四季の変化や年中行事でつくる楽しい授業とは?「教師という仕事が10倍楽しくなるヒント」きっとおもしろい発見がある! #9

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教師という仕事が10倍楽しくなるヒント~きっとおもしろい発見がある!~
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帝京平成大学教授

吉藤玲子
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教師という仕事が10倍楽しくなるヒントの8回目のテーマは、「四季の変化や年中行事でつくる楽しい授業とは?」です。四季の変化があまり見られなくなった昨今ですが、それでも様々なところに四季の変化が感じられます。また年中行事も、歴史や文化を知る授業につながります。四季の変化や年中行事に着目して、子供たちといっしょに楽しい授業に取り組んでみませんか。

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執筆/吉藤玲子(よしふじれいこ)
帝京平成大学教授。1961年、東京都生まれ。日本女子大学卒業後、小学校教員・校長としての経歴を含め、38年間、東京都の教育活動に携わる。専門は社会科教育。学級経営の傍ら、文部科学省「中央教育審議会教育課程部社会科」審議員等様々な委員を兼務。校長になってからは、女性初の全国小学校社会科研究協議会会長、東京都小学校社会科研究会会長職を担う。2022年から現職。現在、小学校の教員を目指す学生を教えている。学校経営、社会科に関わる文献等著書多数。

四季の変化があまり見られなくなった

この夏は猛暑の毎日でした。日本は、いつの間にか四季の変化があまり見られなくなり、暑い夏と寒さの厳しい冬が多くを占める1年になってしまいました。学校現場では、毎年、運動会が行われますが、この日程設定も難しくなりました。春の運動会は、5月であれば今までは涼しかったのですが、今年はゴールデンウィークから30度を超える暑い日が続き、熱中症などへの配慮が大変でした。秋の運動会も、今年は9月になってもなかなか涼しくならず、暑い日々が続き、校庭での練習ができないなどのことがありました。思い切って10月下旬や11月初旬に運動会を変更した学校も出てきました。

夏の水泳指導も熱中症アラートが出てしまうとできなくなります。6月の早い時期から水泳の授業を設定し、夏休み中の水泳指導を断念する案も出てきています。子供たちの安全を優先にして、固定概念に縛られず、柔軟な対応をしていくことが学校現場には望まれています。

そのような暑い日々の中で学校の周りの自然を見てみようという活動は、なかなか難しいかもしれません。でも、まだ桜の咲く季節、紅葉の季節、さわやかな季節は短いながらもありますので、有効に活用して、学校の周りの四季の変化やその中で行われている行事に着目して、楽しい学校生活を過ごしてみましょう。

1、2年生の生活科や中学年の理科の授業では、学校の周りの四季の変化に着目します。校庭の花壇や学校近くの公園の様子の変化から四季の移り変わりを見て学んでいきます。私が最後に校長で勤務していた学校は、目の前に大きな池があったので、その周りの自然の変化を楽しむことができました。でも、駅前の学校であったり、ビル街の中の学校であったりした場合は、自然と触れ合う機会が自ずと減ってしまいます。

どうやって自然の変化に着目させたらよいか

学校には必ず花壇があります。子供たちは、その花壇にいるダンゴムシが大好きです。集めてきては、「先生、見付けたよ」と報告してくれます。実は、私は、高学年の担任が多かったので、生活科の中の特に自然に着目した単元の経験があまりありませんでした。でも現場の先生たちや子供たちといっしょに生活科を学ぶ中で、自然に気付いていくことの楽しさを知りました。

まず、学校の花壇を日々のぞいてみましょう。雑草の生え方も季節によって違います。最近は冬でもあまり見られなくなった霜柱なども見付けることができます。夏、虫が花壇に植えてある作物などに付いたり葉を食べてしまったりしているのを見付けるのも楽しい発見です。

次に、校庭にある木々をよく見てください。同じ緑の葉でも季節によって、色の濃さが違います。秋の落ち葉は格好の教材です。踏んでみたときの音を子供たちに表現させます。「カサカサ」「ザックリ」「ザクザク」いろいろな音の表現が出てくると思います。1枚の落ち葉から創作画も作成できます。大人は落ち葉をカエルの口ぐらいにしか考えられないかもしれませんが、子供の発想はすごいです。バイオリン、魚のアンコウ、潜水艦、船、ウサギの耳など、どんどん出てきます。

そして、時間があれば学校近くの公園をのぞいてください。私は、高学年の担任のときは、忙しくて学校近くの公園の様子などをあまり意識して見たことがありませんでした。でも注意して訪れるようになると、都会の真ん中の公園でもセミの鳴き声を聞くことができます。4月と1月ではまったく公園の自然の様子は違います。

当たり前のことを言っているようですが、ちょっと立ち止まって学校の周りを見てみれば、そこには学習の教材となるものがたくさんあります。町探険をする際もお店屋さんに着目しがちですが、街の中の花屋さんや街路樹、公園なども見るようにすると発見することが増えます。ぜひ、子供の目線で学校の周りの自然を発見してみてください。そして、子供たちと季節の変化を楽しむ会話をしてみてください。

吉藤先生連載8回目イラスト

季節の変化と年中行事を楽しもう

お隣の国の中国や韓国は、旧暦で年中行事を行います。だから日本の中秋の名月に当たるお月見の頃がお盆になります。韓国ではチュソクと言いますが、連休になり国内外へ出かける人が多いようです。先日、東京の韓国学校で行われたチュソクのイベントに参加したときに韓国人の先生が「本国ではこのような行事をしないで、皆旅行に行っています。だから学校で教えることは大切だと思います」と言われていました。日本も同じですね。お年寄りがいる家では、お盆の行事をすることも多いでしょうが、その頃、休みが続けて取れるので旅行に出かけようと考える家庭も多いでしょう。

行事を大切にしよう、学校で教えようとすると、働き方改革と言われる中で、また仕事が増えるのかと言われそうです。でもこの年中行事に触れることは、日本の季節の変化に触れることにもつながります。ぜひ、うまく時間をつくって取り組んだらよいと思います。いくつかの年中行事を学校で扱った事例を紹介します。

お正月集会

お正月に行う昔からの遊びを縦割り班などに分かれて行います。福笑いや百人一首(坊主めくり)、羽子板、凧揚げなどです。冬休み中に子供たちに日本の冬の行事を調べさせておくと、学習の幅が広がります。年末の大掃除、町会や児童館などでの餅付き、正月の飾り、おせち料理、七草がゆ、初詣などです。せっかく1人1台タブレットを自宅に持ち帰っているのですから、調べて気になるインターネット上の資料などを保存させて、3学期に発表させてもよいでしょう。

日本の年中行事は、かつて国の多くが農業に携わっていた頃の伝統に根付いています。豊作を願う行事が多いのです。門松を飾るのは、年神様が迷わずに家に来てもらうのだということを知っている子供たちはどれくらいいるでしょうか。

おせち料理にも、海老なら「元気に長生きできますように」、田作りなら「農作物が豊かに実りますように」などそれぞれ意味があります。そんなことを調べさせてみるのもよいでしょう。

現代は、本当に忙しい時代です。子供も教師も時間に追われています。そのような中で、形は変わってきているものの何百年も前から続いている日本の慣習に触れてみることは、少しほっとした気分を味わうことにつながりませんか。時代は変われど、人は健康や仕事の成功を願って生きてきたことを知るのも感慨深いではありませんか。

節分とファスナハト

「忘れ物鬼をクラスから追い出そう!」「自分勝手鬼を退治!」など、学級から追い出したい鬼を短冊に書いて、発表する節分集会はよく学校で行われています。節分の由来は新しい季節を無病息災で過ごせるようにという願いをこめて行われたもので、もともとは立春、立夏、立秋、立冬と年4回行われていたそうです。節分の日に家で豆まきをする家庭も多いでしょう。ここ数年は私が子供の頃にはなかった恵方巻が大人気ですね。

季節の変わり目を祝うことは世界でも同じであり、以前、国際理解教育を研究していた学校では、節分に合わせて、スイスの祭り「バーゼル・ファスナハト」の集会を行いました。たまたま何か世界で共通した行事はないか調べていたら出くわし、また保護者にスイス人の方がいらしたので子供たちと楽しい集会を企画し、実施することができました。「バーゼル・ファスナハト」は、スイス最大の祭りとされ、人々は厳しい冬を追い出して春を迎えることを祝い、仮装してパレードを行います。

私がいた学校でも、体育館の壁面にスイスの街並みの掲示を行い、子供たちがそれぞれ仮装してパレードを行いました。子供たちは仮装が大好きですから、とても盛り上がりました。日本の節分についても学習し、自然とともに生きるということは日本も世界の国々も同じであるということを学びました。

百人一首から昔の人の思いを感じよう

漫画や映画でも取り上げられることがあったので、百人一首を知っている子供も多いでしょう。今から800年前にできたと言われる小倉百人一首は、恋の歌が一番多いのですが、次に春夏秋冬の季節のことを詠んだ歌が多いのです。例えば桜の咲く頃に、紀友則の「久方の光のどけき 春の日に しづごころなく 花の散るらむ」などを桜の花の写真といっしょに詠んで、今と変わらない昔の人の思いを知ることは子供の情緒を育てることにつながると思います。

私が校長をしていた小学校では、1年生から百人一首を覚えていました。「全部覚えると百人一首博士になるよ」と目標を定め、行ってきましたが、子供にも保護者にも好評でした。ある1年生の学級では、1月の学校公開の授業の中で百人一首のかるた取りを実施していましたが、保護者のアンケートで「子供たちが自分より早くかるたを取ることができてすごいと思いました」という回答が寄せられていました。

いつの時代も人間は、歳を取ること、もの悲しい季節、桜の花やおぼろ月夜の美しさ、世の移り変わりのはかなさに思いを寄せるものだということを百人一首から学ぶことができます。ぜひ、難しいものだと決めつけないで、先生も子供たちといっしょに百人一首を体験してみてください。

七夕飾りから学んだこと

7月7日は七夕です。最近では、竹を買う場所、飾ったりする場所がないことから、笹に願いごとを吊るす学校は減ってきましたが、この頃になると子供たちが、自分の願い事を短冊に書いて掲示する学校は多いと思います。

子供たちの将来の夢も変わってきて、近頃は多種多様な職業が短冊に書かれるようになりました。子供たちには、「単にお金持ちになりたい!」というようなことだけでなく、どのような仕事をしたいのかを書かせたいものです。お金持ちになりたいなら、お金持ちになって何をしたいのかまで考えさせ、ぜひ、人のために働ける人材の芽を育てたいものです。

「短冊に願い事を書いて笹に飾る」という習慣は、日本だけのもののようです。中国と韓国、台湾の留学生が七夕集会を行ったときに交流に来て、織姫や彦星の話は同じだが、願いごとを自分は初めて書いたと言っていました。

また、日本では、七夕の日は晴れたほうがよいですが、韓国では、雨は2人の涙と捉えていて、七夕の日の雨は歓迎されていると聞きました。同じアジア圏の国で同じ年中行事をしていてもいろいろと違うのだなと勉強になりました。

祭りに参加しよう

東京では、5月のはじめから秋頃まで毎週どこかでお祭りがあります。コロナ禍で中断されていた祭りも復活し、威勢のよいかけ声が各地に戻ってきました。1000年以上も前から続くお祭りや、最近始まったお祭りなどいろいろありますが、地域のみんながいっしょになって、盛り上がることのできる楽しい行事の1つです。

子供たちも縁日が大好きです。祭りは、だいたい土日、もしくは、平日の夜の場合が多いです。みんなが参加しやすいようにと日程が組まれているのですが、先生たちにとっては休日出勤になってしまいます。しかし、地域の祭りには、積極的に参加してみましょう。得ることがたくさんあります。子供たちは、自分たちが神輿(みこし)を担ぐ姿を先生が見に来てくれればうれしいですし、大人神輿を町会の人たちといっしょに先生たちが担いでくれれば、子供たちも一体感を感じ、これもまた喜びます。そして、何より、先生たち自身も祭りに参加すれば地域の人たちと仲良くなれます。

生活科で「季節のくらし」について学ぶときや社会科の4年生で「郷土の伝統・文化」の学習の中で、地域に祭りがある場合はぜひ教材として扱ってほしいです。

祭りは、その祭りを実際に行うまでに大変な準備を必要とします。神輿の起源は、もとは収穫祭であったと言われていますが、現代では地域が一つになり、その地域の町おこしにつながる意味合いも含めて継承されています。

子供たちには、祭りを楽しむだけでなく、ぜひ裏で働いている町会の人や手伝いの方たちにも着目させましょう。そして、改めて地域のよさを見直し、地域に誇りをもったり愛着をもったりしてほしいです。

私は、祭りが盛んな下町生まれの下町育ちなので、神輿には何の抵抗もありませんでしたが、知っている先生たちの中には、生まれて初めて神輿を担いだ人もいました。そのときは、少し肩が痛くなったけれど、とてもよい体験だったと話しています。

お祭りも真夏の祭りだと水をかけるなどします。秋の祭りだと稲穂を投げている祭りもあります。季節に応じた対応をしています。日本の四季と合わせて学習できます。

日々の忙しさの中で私たちは、季節を楽しむ余裕もないのが現状かもしれません。でもちょっとだけ、朝の風がさわやかになったら、木々を見てみましょう。衣替えをしたら、地面の土を見てみましょう。何か発見があるかもしれません。そんな心の余裕をもつと、また仕事に向かう姿勢も変わってきます。時間を上手に使いましょう。誰にでも1年の日数と1日の時間数は同じですから、有効に使うことを考えましょう。   

構成/浅原孝子 イラスト/有田リリコ

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