よじのぼり逆立ちの次のステップは? 【使える知恵満載! ブラッシュアップ 体育授業 #48】

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平川 譲
使える知恵満載! ブラッシュアップ 体育授業

#47では、「よじのぼり逆立ち」という教材を紹介しました(→「ブラッシュアップ体育授業」#47参照)。クラス全員が「よじのぼり片手逆立ち」10秒間保持できるようになったら、次のステップに進みましょう。これができていれば、頭つき逆立ちに必要な逆さ感覚と、体の締めの感覚が高まってきていると判断できるからです。今回は、これまで基礎感覚を高めてきた子どもたちが無理なく取り組める「だんごむし逆立ち」「頭つき逆立ち」の2つのステップを紹介します。

執筆/東京都公立小学校教諭・今田菜美
監修/筑波大学附属小学校教諭
 体育授業研鑽会代表
 筑波学校体育研究会理事・平川 譲

1.体を縮めたままの姿勢で「だんごむし逆立ち」

頭つき逆立ちは、マットの上で初めて真っ逆さまになる教材で、逆さ感覚、体の締めの感覚を高めることができます。
まずは、体を小さく縮めて、逆さまの姿勢を保持する「だんごむし逆立ち」です。だんごむしのように体を小さく縮めるのでそう呼んでいます。
最初のうちは、口伴奏で運動の手順を確認しながら取り組みます。教師に続いて全員で口伴奏を復唱させます。班活動(→「ブラッシュアップ体育授業」#2参照)の場合は、班のメンバーで口伴奏をさせます。
運動の手順は以下の通りです。

①壁側を向いて、マットの上に両手と頭をつきます。
 頭をつく際には、頂点や額ではなく髪の生え際付近をつけます。
 班の仲間が見て確認し、できていない子には教えるように指示します。

壁側を向いて、マットの上に両手と頭をつく

②手と頭で大きな三角形をつくります。

手と頭で大きな三角形をつくる

逆さまに近い姿勢になると、自分で自分の体の状態が認識しにくくなります。大きな三角形ができていない場合は、仲間が手を持って修正します。

③歩くようにして足の位置を壁側に近づけていき、できるだけお尻を上げます。

足の位置を壁側に近づける

腰を壁に近づけることで、逆さまの姿勢に近くなり、急激に逆さまになる恐怖感を減らします。

④強く踏み切らずに足を上げ、股関節・膝を曲げた状態で腰を壁につけます。

膝を曲げた状態で腰を壁につける

口伴奏のリズムに合わせて、軽く踏み切って足を上げ、壁に腰をつけます。この姿勢を10秒間保持します。
この運動は、首に負担がかかるので、取り組む前には首の準備運動をしておくとよいでしょう。

2.お手伝い

上手に逆さになれない子には、教師や仲間がお手伝いをします。逆さまになるのが苦手な子に対しては、太腿の裏をつかんで壁に押し付けるようにします。その際、子供たちは足首辺りを持って持ち上げようとしますが、それだと体が伸びてしまうので、太腿をつかむように声をかけます。

教師や仲間がお手伝い

姿勢の保持がうまくできない子は、両手と頭が大きな三角形になっていなかったり、頭と壁の距離が適当でなかったりするつまずきをもっています。このような子には、大きな三角形になるように仲間が手をつかんで直してやったり、頭の位置を見て確認したりします。
また、左右に倒れてしまわないように、姿勢を保持するときは、首・肩やお腹・背中にぐっと力を入れることを意識させたり、手でしっかりとマットを押したりするように声をかけます。

3.膝を伸ばして「頭つき逆立ち」

だんごむし逆立ちに十分に習熟したら、ゆっくり膝を伸ばします。その姿勢を10秒間保持できるようにします。これを「頭つき逆立ち」と呼んでいます。膝を伸ばすことでバランスを取ることが少し難しくなりますが、壁に寄りかかってゆっくり伸ばせば、多くの子ができるはずです。
はじめから頭つき逆立ちをしようとすると、体を伸ばして下半身を振り上げることになり、難しい運動になってしまいます。だんごむし逆立ちを5秒間行い、そこからゆっくりと脚を伸ばして頭つき逆立ちに進むことで、子どもにとって易しい運動になります。+

膝を伸ばして「頭つき逆立ち」

次回は、頭つき逆立ちの先のステップを紹介します。スモールステップを踏みながら壁逆立ちを目指していき、子どもたちの「できそう」「できた」といった自己有能感を高めていきましょう。

【参考文献】
平川譲(2018)『体育授業に大切な3つの力 主体的・対話的で深い学びを実現する教師像』東洋館出版社
筑波大学附属小学校体育研究部(2020)『できる子が圧倒的に増える!お手伝い・補助で一緒に伸びる筑波の体育授業』明治図書出版

イラスト/佐藤雅枝

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今田菜美教諭

執筆
今田 菜美
東京都公立小学校 教諭
1991年大阪府生まれ。学びの系統性を考えることで、子どもたちの「できそう・できた」を保障する授業を目指して、日々実践中。


平川譲教諭

監修
平川 譲
筑波大学附属小学校 教諭
体育授業研鑽会 代表
筑波学校体育研究会 理事
1966年千葉県南房総市生まれ。楽しく力がつく、簡単・手軽な体育授業を研究。日本中の教師が簡単・手軽で成果が上がる授業を実践して、日本中の子どもが基礎的な運動技能を獲得して運動好きになるように研究を継続中。『体育授業に大切な3つの力』(東洋館出版社)等、著書多数。


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