教員の残業時間 【わかる!教育ニュース#36】

連載
中澤記者の「わかる!教育ニュース」

先生だったら知っておきたい、様々な教育ニュースについて解説します。連載第36回のテーマは「教員の残業時間」です。

文部科学省は、教員の残業時間の上限指針を規則で定めるよう、教育委員会に要請

物事を進める際の、目指す方向性や基本方針を示した「指針」。よく目にするものの、日々意識されているのでしょうか。

教員の時間外在校等時間(残業時間)の上限を巡って文部科学省が出した指針を踏まえ、教育委員会として指針を定めて規則に盛り込んでいない自治体が、34市町村あることが同省のまとめで分かりました。このうち15市町村は、2024年度中でも規則を整備する予定がありません。

文科省の指針では、残業は月45時間、年360時間まで。指針が絵に描いた餅にならないよう、教委が打つべきことも示しています。文科省の指針を基に、それぞれの規則として明記するのもその一つ。タイムカードなど、客観的な形で勤務時間をつかみ、必要に応じて見直しや環境整備をし、事後の検証をすることも求めています。

各校の取組状況を把握し、現場の負担軽減や管理職への指示など改善を図っている教委は、92.2%ありました。ところが、残業上限を超えた学校に、業務や環境整備などの事後検証をしているかを尋ねると、「していない」が55.9%に上りました。一連の結果に、文科省は11月6日付の教委への通知で、規則で上限指針を定めるよう要請しました。改善の事後検証や、教員の働き方改革に対する保護者や地域の理解を促すことも改めて求めています。

文科省は残業上限に関する定めが未整備の自治体名を公表

教員の現状を「我が国の未来を左右しかねない危機的状況」と表現した、8月の中央教育審議会の特別部会の「緊急提言」でも、長時間労働を問題視。国や都道府県、市町村、学校がやるべきことをし、社会ぐるみで解決に当たるよう訴えたばかりです。 

その流れの中、文科省は今回の調査で、残業上限に関する定めが未整備の自治体名を公表しました。盛山正仁文科相は10月24日の定例会見で、「働き方改革、処遇の改善、学校の指導運営体制の充実を一体的に進め、教師が教師でなければできないことに全力投球できる環境を実現すべきだ」と説明し、整備を求め続ける姿勢を見せました。

一方で、記者からは「文科省が指針を定めても、人事権は都道府県、服務監督権は市町村で、いわば3層構造。国がやると言っても現場にうまく下りず、自治体間の違いが出ている」と構造的なむずかしさに言及する意見も出ました。盛山文科相は文科省の権限や地方の独自性の観点から、国が教委に強く命じるのはむずかしいと認め、「お願い姿勢」を崩しませんでした。 ただ、指針は上限ぎりぎりまで働くことを、認めるものではありません。上限を超えないよう、みんなが意識する目安です。上限を上回って働く人が多い一因は、仕事の量が減らないから。「教員の働き方改革」が唱えられてから、随分経ちました。今はもう、学校を取り巻く関係者すべてが、教員が過度に担わされた仕事を減らすため、具体的に行動する段階です。

【わかる! 教育ニュース】次回は、11月30日公開予定です。

執筆/東京新聞記者・中澤佳子

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