ネット型の教材は何を選べばいい?<ハンドテニス> 【使える知恵満載! ブラッシュアップ 体育授業 #39】
前回#38では相手とラリーを続ける「続けるくん」を紹介しました。「続けるくん」に慣れてボールをはじく技能が高まってくると、ネットの近くの狭い範囲で小さくラリーをする様子が見られるようになります。ゲームが停滞しているようにも見えますが、ボールをはじく技能が高まってコントロールできていることの証左でもあります。こうなってきたら、相手がボールを返せないところをねらって得点を競い合う教材「ハンドテニス」に移行しましょう。
執筆/群馬県公立小学校教諭・栗原章滉
監修/筑波大学附属小学校教諭
体育授業研鑽会代表
筑波学校体育研究会理事・平川 譲
目次
1 コート
「続けるくん」の場に、上図のようにコートのラインを追加します。ラインの引き方は#5を参考にしてください。
2 チーム
基本的には「続けるくん」と同じチームで行いますが、「続けるくん」での実態に応じてチームを組み直してもよいでしょう。
3 ルール
⑴ 行い方
●ゲームは2人対2人で、ゲームに出ていない人は得点係と応援をする。
●前後半(3〜5分ずつ)でメンバーを交代する(3人チームの場合は、1人が連続で出る)。
●サーブは両手下投げで相手コートに投げ入れる。
●サーブも含め相手からのボールは、自分のコートにワンバウンドさせてから相手コートに返す。
●両手の平で下からボールをはじいて、相手コートへ返す(児童の実態に応じて片手にしてもよい)。
⑵ 得点・勝敗
●1バウンド目が相手コート内に入り、2バウンドしたら得点。
●はじいたボールが相手コートの外に出たり、バーを越えられなかったりしたら相手の得点。
●判定はセルフジャッジで行い、揉めた場合はじゃんけんで決める。
●前後半の合計得点で勝敗を決める。
⑶ その他
●対戦相手の変更は、入れ替え戦方式で行う。4つのコートの場合、下図のように各コートに10点から40点の得点を振り、勝ったチームは40点コート方向に、負けたチームは10点コート方向にずれる。その時、10点コートで負けたチーム、40点コートで勝ったチームはそのままコートにとどまる。
●次回の授業でスムーズにゲームをスタートするために、授業の終了時に最後に自分がいたコートの点数をノートに記入する。
4 こんな意見が出た時は
1回で相手コートに返せないことがあると、子どもから「味方がもう1回打っちゃいけないの?」という意見が出てきます。そのような意見が出てきたら、1回であれば「お助けあり」(1回は味方にパスをしてもいい)というルールを追加してもよいでしょう。そうすることで、1回で返せないボールを味方にパスをするだけでなく、より確実に相手が取れないところをねらうために、あえて1度パスをするといった姿も見られるようになります。こういった仲間との連携プレーも、今後のネット型の学習につながります。
5 ハンドテニスのメリット
⑴ 技能を段階的に習得できる
ハンドテニスでは、ワンバウンドのボールを手のひらではじいて相手コートに返すという比較的簡単な技能を用います。前回紹介した「続けるくん」から、今回のハンドテニスへと単元を進めていくことで、段階的に技能を習得することができます。年度はじめの体つくり運動で、2人組でラリーをするなどして基礎技能を高めておくことも、「続けるくん」の導入に効果的です。
⑵ ネット型ゲームの戦術理解につながる
この教材では、
・相手のいない場所をねらってボールを返すこと
・ボールが来る場所を予測して動くこと
・仲間と連携すること(お助けありにした場合)
などのネット型ゲームで必要となる様々な戦術を学ぶことができます。その際、上記のように技能が比較的簡単であることや、ワンバウンドのゲームであることにより、ゲーム中にこれらの戦術について意識する余裕が生まれたり、単元の中で戦術について学習する時間を多く確保できたりすることにつながります。
◇
ハンドテニスの授業では、プレーのたびに盛り上がる姿がたくさん見られます。運動が得意な子も苦手な子も一緒に楽しみ、盛り上がりながらネット型ゲームの学習ができる魅力的なハンドテニスをぜひ試してください。
【参考文献】
木下光正(2015)『「できた!」が子どもから聞こえてくる体育授業9つのポイント』学事出版
イラスト/佐藤道子
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執筆
栗原 章滉
群馬県公立小学校 教諭
1996年、群馬県伊勢崎市生まれ。運動が得意な子も苦手な子もみんなが楽しめて、「できるようになった」という成果を実感できる体育授業を目指し、日々研鑽中。
監修
平川 譲
筑波大学附属小学校 教諭
体育授業研鑽会 代表
筑波学校体育研究会 理事
1966年千葉県南房総市生まれ。楽しく力がつく、簡単・手軽な体育授業を研究。日本中の教師が簡単・手軽で成果が上がる授業を実践して、日本中の子どもが基礎的な運動技能を獲得して運動好きになるように研究を継続中。『体育授業に大切な3つの力』(東洋館出版社)等、著書多数。