「学年終了までの目標を立てよう」保護者を味方にする学級経営術 #11
学級担任なら、一度は保護者対応に悩んだ経験があるのではないでしょうか。しかし、保護者が味方になってくれたら、こんなに心強いことはありません。この連載では、保護者が担任と学級を応援したくなるような学級経営について、その月の学校状況に合わせたアイデアを紹介します。第11回は、3学期での目標の立て方や教科の遅れを取り戻す術を紹介します。
執筆/千葉県公立小学校校長・瀧澤真
目次
学年終了までの目標を立てよう
新年を迎えました。いよいよあと3か月。実質的には50日くらいでしょうか。
この50日をどう捉えますか。後は惰性で、過ごしていきますか。それとも50日もあれば、さらに成長させることができると考えて、手を打っていきますか。
受験では夏休みが勝負と言われます。そのための夏期講習もあります。それが何の効果もないと思いますか。そんなことはないですよね。
その夏期講習期間よりも、3学期は長いのです。そう考えれば、まだ力を抜くのは早すぎます。3学期になってももっと子供を成長させようとする姿は、きっと保護者にも伝わり、ここまで積み上げてきた信頼関係をさらに積み上げることができるでしょう。
では、どんなことに力を入れ、子供を伸ばしていったらよいのでしょうか。まずクラス全員で、これまでの日々を振り返ります。そして、ぜひともこれに挑戦しようという目標を決めます。
この学年の最後までにやっておきたいこと。これまで挑戦したけどうまくいかなかったこと。1度はうまくいったけど、しばらくやっていなかったことなど、自由に考えさせます。教師から課題を出してもいいでしょう。そして、このクラスが終わるまでにそれらを達成しようと呼びかけるのです。
例えば、次のようなことです。
○学校をきれいにする(教材室や階段裏などを掃除する)。
○全員がチャイム着席する。
○給食を完食する(助け合って残さない)。
○全員がハンカチ、ティッシュを持ってくる。
○漢字の小テスト5回の平均を90点以上にする。
どんな目標にするのか、いくつの目標を設定するのかは、今のクラスの状態によります。
小テスト5回の平均がかなりがんばっても90点にいかないなら、目指すのは85点でもいいでしょう。今よりもがんばれば達成できる、手が届く目標にします。給食の完食も、1回でも達成すればいいのか、期間内に10回達成すればいいのか、それとも1週間連続なのか。その設定は子供たちと十分に話し合って決めましょう。
また、全員がハンカチを持ってくるなどの取組は、1人の子が忘れたときに、その子を責めるようなクラスならば、目標にしないほうがいいでしょう。
クラスがかなり落ち着かなく、厳しい状況になっているならば、学習面1つ、生活面1つに絞って目標を決めるほうが無難です。
この時期の目標設定は、クラスの状況が大きく影響しますので、柔軟に考えていきましょう。
ラストスパートの効果を活用しよう
ラストスパートとは、「 競走などで、ゴール近くで最後のがんばりを見せて力走」することであり、そのことから「物事の終了間際に、全力でことにあたる」という意味ですよね。
ゴールが間近だと意識するからこそ、最後のがんばりがきくわけです。逆に言えば、いつゴールが来るか分からないと、スパートはかけられないということになります。
そこでぜひとも作成したいのが、カウントダウンボードです。そこに、先ほど挙げた目標を添えるのです。
例えば、6つの目標を立てたら、それらを日めくりカレンダー(カウントダウンボード)の下に掲示します。そして、目標が達成できたらシールを貼ります。その達成状況を毎日確認しましょう。
すると、次第に日数が減ってくるのを見ている子たちは、目標があまり達成されていなければ、このままではいけないと本気になります。そうやって具体的にがんばらせていきましょう。
そして、中間目標を達成したら(例えば、6つの目標のうち3つ達成できたら)、そのご褒美として学級レクをすると決めておきます(時間がないなら、牛乳で乾杯する程度でもいいでしょう)。
こうすることで、だれることなく、目標に向かって、みんなで力を合わせることができるでしょう。なお、カウントダウンボードは、クラスがうまくいっていないときにも役立ちます。
ここまでなんとかがんばってきたという先生もいるでしょう。そういう人はぜひとも、自分の中でカウントダウンを活用しましょう。終わりが見えてくると、なんとか耐えられることも多いのです(もちろん、無理は禁物)。
教科の遅れを取り戻そう
保護者を味方にするために大切なこと、その1つに、保護者に不信感をもたれないことがあります。この時期に不信感をもたれがちなのが、学習進度です。
隣のクラスに比べて、うちのクラスはかなり遅れている。大丈夫なんだろうか。自分の子供が土日に参加している野球チームなどで、保護者同士がそんな話をしていることがあります(実際それで不安になって、私に相談してきた方がいました)。保護者間のネットワークを甘く見てはいけないのです。
若い先生ほど、授業進度が遅れがちだと思います。ベテランは軽重をつけるのがうまく、遅れをさっと取り戻しているはずです。
ですので、もし自分の授業が遅れているなと思ったら、早め早めに手を打ちましょう。といっても、どんどん進めて、子供の学力が身に付いていないようでは困ります。
では、どうやって取り戻すのか。教科別におおまかに説明します。
算数は、省略してはいけません。漏れ落ちがあると次の学年で困るからです。そこで、丁寧にやりすぎるのではなく、7割くらいの子が理解したら、次に進むくらいのペースで授業をするようにします。そして、少しでも早めに教科書を終えて、復習の期間をとります。そこで、算数が苦手な子に個別指導します。結果的には、そのほうが算数が苦手な子を救うことにもなるでしょう。
国語は、多少の省略がききます。大切なのは音読です。2時間から3時間、徹底的に音読し、語句の意味などは教師が解説してしまいましょう。音読しながら意味を解説、補足していくのです。これを3時間もやれば、どんな文章でも概ね理解できます。どうしても時間が足りない場合は、そのくらいで先に進んでもかまいません。
社会は、遅れると、先生がどんどん説明していくような、非常につまらなく、かつ力の付かない授業になりがちです。先生が説明していくだけの授業ならば、穴埋めプリントを作成し、教科書を見ながら子供に答えを書かせていくほうがよいでしょう。そのほうが、頭に入ります。そして、その作業を自力で行うのが難しいという子には、クラスでプリントに取り組ませている間に個別に指導しましょう。理科も実験以外の場面ではこの方法が使えます。
なお、ここで述べたのは、あくまでも緊急の場合の対処法であり、日頃から進度が遅れないようにすることが大切なのは言うまでもありません。
瀧澤真(たきざわ・まこと)●千葉県公立小学校校長。1967年埼玉県生まれ。千葉県公立小学校教諭、教頭、袖ヶ浦市教育委員会学校教育課長などを経て現職。木更津技法研主宰。著書に『WHYでわかる!HOWでできる!国語の授業Q&A』(明治図書出版)、『道徳読み活用法』(さくら社)、『職員室がつらくなったら読む本。』(学陽書房)など、多数。
イラスト/高橋正輝、イラストAC
【瀧澤真先生執筆 連載】
学級担任の時短術(全12回)
【瀧澤真先生ご著書】
まわりの先生から「むむっ! 授業の腕、プロ級になったね」と言われる本。
まわりの先生から「おっ! クラスまとまったね」と言われる本。