授業の発想力を高める習慣とは? 【伸びる教師 伸びない教師 第46回】

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豊富な経験によって培った視点で捉えた、伸びる教師と伸びない教師の違いを具体的な場面を通してお届けする人気連載。今回のテーマは、「授業の発想力を高める習慣とは?」です。教師の授業に対する発想力は、日頃から意図的に考える習慣を付けることがもとになるという話です。

執筆
平塚昭仁(ひらつか・あきひと)

栃木県公立小学校校長。
2008年に体育科教科担任として宇都宮大学教育学部附属小学校に赴任。体育方法研究会会長。運動が苦手な子も体育が好きになる授業づくりに取り組む。2018年度から2年間、同校副校長を務める。2020年度から現職。主著『新任教師のしごと 体育科授業の基礎基本』(小学館)。

伸びる教師は考える力を高める習慣をもち、伸びない教師は考える力は天性のものだとあきらめる

他にもっとよい方法がないかを考える

教師は授業で勝負とよく言われます。授業がうまいと言われる人の多くは優れた授業技術をもち、授業の発想力もすばらしいものがあります。
授業技術は、日々の授業で高めていくことができます。しかし、授業の発想力に関しては、意図的に鍛えていかないと高まっていかないものだと私は考えています。
以前の私は、授業の発想力は天性のものであり、自分にはその才能がないのだとあきらめていた時期がありました。


私が教師になって間もない頃、校内の研究授業に向け、数名でマット運動の指導案を考えていたときのことでした。マット運動は、できる子供とできない子供の差が明確に表れるため、子供たちにはあまり人気がありません。そのため、いかに子供たちを意欲的に取り組ませるかが大きな課題の1つでした。
それぞれの教師がアイデアを出し合っていたときのことです。
1人の教師が「グループで演技を考えさせてみてはどうか」「対戦型にしたらどうか」「得点制にしてみてはどうか」など、次から次へとアイデアを出し、あっという間に単元の流れが決まっていきました。
この教師は、学級経営でも子供たちが喜びそうな活動をたくさん取り入れたり職員会議で論理的な発言をしたり、私の中で一目置く先輩教師でした。
指導案検討会が終わった後、私はその教師に思い切って聞いてみました。
「どうやったらあんなに次から次へとアイデアが出てくるのですか」
その教師は、
「自分ではあんまり意識したことがないけれど、普段考えるときは他にもっといい方法がないか、おもしろい方法がないかを考えるようにはしている」
と、教えてくれました。
この教師は、授業案を考えるときだけでなく、自分の頭で物事を考える習慣が身に付いていたのだと思います。もしかすると、発想力は天性のものではなく自分の頭で考える習慣ではないか、そんな思いが自分の中に湧いてきました。

授業内容をイメージする教師

自分の頭で考える習慣

それからは、自分の頭で考える習慣を付けるよう心がけました。ただ、すぐに何でも自分の頭で考えることは難しいので、今までやってきたことの中で自分の頭で考えられる部分がないかを模索しました。
時間があるときは、本や雑誌を参考にしながら自分のオリジナルの授業を考えるようにしました。授業を考える時間がないときでも、教師用の指導書通りではなく1箇所でも自分で考えた発問や活動を取り入れました。また、他の教師の授業を参観するときにも「自分だったらこんな展開にする」と考えながら参観するようにしました。
自分の頭で考えることは授業以外の場面でも意識しました。
例えば、テストの採点でもっと速く採点する方法はないか、パソコンでもっと速く打ち込む方法はないかなど、日常の作業でもっと効率的にできる方法を探すこともありました。
講演会では、講師の話をメモするのではなく、話を聞いて自分が思ったこと、自分の授業で使えそうなことなどをメモするようにしました。本を読むときにも同じように、本を読んで考えたことや思ったことを付箋に書いてその箇所に貼るようにしました。
こうした自分の頭で考える習慣を続けていくと、数年後には、いいアイデアかどうかは別として、自然と授業のアイデアが浮かぶようになりました。何より、この自分の頭で考える習慣は、学年主任や管理職などになったとき大いに役立ちました。責任のある立場になると、自分で考え結論を出さなくてはいけない場面、授業について他の教師にアドバイスする場面が多くなるからです。

人工知能を活用できる思考力をもつ

人工知能の発達により、教育現場における生成AIの利用についての議論が活発にされています。私個人としては、子供たちの教育効果が上がるのであれば、また教師の負担軽減につながるのであれば、生成AIを利用することに何の異論もありません。うまく活用していけばよいのだと思います。
ただ、人工知能をうまく活用できる教師としての思考力はもち合わせていかねばならないと思っています。

構成/浅原孝子 イラスト/いさやまようこ

※第16回以前は、『教育技術小五小六』に掲載されていました。

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