夏休み明け!2学期リスタートで失敗しない「事前準備」完全ガイド

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埼玉県公立小学校教諭

紺野 悟

夏休みの終わりが近づき、教育現場では2学期のスタートに向けた準備が始まっています。多くの教員が、新学期をどのように迎えるべきか試行錯誤している中、埼玉県公立小学校の紺野悟先生が、その準備と心構えについて詳細なガイドを提供します。2学期のリスタートを成功させるための「事前準備」、そのまま真似てもよし、アレンジしてもよし。先生方の状況に合わせてご活用ください!

執筆/埼玉県公立小学校教諭・紺野悟

イラストAC

1.いよいよ夏休みが終わります。リスタートの準備していますか?

さあ、まもなく2学期が始まります。地域によっては、もうすでに始まっているところもあるでしょう。2学期が待ち遠しい人も、もう始まるのかあ……と憂鬱な気持ちになっている人も、「夏休みが終わる」という事実は変わりません(きっと子どもたちの中にも、同じように思っている子がいることでしょう)。どちらの思いがあるにせよ、新学期に「良いスタートを切りたい」というのは共通する思いです。

そこで、どの先生もそれぞれの思う方法で「2学期リスタート」を行うのですが、なんとなくアクティビティをいくつかやってみたり、黒板アートを描いてみたりしようとしていないでしょうか。そして「結局、これは何になってるのかなぁ?」と思うことはありませんか。

以前の記事でも紹介しましたが、アクティビティにも、黒板アートにも、それぞれ目的があります。大事なことは、目的を達成するために、どの順番でやるのか考えることです。ただ楽しければ良い、学校で決まっていることをやれば良いということではないのです。

ということで今回は、2学期リスタートの準備を完全ガイドしていきます!

2.リスタート初日で何を目指すのか、言葉にしてから準備を開始しよう

「夏休み明け、1日目でどんなことを目指しますか? なんとなくでもいいので、思っていることを言葉にしてみてください」

先日、ある学習会でこの質問をしました。そこで5人の先生がこのように言いました。

A先生 全員が1日目を楽しんで帰れるようにしたい。
B先生 穏やかに始まり、笑って帰れたらそれでOK。
C先生 子どもたちのスイッチを入れる。
D先生 子どもたちが自分で考え、スイッチを徐々に入れる日にする
E先生 夏休み前までに学んできた学級のシステム・ルールを再認識してから始める。

まず、何よりも5人の先生が1日目に目指すことを自分の言葉で表現しました。このこと自体が価値のあることです。自分の言葉にすることで、ずっと目指していくことができますし、力のある取組になります。

その学習会では、これをもとに1日目にどんなことを目指すのか、その裏にはどんな教師の願いが含まれているのか、話し合いました。その一部を抜粋します。

A先生 全員が1日目を楽しんで帰れるようにしたい。
◯ 「全員ができる」はとてもすごいこと。
◯ みんなで進んで行こうとする意識が強い。
△ でも「全員」を目指すと達成のハードルが高くなりかねない。
△ 目指しすぎて自然と厳しさが増す危険性がある。

B先生 穏やかに始まり、笑って帰れたらそれでOK。
◯ 穏やかさは教師の余裕につながる。余裕を持って接することができる。
◯ 「笑って帰る」にハードルを設定。帰り前に何をするかが重要。
△ 穏やかさと、ゆるさ・甘さとは、似ているようで違う。でも自分では気付けない。
△ 笑ってなんでも許してくれる先生にならないように。

C先生 子どもたちのスイッチを入れる。
◯ 子どもたちを乗せたり、動かしたりして、教師がファシリテーションする様子。
◯ 教師がさまざまな仕掛けを用意することでどれかに引っ掛かるだろう。
△ 子どもたちのスイッチを教師が入れるというのは、子どもたちは受け身?
△ 自治的な集団を目指すなら、子どもたちは入れられる側にならないように気をつけましょう。

D先生 子どもたちが自分で考え、スイッチを徐々に入れる日にする。
◯ 子ども主体であることが素晴らしい。
◯ 自分の頭で考えることで、日常が面白くもなるし、学級が育つと思う。
△ 子ども主体と、丸投げ・投げっぱなしとは違うので、気をつけなくてはならない。
△ 教師主導よりも、仕掛けや声掛け、教師の関わり方に技術・見る目が必要。

E先生 学級のシステム・ルールを再認識してから始める。
◯ 初めに確認しておくことで安心して生活できる子がいるのは間違いない。
◯ システムを再認識することで「自分たちでできるじゃん!」という認識も生まれそう。
△ 初日に全てやっていたらつまらない1日になるのでは?
△ 再認識することで、どんな日にしたい? 再認識は手段のような気がする。

どの先生の言っていることにも良い部分があります。このように、目指そうと見据えている部分がある一方、見えていない部分もあるのも事実です。だとしたら、「逆の効果はないかな?」と考えておくことが重要です。

①2学期1日目に目指すことを言葉にしてみる。
②そこにマイナスの効果はないか考えてみる。

こうやって考えてみると幅が広がります。

Aさんは、「全員が楽しんで帰ることを目指す」と初めに書いていました。しかし、学習会を通して「全員を目指すことは変わらない。でも楽しんでなさそうな子を見つけて、3日目までには声をかけるようにする。できたら、外で遊んだり下駄箱まで喋りながら行ったりして笑って帰れるように心がけよう」となりました。こうすることで、どんなふうに2学期を始めるか、心がけるか、過ごすかが自然と見えてくるはずです。さらには自分が目指す2学期全体も見えてくるのではないでしょうか。

3.リスタートへ向けて考えておくべきいくつかの選択肢

スタート初日で目指すことがイメージできたら、残された夏休みの出勤日の隙間時間を使って、学校でしかできない準備をしましょう。ただし限られた時間で行うわけですから、できることには限りがあります。優先順位を決めて行いましょう。

また、準備にはいくつかの選択が求められます。先ほど「何を目指すのか」を考えましたが、自分が思うゴールに向かってよりメリットが高い方を選択しましょう。言い切れない部分もあることを承知の上で、メリット・デメリットの両面から考えてみることにします。ご自身でも考えてみてください。

※以下の各リストで、◯がメリット、△がデメリットですが、メリットが多いからいい方だというわけではありません。目指す方向によって変わってきます。

①教室を掃除しておく? しないでおく?

子供たちが来る前に、教室の掃き掃除をし、モップをかけ、窓を掃除し、空気を入れ替え、全員の机を拭いておく……そうして初日を迎えることはとっても素敵なことです。が、もちろん、あえて何もしないでおき、初日の1時間目の授業で子供たちと一緒にやることも可能です(ただし初日の貴重な時間を使うことにはなります)。全部ではなく少しだけやっておくという手もあります。先生が事前にやっておけば、それだけ子供たちと掃除した前後の「目で見てわかる変化」は小さくなっていきます。さあ、あなたはどうしますか?

②登校順で宿題を出してもらう? 名前順に回収する?

前回の記事夏休み直前! 失敗しない1学期「学級納め」完全ガイド)では、夏休み前に宿題の提出場所を作っておくことを提案しました。もしそのようになっていれば、朝登校してきたらすぐに提出してもらえますし、そうすれば朝の始業式開始までにおおよそ回収ができ、授業の時間で回収する必要がなくなります。しかし表裏が逆だったり、写真のようにぐちゃぐちゃだったりするかもしれません。名前の順に並び替える必要があることもあります。

あるいは、授業の時間になってから名前の順に回収するのも一つの手です。そうすると、名前の順で回収ができますし、忘れた人が誰なのか把握することもできます。ですが、時間がかかります。さあ、あなたならどうしますか?

③黒板アートを描いておく? 描かない?

最近は減ったように思いますが、学期初めの時期になると、SNSにたくさんの黒板アートが見受けられます。私も何度も書いたことがあります。黒板アートを描いておくと、登校してきた子どもたちの話題になったり、笑顔で入ってきてくれる割合が増えます。そうすると、穏やかな雰囲気を醸成してくれる機能を果たします。キャラクターの目の部分を抜いておいて、「どの目でしょう?」なんてクイズにしても面白いです。

ですが当然、黒板アートは、こだわればこだわるほど時間がかかります。にもかかわらず、学級によっては、子供たちが黒板アートに触れてくれないこともあります。いわゆるスルーです……。さあ、あなたならどうしますか?

④初日から宿題を出す? 出さない?

これは普段から宿題を出している学校(学年)であることが前提ですが、初日から子供たちに宿題を出すことで、日常のルーティーンを早く取り戻させる効果があります。新出漢字だけでも、音読課題だけでも良いでしょう。

一方、初日から宿題を出すと、子供たちからは「え、いきなり宿題あるの? ええ〜!」と不満の声が上がったり、重たい空気が流れたりするかもしれません。

宿題は宿題でも「明日、忘れ物がないということが宿題です!」という先生もいます。あなたならどうしますか?

⑤みんなで外(もしくは体育館)で遊ぶ? 遊ばない?

ここでは教室で行うアクティビティではない、外や体育館での活動を取り上げます。

初日はレクリエーションをして準備運動をしたい!」という先生も多いでしょう。日常的にレクリエーションやアクティビティを取り入れている先生は少ないですが、なぜか初日は多くの先生が行っています。初日は子供たちも休み明けでまだ気持ちも入っていない状況で、体を動かすことを通して慣らしていく効果が期待できます。

一方で、学級や学年によりますが、鬼ごっことかドッジボールとか、そういった活動が苦手な子がいる場合もあります。準備運動どころか、関係に溝が見えてしまう初日になるかもしれません。外で思いっきり走ることは何事にも変え難いものであることは事実なのですが、さあ、あなたならどうしますか?

4.メリットとデメリットで見えてくること

以上、いくつかの選択について、メリット・デメリットを上げてきましたが、あくまでもメリットまたはデメリットになる「可能性がある」ということを取り上げただけです。黒板アートを描いたからといって、必ず良い雰囲気になるわけではありません。全員が話していても、準備が終わらないわけでもありません。そうなるかもしれないし、ならないかもしれない。なった場合にメリットまたはデメリットが高くなるものだ。そういう観点をもてていれば、視野が広がり、メリットを最大化し、デメリットを最小化するよう心がけられるはずです。これこそが、取組の効果を高めてくれます。

ただ、別な理由でデメリットが最小化される場合があります。たとえば、絵を描くことが好きだから黒板アートを描く時間が何時間かかったって全く苦じゃないような人は、ただ楽しみながら娯楽として描けるわけですから、教育効果は二の次でも全然OKということになります。

5.1日目のスケジュールを確認しよう

これらの方向性を決めたら、次に1日目のスケジュールを確認しましょう。学校によって時間数が異なります。私の勤務する学校では、朝のモジュールで始業式がオンラインで行われ、1時間目に若干延長する感じで終わります。また3時間目に一斉下校があるので、自由に使える時間は下図のように1時間目の途中からと2時間目までということになります。

皆さんの勤務校では、どのくらい時間があるでしょうか。ぜひ確認してみてください。

このように、活動時間が限られていることが分かれば、時間的にできること・できないことが見えてきます。例えば先ほど上げた例で言うと、1時間目に子どもたちと掃除を行った場合、残り使えるのは2時間目だけになります。もし宿題の回収も朝一番で一斉に行えば、1時間目に掃除をして、2時間目に宿題を回収して、下校することになります。やるべきことをやっていて、堅実的な1日目の印象となります。

でも、こういう初日は、子供たちにとって「ああ、学校始まって案外楽しいじゃん」と思える日ではないかもしれません。繰り返しますが、リスタート初日のメニューはあなたが目指す1日目の姿によって違います。学級の状態によっては、このような1日目を選択する人もいるかもしれませんし、そうじゃないという方もおられるでしょう。あなたが思う1日目の目指す姿を今一度考えてみてください。

6.さあ、準備を始めよう!

さてここからは、ここで読んでくださった読者の先生が準備をする番です。以下の問いについて、ご自身のノートに書いてまとめていってください。

① あなたが目指す「1日目の学級の姿」はどんな姿ですか?

  • 学級目標や学年目標、これまで大事にしてきたことを踏まえて言葉にしてみましょう。
  • それを目指すことで期待できることはなんですか?
  • その逆にどんな問題がありそうですか?
  • どうすれば良い方向に進んでいけそうですか?

② 目指すところへ向かうために、どんな手段が考えられますか?

  • 出せるだけ出してみましょう。
  • 効果的だと思う順に並べてみましょう。

③ スケジュールを確認しましょう。

  • 学校で決まっている活動、時間は?
  • 自由に使える時間はどのくらいありますか?

④ 目指すこと×手段×時間でやることを決めましょう。

  • 効果が期待できそうな順でスケジュールしていきましょう。

7.最後は自分で考えて、自分のものにする

以上、今回は2学期リスタートの準備を始めるにあたって、考えなくてはならないポイントを解説しました。これを読んでいただいた先生が、実際に動き出すきっかけになれば幸いです。

大事なことは「担任の先生が自分で考える」ということです。人から教えてもらったネタだとしても、本で読んだ言葉だとしても、自分で書き、自分で並び替え、自分で意味を見出したものこそ、魂が宿り、教育効果を高めてくれるはずです。

次回は、私の場合の具体的な学級リスタートの実際を紹介します。お楽しみに!

(つづく)


執筆者:紺野悟(こんの・さとる)
埼玉の教育サークル clover 代表。イベントを数多く企画・運営し、価値ある教育情報を広めている。共著『全単元・全時間の流れが一目でわかる!社会科 6 年 365 日の板書型指導案』(明治図書出版)他多数。

大好評! 紺野悟先生の『完全シリーズ』はこちらからご覧ください。
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