教頭のための7大気配り術~良い学校経営は日頃の教頭のアクションから!~
保護者からの電話で、初めて「こんな事態が起きていたのか!」と知る。そんな体験ありませんか?
なぜもっと早く相談を…と相手のせいにする前に、「職員室が相談しにくい雰囲気だったのかも?」と、振り返ってみましょう。
職員室の雰囲気は、教頭をはじめとしたリーダーによってつくられます。日頃からの教職員とのコミュニケーションをしっかりとるために、「教頭の気配り術」を考えてみませんか?
【連載】がんばれ教頭クラブ
わたしの経験や周囲の事例から、以下のような7つの術を使っていくと、学校経営がなめらかになってくると思います。あなたもぜひ、自己採点しながら読んでみてください。
目次
1 見ているよ術
まずはカンタンなところからいきましょう。見ているよ術とは、教職員それぞれに対して「気にかけてるよ」ということをさりげなく伝える気配りです。
ねらい:「関心を持たれている」と感じることで教職員の帰属意識が増し、自信と安心に繋がります。
具体的な方法
① ポジティブな表情で、常に教職員たちを見るようにする。
② 教職員の仕草に変化を感じたら、声をかける。
③ 折りに触れ、労いの言葉をかける。
あなたも他人から見られているとき、その人の浮かべている表情で全く受け止め方が変わるのではないでしょうか? ぜひ、普段の顔付きはどうなのか、鏡でチェックしてみてください。
こういった気配りは、周囲の人々に安心感を与え、温かい職員室風土をつくっていくことにつながります。
2 共感・関心術
「見ているよ」術からもう1歩進み、折りに触れ、教職員たちへ共感と関心を、しっかり態度として示す術です。
ねらい:感情的な親密度を高め、信頼と心理的な安全性を生み出します。
具体的な方法
① 誕生日など、お祝いすべき機会を忘れずにメモしておき、言葉や態度で示す。
② 相手の話に傾聴する姿勢をもち、否定や拒絶をしない。
③ 小さなことでも褒め、感謝の意を表する。
④ 必要なときには適切に叱ったり、注意したりする。
⑤ 陰口は絶対に言わない。良い噂はどんどん本人以外に喋る。
3 叱り術
教職員の不適切な振る舞いなどについては、無視せずに適切に叱ることも大切です。ぜひ心がけてください。
ねらい:相手が自己の問題に気付き、自律的に修正し、成長していけるよう促します。
具体的な方法
① 大前提として、感情的にならず、冷静な態度を維持する必要があります。
②まず「あなたには伸びてほしいから」と、叱る目的を伝えます。
③ 叱られる対象は何か。その「事実」と、それがダメな理由を、短時間で分かりやすく説明します。
④ 相手の人格を尊重します。相手がなぜ間違いを起こしたのかを聞き出し、解決策を考えさせます。
⑤ 自分の考えを伝えることも大事ですが、決め付けや押し付けは禁止です。
罪を憎んで人を憎まずと言いますが、叱る対象は、その人の「人格」ではなく「行為」であることを忘れないようにし、徹頭徹尾「理性的」に振る舞うことが大事です。
また、怒った後には褒める…などのフォローアップが必要なのでは? と思われる方も多いのではないかと思いますが、
●褒め言葉のほうが意識しやすいため、叱られた事実がぼやける
●「この人は、叱ることと褒めることをセットにしてくる」などと、相手から悪印象をもたれる可能性があり、あまり良い結果にはなりません。
叱ることは苦手…と思っている方が多いのではないかと思います。そんな方はぜひ一度、この方法を試してみてください。
4 お手伝い術
本当に良い上司は、部下のために率先して動き、その努力を惜しまないものです。口で言うアドバイス以上に、態度で示すことは相手の心に響きます。また、個々人への仕事の偏りを防ぐ目的もあります。
ねらい:教職員の職場への帰属意識をより高めつつ、各人の業務量や負担感を観察します。
具体的な方法
① 気やすい態度で手伝いを申し出ます。言葉より先に、自然に手伝う態度で示すのもよいでしょう。
② 誰かに仕事を命じる場合、投げっぱなしにせず、自分も手伝うこと前提で始めます。
日常的に、誰がどんな仕事をどれだけやっているか。そして、それぞれの進捗状況はどの程度かを把握しておき、適宜分掌するように心がけましょう。
5 鷹揚(おうよう)術
ここまでは相手に対する心構えをご紹介しましたが、ここからは自分自身に対する心構えです。鷹揚術とは、ゆったりした構えと優しい振る舞いで、上司としての頼りがいを醸し出す技です。
ねらい:職場の雰囲気を和ませ、円滑なコミュニケーションの下地をつくります。
具体的な方法
① 笑顔で接し、明るく親しみやすい雰囲気をつくる。
② 自分から会話に加わっていく。
③ 相手の話をよく聞き、相手の気持ちに寄り添うような発言を心がける。ユーモアも忘れずに。
④ 飲み物を出してあげるなど、ホスピタリティの精神をもつ。
⑤ 相手のペースに合わせ、無理強いしない。
本当に信頼されるリーダーというのは、上司である以前に仲間です。上司・部下という指示系統の関係性ではなく、より良い教育を共に目指していく同志としての、対等の目線でみんなと付き合っていきましょう。
6 先取り術
先取り術とは、常に一歩先を見据えて行動し、問題やトラブルを未然に防ぐための気配りです。
ねらい:問題に早めに気付くことで、大きな問題に発展するのを防ぐことができます。
具体的な方法
① 児童や教職員の様子の変化に、常に注意する。
② 学校行事や学級・学校経営について年間の見通しをもち、想定されるトラブルに対して適切な対応ができるよう、準備しておく。
③ 校内・校外で問題が発生しそうな場所を見付けたら、対策を講じておく。
④ 校外の人たちとコミュニケーションを積極的に行い、情報を収集する。
児童の様子の変化を敏感に察知することで、担任との信頼関係や児童間の問題などの早期解決につながることは言うまでもありません。教職員の様子の変化についても、本人の体調や学級経営の問題、家庭の問題などが生じていることがあります。家庭の介護や看護などに問題があるなら、特別休暇について説明をしてあげることもいいですね。
7 休暇オススメ術
やり甲斐をもって一生懸命に働いている教職員ほど、自分自身の健康に無頓着です。また、若い教職員の中には、先輩たちに気を遣って休みを申請しづらい人もいるでしょう。管理職として、ぜひ気を配ってあげてください。
ねらい:個々人のメンタルヘルス維持はもちろん、職場全体に休みやすい雰囲気をもたらします。
具体的な方法
① 教職員に、休暇を取っていないことをさりげなく伝える。
② 休暇を取ってリフレッシュすることが大切であることを伝える。
③ 休暇の過ごし方を提案する。
④ いつ頃取れそうかといっしょに考える。
さっと休暇の申請用紙を渡したり、置いておいたりすることもいいですね。
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教頭の気配りは、教職員との信頼関係を築き、学校をより良い場所にするために不可欠です。本稿で紹介した7つのテーマを参考に、常に周囲の人々に気配りをし、学校全体の活性化と風通しを良くすることに貢献できるようにしていきましょう。あなたは、どのくらいよくできていましたか?
山田隆弘(ようだたかひろ)
1960年生まれ。姓は、珍しい読み方で「ようだ」と読みます。この呼び名は人名辞典などにもきちんと載っています。名前だけで目立ってしまいます。
公立小学校で37年間教職につき、管理職なども務め退職した後、再任用教職員として、教科指導、教育相談、初任者指導などにあたっています。
現職教員時代は、民間教育サークルでたくさんの人と出会い、様々な分野を学びました。
また、現職研修で大学院で教育経営学を学び、学級経営論や校内研究論などをまとめたり、教育月刊誌などで授業実践を発表したりしてきました。
『楽しく教員を続けていく』ということをライフワークにしています。
ここ数年ボランティアで、教員採用試験や管理職選考試験に挑む人たちを支援しています。興味のあるものが多岐にわたり、様々な資格にも挑戦しているところです。