗中傷、さまざまな子育て専門家の百家争鳴な意見の多様化は、保護者をますます困惑させます。
そして、わが子が「普通」であるか否かについて過度に不安を感じています。わが子の将来について、漠然とした不安を抱き、わが子に高い目標を課してしまいます。そして子育てに関する悩みを相談できる相手が身近におらず、孤立感を感じています。

③多様な価値観が混在する

現代社会は、多様な価値観が共存する時代となりました。教育についても、従来の価値観にとらわれない新しい考え方が求められています。しかし、多様な価値観が混在する中で、保護者と学校の間で教育に関する認識のズレが生じることが頻繁に起きています。
特に、大学の入試制度や教育課程に関する情報が複雑化し、保護者が適切な判断を下すことが困難になっています。
例えば、個性を尊重する教育と、規律を重んじる教育のどちらを重視すべきか、保護者間で意見が分かれます。子どもの将来の進路について、親の価値観と子どもの希望が異なる場合も生じています。

④「理解してあげたい」感で一喜一憂する

少子化が進行している現代、親は我が子に深い愛情を注ぎ、わが子の将来や教育への期待は大きく、子どもに高い目標を課したりします。
それ故に、親は我が子を「もっと理解してあげたい」と願っています。しかし、子どもは言葉で全てを説明できません。親は子どもの行動に過敏に反応する傾向があります。そして、子どもの行動に一喜一憂してしまい、子どもを束縛してしまうことがあります。その結果、親子間のコミュニケーションがうまくいかず、親は孤独を感じてしまっています。

⑤相談する同世代の保護者とつながっていない

現代社会は、近所づきあいが希薄になりがちです。昔のように子育ての悩みを気軽に相談できるご近所さんや親戚などが少なくなってきています。また、同じ学級内での保護者間の交流やつながりもかなりなくなってきています。理由としては、近所づきあいのコミュニケーションからネットやSNSでの交流にシフトしてきたこと、仕事をもっているのでなかなか子育てに関わる交流にいたらないということがあげられます。

これらの現状により、保護者は、とにかく解決の糸口を見出したい! 学校側に援助を求めたい! と電話(場合によっては面談)による相談依頼をしてくることが多くなりました。

 保護者からの相談に応じるポイント

こういった悩みをもつ保護者が相談してきたとき、どう応えればいいでしょうか。ここでは、7つの視点でのポイントを実際の学校での対応についてまとめました。

①波長を合わせる

保護者とのコミュニケーションにおいて、相手の話すスピードやトーンに合わせていくことがとても大切です。ズレていると、初めから悪い印象を持たれてしまいます。波長が合っていると自分が理解されていると感じ、信頼関係が築きやすくなります。電話でのファーストコンタクトから相手を見定めます。相手の立ち場に立って、理解しようと努め、共感の姿勢を示します。
「お子さんのことですね。お悩みなんですね」
と相手の言葉に共感の言葉を加えることで安心して話せる雰囲気をつくっていきます。
(もし自分が同じ立場だったらどう感じるか)と相手の立場に立って、その状況を具体的に想像してみましょう。そうすることで、相手の気持ちにより深く共感することができます。

②うなずく

保護者さんの話を聞いていることを示すためには、適度にうなずくことが重要です。電話での応対では、「はい」といった言葉を入れながら、実際にうなずいていきます。うなずきは、保護者さんに対する関心と理解を示すノンバーバル(非言語的)なサインとも言えます。
話の区切り、重要な言葉の後などに、共感していることを感じてもらい、安心してもらえます。
また、まずは相手のことを否定せず、価値観を尊重しながら、話を一通り聞いてあげることも大切です。

③相づちを打つ

保護者の話に対して、「そうですね」「おっしゃるとおりです」「なるほど!」などの相づちをうつことで、相手は安心して話を続けていることができます。
例えば保護者から、わが子が最近落ち着きがない、という相談があったときには、
「そうなんですね。学校でも同じような様子がみられるか、担任に聞いてみたり、わたしもしっかり観察してみたりすることにします。いっしょに確かめていきましょう」
と相づちを打っていきます。
「〇〇さんと話していて、私も似た経験をしたことがあるのを思い出しました」
など、相手の言葉を使って共感の気持ちを伝えることで、より深い共感が生まれます。
相手の言葉に寄り添い
「〇〇さんの気持ち、よく分かります!」
など、相手の言葉に寄り添うような言葉かけをすることで、安心感を与えることができます。
また、具体的な行動で共感を示して、
「〇〇さんのために、できる限りのことをしたいと思っています」
など、具体的な行動で共感を示すことで、信頼関係を築くことができます。

④繰り返す

保護者さんの話を正確に理解し、共感していることを示すために、相手の言葉を繰り返すことが重要です。相手の言葉をそのまま繰り返すことで、聞き漏らしがないか確認し、正確に理解していることを伝えます。
あるいは、少し言い換えて繰り返すことで、より深く理解していることを示し、相手の話を整理することもできます。
保護者から、
「最近、うちの子が学校に行きたがらなくて困っているんです」
という相談があれば、
「お子さんが学校に行きたがらないとのことですね。とても心配ですね」
重要なキーワードを繰り返し、強調することで、より効果的にコミュニケーションを取ることができます。

⑤感情の反射をする

保護者さんの感情に共感し、言葉で表現することで、より深い信頼関係を築くことができます。相手の言葉から感情を読み取り、それを言葉で表現します。共感の言葉を使うことで、相手は自分の気持ちが理解されていると感じ、安心することができます。
保護者さんから
「うちの子が最近、友だちとけんかばかりしてしまって…」
という相談を受けたとき、
「お子さんがお友だちとけんかばかりしてしまうのですね。とてもお困りで、心配ですね。お察しします」
と具体的な言葉を使って、相手の感情を具体的に表現することで、より深い共感を得ることができます。

⑥最後まで聞く

共感の第一歩は傾聴から。
相手の話を最後まで聞きましょう。途中で遮ってしまうと、相手は話を打ち切ってしまう可能性があります。相手の気持ちを理解しようとする姿勢を見せつつ、相手の言葉に耳を傾け、相手の言葉選びやトーンに注意を払い、その言葉の裏に隠された感情を読み取ろうと努めましょう。

⑦具体的な質問をする

相手の話を一通り聴いてから、質問することで相手の訴えを理解していきます。
「具体的にどのようなことがあったのですか?」
「それはいつ頃のことですか?」
など、具体的な質問をすることで、相手の話をより深く掘り下げることができます。
また、
「その時に、〇〇さんはどう感じましたか?」
「どんなことを考えましたか?」
など、相手の気持ちを尋ねることで、本音を聞き出すことができます。
さらに、
「何か他に気になることはありますか?」
「今後、どのようにしたいですか?」
など、解決策を探るためのヒントを得るような質問も有効です。

3 担任による面談にも…

一生懸命学級経営をしており、児童からの人気もある担任が、なぜか保護者の受けが悪い場合があります。
実は、こういった担任には、ストレートにものを言ってしまう傾向があります。それによって、保護者が自分の考えや意見を否定された、あるいは悩みを拒否された、と受け取ってしまうことが大方の原因のようです。
なぜ、担任の先生はストレートな言葉遣いをしがちなのでしょうか? そこには、教育現場の厳しさ、多忙さなどが影響している可能性があります。
早急に解決したいという思いが先に立ってしまい、事実だけを前面に出して話してしまうことが多くなる、というわけです。
より良い指導のためだと思っていても、言葉の選び方によって、逆効果になってしまうことがあります。

元百貨店お客様相談室長の関根眞一氏は、保護者からの苦情や相談に対する学校の問題点として、

対応事例を学ぶ場がない。つくらない。研究しない。
教師が保護者の話を最初から真剣に聴かないことがある。
話の腰を折り、言いわけや正当性を主張する。

といったことを指摘しています。
そこで、教頭(副校長)として、本記事で示した7つのポイントをぜひ担任のせんせいにも示していきたいです。

校内で研修会をもったり、事例を共有したり、保護者との個別面談の事前指導でポイントを話したりしながら、担任が保護者さんとの良好な関係を築いていけるように見守っていきましょう。
それが、児童の成長をサポートし、より良い学校づくりにつながっていきます。

4 人生に関わる相談も…

保護者からの相談には、子育てや教育に関わることだけでなく、家庭生活のこともあります。
中には、離婚危機、夫婦間の問題、DVに関わる深刻な相談もあります。
教頭としては、先の対応スキルを生かしながら丁寧に聴き、きちんとメモをとるなど記録して、保護者の絶対的な味方になる、というスタンスをとることが大切です。
そして、次のステップを考えていきます。専門機関との連携です。弁護士、カウンセラー、児童相談所、警察、行政の相談窓口など、適切な相談先をアドバイスします。
各機関の連絡先や機能を具体的に伝え、保護者さんが安心して相談できるようサポートします。
また、連携先と保護者の状況を共有し、適切な支援策を共に検討します。
専門機関のアドバイスから、児童への支援を強化する必要性が出てくることもあります。
学校全体のサポート体制の構築、地域社会との連携など、これらの取り組みを通じて、学校はより安全で安心して過ごせる場所となり、児童の健やかな成長を支える頼もしい存在になっていきます。

相談してくる保護者には、感情的なタイプ、論理的なタイプなど、さまざまなタイプがあり、また、外国籍、文化背景や経済状況など、昨今はより一層多様性が増してきています。
しかし、保護者の話をじっくりと聞き、共感することが、いかなる場合でも解決の第一歩になります。相手の話を遮らずに最後まで聞き、相手の立場に立って考え、具体的な質問をすることで、より深いコミュニケーションを築いていきましょう。また、相手の言葉を使って共感の気持ちを伝えることで、信頼関係をより深めることができます。これらのポイントを意識することで、保護者の方々は安心して相談でき、より良い解決策を見つけることができます。

イラスト/坂齊諒一

【参考資料】
信頼関係をつくる保護者対応 (保育ブックレットシリーズ②)/遠藤清香 (著) 山内紀幸 (監修)/一藝社
なぜあの教師は保護者を怒らせるのか プロ直伝! 学校の苦情取扱説明書/関根眞一/教育開発研究所
保護者トラブルを生まない学校経営を“保護者の目線”で考えました/永堀宏美/教育開発研究所


山田隆弘(ようだたかひろ)
1960年生まれ。姓は、珍しい読み方で「ようだ」と読みます。この呼び名は人名辞典などにもきちんと載っています。名前だけで目立ってしまいます。
公立小学校で37年間教職につき、管理職なども務め退職した後、再任用教職員として、教科指導、教育相談、初任者指導などにあたっています。
現職教員時代は、民間教育サークルでたくさんの人と出会い、様々な分野を学びました。
また、現職研修で大学院で教育経営学を学び、学級経営論や校内研究論などをまとめたり、教育月刊誌などで授業実践を発表したりしてきました。
『楽しく教員を続けていく』ということをライフワークにしています。
ここ数年ボランティアで、教員採用試験や管理職選考試験に挑む人たちを支援しています。興味のあるものが多岐にわたり、様々な資格にも挑戦しているところです。


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