通知表わたしの成功談&失敗談

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通知表関連記事まとめ:所見の書き方から「出さない」選択まで
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担任の誰しもが、自分の学級の子供たちの成長を願いながら作成する、学期末の通知表。この方法がオススメ! というテクや、受けとった子供や保護者を落ち込ませてしまったり、喜びもあれば苦労もあり・・・。そんな通知表にまつわる体験談を現役教師に披露してもらいました。

通知表の成功談&失敗談

保護者クレームにショック!明確な見取りにビデオ活用

《6年目男性教諭》

<成功談>ムービーで記録

子供の「見取り」は難しいです。その場で名簿に記録できればよいのですが、苦手な私は、デジカメやスマホを使って、ムービーで記録しています。私は、「国語」や「図工」、「体育」で特に活用しています。音読の様子、制作の様子、運動の様子など、後で見返すのにとても便利です。

写真もいいのですが、ムービーで記録することで、「一連の動き」として見返すことができます。体育のボール運動では、特定の子の動きだけではなく、周りにいる子供の動きも同時に記録できるので、オフザボール(ボールを持っていないとき)の動きも、評価に生かすことができます。

子供たちの活動をムービーで残しておくイラスト

また、懇談会や面談などの場面で、保護者に子供たちの様子を生き生きと伝えることができるため、一石二鳥となっています(活動中の安全管理と肖像権には十分に配慮して行いましょう)。

<成功談>プリントをスキャン

成績をつけるシーズンになると、何年か前までは、重い資料を持って帰るということもありました。今では、子供のワークシートやプリントをすぐにスキャン(富士通のScanSnapを使用)してPDF化しています。検索機能を使えば、すぐに見たい資料が出てくるので、仕事の効率化にも大きく貢献しています。子供たちに資料をすぐに返すこともできます。

<失敗談>保護者からの一言

「うちの子の図工の成績が低くて驚きました」

通知表の「家庭からの一言」にこのように書かれていたのです。大きなショックを受けました。原因は、観点も根拠も明確でなかったことでした。何をもって「A」で、なぜ「C」なのかが不明確だったのです。そこから、「学習指導要領解説」をしっかりと読み直しました。図工だけでなく、その他の教科も、観点や根拠が明確でないことに気付きました。「見取り」の「観点」の重要性を痛感しました。

<体験談>失敗のない通知表?

通知表の作成は、現在、管理職が誤字脱字、文章のチェックを念入りに行います。現任校では、

所見を学年内でチェック→教務主任チェック→担任が直す→教頭チェック→担任が直す→校長チェック→担任が直す。

これを下書きと清書で行い、でき上がる頃には自分の作成したものとは違うものに・・・ということもありました。一生残るもの、家族で見るものとされ、チェックを念入りにすることは大切ですが、担任の「らしさ」が欠けてしまうことも考えられます。失敗のない通知表を追い求めることで、消えてしまう「らしさ」はどうなのでしょうか?

ベテラン教師の所見を見て眼から鱗

《6年目女性教師》

<成功談>子供のいいところ記録

通知表作成で一番神経を使うのは、所見作成でしょう。子供たち一人ひとりのよさや、さらに頑張ってほしいことを、分かりやすく文章で伝えるということに骨を折ります。

私の場合、慌ただしく日々が過ぎていく中で、子供たち一人ひとりの活躍を記録することに難しさを感じました。40名近くいる学級の子供たち全員分の所見を書くため、日々のよさなどの記録は必要不可欠です。しかし、よさを見つけてもメモをする紙やペンを持ち合わせていなかったり、時間を取れなかったり、記録できないことがありました。そこで、役に立ったのがデジタルカメラです。カメラを常に持っておくようにすれば、よいところを簡単に記録することができました。

<成功談>分かりやすい文章とは・・・

やっとの思いで作成した所見に、管理職から真っ赤な直しが入って返ってくるのも、なんとも悲しいものでした。「文章でしか伝えられないのだから、分かりやすく書かなければいけない」と言われましたが、自分としては精一杯分かりやすい文章のつもりで書いているのに・・・。どういう文章が分かりやすい文章なのだろう? 正解が分からない中で暗中模索しました。

そんなとき、管理職が、「この先生の所見を読ませてもらいなさい」と言って、他の先生の所見を読む機会をいただきました。明確な具体例や、子供を認める温かみのある言葉、子供の成長を促す所見がどういうものか、自分の目指すべき文章がそのとき分かった気がしました。

<成功談>振り返りカード

今年度から道徳の評価も加わり、高学年は所見の他に、「総合的な学習の時間」「外国語活動」「道徳」この三つを文章で評価しなければなりません。そんなときに役立つのが、1時間ごとに振り返りを記入する振り返りカードです。どんな学習をして、どんな学びがあったのか、どんなことを頑張ったのか、1枚のカードにまとめさせるようにしました。そのカードをもとに、一人ひとりの評価文章を作成することができました。
 
総合的な学習の時間では、単元のまとめとして、

①自分のテーマ
②調べ方
③調べて分かったことや学んだこと
④特に頑張ったこと

などを振り返りカードに記入してもらい、評価の参考としました。

<体験談>最後まで気を抜けません

でき上がって満足してはいけない通知表。私は、配付直前に二人の児童の係が入れ替わっていることに気付き、慌てて直しましたが、その二人の通知表を入れ違って配付してしまったことがあります。それ以来、配付は2時間目に行い、訂正があった場合も、業間時間に落ち着いて行えるように時間的な余裕をもつようにしています。保護者に届くまでが通知表です。

保護者が通知表を確認するイラスト

「同じようなことが昨年も書いてある!?」にならないために

《11年目男性教師》

<失敗談>同じようなことが昨年も書いてある!?

初任時代のことです。年度末に、1年間で書き上げた通知表を見返しながら、さぁ、指導要録の所見欄を書くぞというその時です。「あれ? 同じようなことが昨年も書いてある!?」

音読が素敵・・・マット運動で手本になった・・・プリントを進んで配ってくれた・・・。一人や二人なんてものじゃありませんでした。

元々できていたことを書いていたのではと猛省しました。これ以来、子供の「伸び」を見取って伝えられることを一番に心がけています。

<成功談>「検索」しておくと・・・かぶらない◎

パソコンを使用して通知表や要録を作成する学校がほとんどです。私は、4月のうちに学校のパソコンの職員共有フォルダを「検索」します。担任する子供たちの要録と昨年度の通知表の「データ」を集めます。一通り目を通し、「昨年度とかぶらない伸び」を意識して、メモや写真や動画で記録を残すようになりました。

現任校の所見の文量は200字です。
①トピックエピソード50字
②学習面のエピソード50字
③生活面のエピソード50字
④励ましのメッセージ50字

私は、①~④の短文の組み合わせを基本として構成しています。200字を書くのは大変ですが、50字なら1文か2文です。スマホ等のメモアプリを活用し、書くのではなく「しゃべる」のもお勧めです。Excelでは、「&」を用いた数式を入力することで、セルとセルを自動で一括してくれます(下記表参照)。所見を書くのが難しいあの子は、同じ学年の過去の所見「データ」から、当てはまりそうな文章を拝借しましょう。良文に触れているうちに所見の神様が降りてくることもあります。

Excelを利用した所見作成例
※クリックすると別ウィンドウで開きます

<成功談>「二次利用」で「伸び」がより見える

愛おしい子供たちに◎◯▲と成績をつけなくてはいけないのが、この仕事の辛いところです。私ははじめに、昨年度の通知表(や要録)の成績データを、今年度のものにコピペします。すると、昨年度の成績と比べながら、今年度の成績を「上書き」することができます。これにより、学年をまたいだ「伸び」を意識できるようになりました。

また、人間は意思決定をする時に最も多くのエネルギーを使うといいます。「悩んだところは昨年度と同じ!」と、ひとまず決めておくことで、精神的負担も大幅に削減することに成功しました。

「データ化」したものは「二次利用」が容易にできる知の財産です。昨年度までの先生方が築いたものを賢く活用し、子供たちの「伸び」へ一層の温かい眼差しを向けたいものです。

子供が持ち帰った通知表、まさかの誤配付!?

《10年目男性教諭》

<成功談>通知表授与式

私のクラスでは、「通知表授与式」をしています。児童を名簿順に廊下に呼び、一人ひとりに声を掛けながら通知表を渡します。教室に残っている児童は、ワークシートで学期の振り返りをしています。廊下には机一つと椅子二つを置き、児童と横並びで通知表を眺めながら、頑張ったことなどを伝えます。また、否定的な評価については、なぜそのような評価になったのか、どうすれば次学期に伸ばしていけそうかなどを一緒に考えます。

廊下で通知表授与式を行うイラスト

「Aさんは、いつも一人でいる友達に優しく声を掛けていたね。それが『思いやり』の評価にもつながっているね。『時間やきまりを守る』は、C評価だったね。友達と思い切り遊ぶのはよいと思うけれど、授業の始まりの時間に席に戻れないことがあったね。どうしたら伸ばしていけるかな? 先生にできることがあったら手伝うよ」

このように声を掛けながら通知表を渡すと、児童は前向きな表情を見せてくれます。そして、長期休み明けからは時間を守れるようになってきました。一人1分程度の短い時間ですが、長期休み前に担任と児童の心がつながる実感があります。中には、この時間に困っていることを相談してくれる児童もいます。

私は子供の頃、通知表にあまりよくない評価があると「先生は何も分かっていない」「なんでこんな評価を付けたんだ」と不満に思っていました。

通知表の否定的な評価によって、児童が担任に裏切られたような気持ちになったり、「どうせ自分はだめなんだ」と思ったりしてしまう危険性があります。そのため、評価の意図を直接伝える場が必要だと私は思います。

<失敗談>まさかの誤配付!?

「通知表の誤配付だけは絶対にしないように」
 
教頭先生が口をすっぱくして言っていた言葉でした。私は、配付の前日から通知表を何度も見直し、誤字脱字がないか、他の児童のページが混ざっていないかなどの確認をしていました。当日も、児童一人ひとりの顔を見ながら、直接通知表を手渡し、児童を下校させました。

放課後に職員室で一休みしていると、保護者からの電話がありました。「うちの子のランドセルに、他の子の通知表が入っているのですが・・・」

突然の電話に耳を疑いました。保護者の話をよくよく聞くと、通知表を配付した後に、友達同士で見せ合いをして、そのまま入れ替わってしまっていたようです。すぐさま家庭を訪問し、謝罪した後に通知表を持ち主まで届けました。

その一件以来、通知表を配付した後は、十分に見る時間を確保した後、ランドセルに直行させています。「通知表は重要書類です。家に帰るまではランドセルから出さないように」という言葉を添えて・・・。

イラスト/どいまき

『小二教育技術』2018年12月号より

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