補教だからこそ!「教頭先生だいすき」と言われたい! 児童を笑顔にする教頭の小技あれこれ

連載
GKC(がんばれ教頭クラブ)

元山形県公立学校教頭

山田隆弘

小学校の教頭は、教職員が休むと教室で、補教や自習監督などをしなければならないことが多いです。しかし児童は、プリント学習などが多くなると、座学に飽きてしまいます。せっかくの学びで、そんな経験をさせてしまうのはかわいそうですよね! 教頭がいろいろな小技を使って児童をリラックスさせたり、気分転換をさせたりすることがとても重要です。さて、どんな小技があるでしょうか。

学校関係者専門用語<補教>=担任が休んだときに、代わりに授業を行うこと。急な場合で授業準備ができないときは、プリントなどの自習監督となります。

【連載】がんばれ教頭クラブ

手品

1 えっ、そんなことできないよお

わたしが新しい学校に赴任したてのときの話です。ある担任が休みをとったために、自習監督に向かいました。教室に行ってみると、児童たちが、
「教頭せんせい、手品やって! 前の教頭せんせいはすごいのみせてくれたよ」
『えっ、手品? そんなのできないよー』
「なーんだ、できないのか……」
と教室中が落胆していました。すごい落ち込んだ空気です。わたしも落ち込みました…。
なるほど! 前任者は、児童がプリント学習などで疲れたとき、さっと小技を使って児童に気分転換させていたんだ!
こういう技を持っていると、児童の気分転換になってプリントに向かう気力も出てくるというわけです。
教頭職というと、なんとなくイメージ的にお堅い感じがします。児童たちにとっても、少し離れた存在ですよね。しかし、学校におけるコミュニケーションの中枢を担う教頭ですから、児童にとって身近で、安心して接することができる存在というイメージを与えることは、プラスな影響しか産まないはずです。エンタメ性も大変結構だと思いました。
さて、わたしは何ができるのだろうか、考え込んでしまいました。

2 教頭の小技

先輩の何人かの教頭に伺ってみたり、自分ができることを考えたりして以下のような小技を仕込みました。

① 手品の世界へようこそ!
手品はいちばん受けます! カードを消したり、コインを動かしたりする簡単な手品から始めましょう。手先の器用さより、児童たちの視線や意識をいかにミスリードするか、という話術がポイントです。心理学の実験感覚で、やっている方も楽しくなりますよ。カンタンなネタはネット検索や書籍などでいくらでも仕入れることが可能です。

② 童話の世界へタイムスリップ!
児童がよく知っているような、有名な童話を語ります。「三匹の子豚」や「桃太郎」「大きなかぶ」などですね。なぜ有名な童話が良いかと言うと、そこに自分ならではのアレンジを加え、それを児童に楽しんでもらうためです。登場人物に応じて声色を変えて演じてみたり、小学校のある地域の地名や名産品などを盛り込むと、児童はさらに興味津々になります。
本の読み聞かせではなく、覚えているストーリーを思い出しながら話してみましょう。記憶をたどりつつアレンジを色々と加えられるようになり、これがまた楽しいのです。
ところで、ある調査によれば、童話のストーリーやディテールを知らない児童が多くなってきたそうです。桃太郎が腰に下げていた食べ物、お供をした動物など知らない児童がどんどん増えてきているとか。教頭の力で、ぜひ古き良き伝統の復権を…。

③ 早口言葉で脳トレ!
「うまく発音できるかな?」と、児童たちは楽しみながら挑戦します。学年に合わせた難易度で、短時間でテンポよく行います。児童が楽しめる早口言葉を考えておきます。ポイントは、学年に応じた難易度を考慮しかみそうな言葉を並べつつ明瞭に発音することです。定番の簡単な早口言葉だけでも受けます!

④ 歌の力で心を一つに!
児童が大好きな歌を一緒に歌ってみます。歌が苦手でも大丈夫です! せんせいが歌えば、どんな歌でも受けます。ポピュラーな「アンパンマンマーチ」「おどるポンポコリン」「サザエさん」などで十分です。なぜなら、アーティストのコンサートを真似て、手拍子を促したり、コール&レスポンスしたりできるからです。これ、ものすごく盛り上がりますよ。児童向けの英語の歌などもいいですね! 流行りのアニメソングなど、児童から歌いたい歌をリクエストしてもらうのもおすすめです。

⑤ なぞなぞで頭脳を刺激!

クラスの空気が淀んできたとき、「これなぁんだ?」となぞなぞを出題してみます。ものすごく手軽で、一瞬でクラスの空気が変わります。
なぞなぞ集を一冊持っているといいですね。わたしはいつでも補教に持っていけるよう、ボロボロになったなぞなぞ集を机にしまっています。あらかじめ、児童がじっくり考えて楽しむことができるような問題を探しておくといいですよ。
ポイントは、シンキングタイムで少しヒントを出し、児童たちがいっしょに答えを見つける感じになるよう進めることです。意地悪な問題や、難しすぎる問題は避けましょう。

⑥ リコーダー演奏でミニコンサート!
わたしはリコーダーで演奏できる楽譜集を何冊も持っています。こうした楽譜集をネタに、児童たちが大好きそうな曲や、CMでよく聞く曲などを密かに練習しておきます。
そして、クラスに、自習に飽きたなぁ…というような空気が満ちてきたとき。おもむろにリコーダーを取り出して、曲を演奏してみます。「となりのトトロ」や「アンパンマンマーチ」などが大受けです! 3曲限定とかで短く気分転換を決めたいところですが、拍手喝采で毎回アンコールされます…。

⑦ 間違い探しで集中力アップ!
「右の絵と左の絵ではどこが違うのかな?」という間違いさがしの絵を準備しておき、大型モニターに投影します。児童は目を凝らして絵を見比べます。「何個みつけられるかな?」と言うと、児童はのってきます。集中力だけでなく、観察力も養われます。
発達に課題のある児童も、これは大好きです。そこで、特別支援学級に補教などで出向いたときも使うことが多いです。
ポイントは、制限時間を決めて、間違いの個数をカウントさせることです。簡単なものは短時間で、難しいものはちょっと時間をかけて…。パーフェクト賞などをつくってもいいですね。
間違いさがしは、書籍だけでなく専門の月刊誌があります。本屋さんやネットショッピングで探してみてください。

3 準備は必要です

これらの小技は、成功のためのポイントがあります。それらを心に留めて、児童に楽しい時間を提供してください。今回は7つの小技を紹介しましたが、もっともっとあります。手遊びリズム遊び、読み聞かせ、こわい話、ミニゲームなどなど…。
それぞれの技を練習したり準備したりして、自信を持って披露することが大切です。

2024年の夏はパリオリンピックで大いに盛り上がりましたね。テレビで観戦していると、試合で負けが込み空気が悪くなったら、監督は必ずと言っていいほどタイムアウトをとります。そこで、空気が変わり自分たちのプレーがよみがえってきます。教頭の小技はこういった役割をするのだと思います。教頭が持つ「ちょっとした技」は、児童の心を癒し、学習意欲を高めるための貴重なツールです。様々な技を準備し、児童たちとの触れ合いを楽しみましょう。この夏、小技をたくさん仕込んでください!

イラスト/坂齊諒一


山田隆弘(ようだたかひろ)
1960年生まれ。姓は、珍しい読み方で「ようだ」と読みます。この呼び名は人名辞典などにもきちんと載っています。名前だけで目立ってしまいます。
公立小学校で37年間教職につき、管理職なども務め退職した後、再任用教職員として、教科指導、教育相談、初任者指導などにあたっています。
現職教員時代は、民間教育サークルでたくさんの人と出会い、様々な分野を学びました。
また、現職研修で大学院で教育経営学を学び、学級経営論や校内研究論などをまとめたり、教育月刊誌などで授業実践を発表したりしてきました。
『楽しく教員を続けていく』ということをライフワークにしています。
ここ数年ボランティアで、教員採用試験や管理職選考試験に挑む人たちを支援しています。興味のあるものが多岐にわたり、様々な資格にも挑戦しているところです。


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