「アフターコロナの取組を」保護者を味方にする学級経営術 #8
学級担任なら、一度は保護者対応に悩んだ経験があるのではないでしょうか。しかし、保護者が味方になってくれたら、こんなに心強いことはありません。この連載では、保護者が担任と学級を応援したくなるような学級経営について、その月の学校状況に合わせたアイデアを紹介します。第8回は、アフターコロナの取組を紹介します。
執筆/千葉県公立小学校校長・瀧澤真
目次
保護者は我が子の様子で担任の人柄や実践を知る
この連載のタイトルに「保護者を味方にする」とありますが、そのためにいちばん効果があるのは、「子供が楽しく学校に通っている」「子供の学校生活が充実している」ことです。保護者は我が子の様子、我が子との会話で、担任の人柄や実践を知るのです。そして、それによって担任を信頼し、味方になってくれるのです。
逆に言えば、担任がどんなに学級通信で情報発信したとしても、子供が毎日つまらなそうに学校に通っていれば、保護者は「もっと子供が生き生きするような取組をしてほしい」「学級通信を出す暇があったら、しっかり子供のことを見てほしい」などと不満を持ち、逆効果になりかねません。
では、どんな取組をするとよいのでしょうか。
アフターコロナの取組をしよう
地域や学校によって差があるでしょうが、私が自校の子供たちを見ていて思うのは、親しい人とは話ができても、さほど関わりがない人とのコミュニケーションが苦手だということです。
その原因の1つが、コロナウイルス感染症の影響です。コロナによって自由な交流が制限され、ごく親しい人とのクローズサークルでのコミュニケーションしかとれないようになっています。
これでは学校の楽しさは半減するでしょう。そこで、ぜひ取り組んでほしいことを2つ提案します。
誰もが分け隔てなく楽しめるレクをしよう!
男女の仲がよいクラスになっていますか? うまくいっているクラスというのは、男女の分け隔てなくつき合っているものです。それは偏見や差別がないということです。逆に言えば、男女仲よく、誰もが分け隔てなく遊ぶことによって、偏見や差別意識をなくしていくことができます。
では、どんなレクがよいでしょうか。
○運動経験、運動神経にかかわらず楽しめる
○協力する場面がある
こんな条件をクリアする遊びがよいでしょう。「男女の分け隔てなく」というのは、正確には「誰もが分け隔てなく」ということになります。
ところで今はなかなか難しい時代で、「男女仲よく」などというのはジェンダーバイアスを助長するのではという意見があるかもしれません。しかし、ここで言いたいのは、「男女仲よくしましょう」と子供たちに呼びかけようということではありません。
子供たちの様子をみて、男女はもちろんのこと、誰もが分け隔てなくつき合えるクラスになっているかを確認しましょうということです。そして、残念ながらそうではないようならば、その1つの切り口として、みんなで協力するような遊びをしてみましょうということです。
私が自分のクラスでよく行っていたのは、「人間コピー」というゲームです。とても手軽にでき、かつみんなが楽しめる遊びです。
【概要】
廊下に見本の絵を貼ります。それを見に行った子供が、どんな絵だったかを教室にいる子供たちに言葉で伝えます。ジェスチャーや場所を指さすことは禁止です。言葉で伝えただけで、どのくらいそっくりな絵が描けるのかを競います。
【進め方】
①5人程度のグループをつくる。
②廊下に見本の絵を貼る。
③絵を描く人を1人決める。この人は廊下の絵を見ることはできない。
④1人が廊下に出て、見本の絵を見る。そして教室に戻り、言葉だけでどんな絵だったかを伝える。
⑤絵を描いた人は、見本の絵を見に行き、次に絵を描く人に伝える。これを繰り返す。
⑥10分程度で終了。完成した絵を黒板に貼り、よい部分を認め合うことを中心にみんなで話し合う。
⑦班で活動を振り返る。
⑦班での振り返りでは、以下のようなことを話し合います。実は、この振り返りが重要です。
・いちばん絵を覚えていたのは誰か
・いちばんみんなの意見をまとめたのは誰か
・みんなを応援したり、励ましたりしたのは誰か
・自分はどんなことをがんばったか
・どんな友達のよさを発見したか
この振り返りを通して、協力することの大切さを覚えていきます。ですので、この遊びは何回か行うとよいでしょう。
そこで、1回目の見本の絵は、単純な形のものを用意しチャレンジさせます。そして2回目、3回目と難しくしていきます。3回目はカラーの絵を用意し、「今日はカラーコピー機になってもらいますよ」などと声をかけると、子供たちのやる気も高まります。
他にも「みんなの教育技術」には様々なレクがアップされていますので、自分のクラスにあったものを探し、チャレンジしてみましょう。
給食で楽しく会話をしよう
「黙食」などということが言われるようになりました。でも、給食中にわいわい会話しながら食べるのも楽しいものです。そういう楽しさを、子供たちに味わわせたいですよね。先生方のクラスは、班のメンバーが互いにいろいろな話をして、絆を深めていますか。
もしかしたら、元気な子が一方的にしゃべっているだけかもしれません。そこで、先生が1班ずつ回っていき、班の子供たちと楽しく会話するようにしてみましょう。
先生が一緒に食べるだけで、喜ぶ子供もいます。そんな時間はないという方もいるでしょうが、10分程度多く時間を使うだけです。そして、楽しい雰囲気がつくれるならば、その10分は決して惜しいものではないはずです。
では、どんな会話をしたらよいでしょうか。
おとなしい子が多く、どうも会話が弾まないという場合には、「しりとり」がお勧めです。単純ですが、意外に楽しく取り組めます。学年によっては、「動物の名前」「学校にある物」などジャンルを絞って難易度をあげてもよいでしょう。
ある程度会話できるようになったら、お題を決めて、「連続質問ゲーム」をしましょう。例えば、「好きな食べ物」というお題にしたら、1人に何が好きかを発表してもらいます。それに対して、発表者以外が1人ずつ質問していきます。
ぼくはカレーが好きです
なぜカレーが好きなのですか?
辛いものが好きだからです
ほかにはどんな辛い物が好きですか?
キムチも好きです
いつからキムチが好きなんですか?
このように、どんどん質問を連続させていくのです。話が長く続くほどいいのだと伝えましょう。2分続いたら成功です。次の発表者に移ります。何度かやっていると自然に会話が弾むようになっているでしょう。
レクには教師が笑顔で参加し、子供たちに伝播させよう
以上、2つの実践を紹介しました。これらは簡単かつ誰でも取り組めるものですが、取り組む際の注意点をお伝えします。
それは、教師が笑顔で参加するということです。
心理学者ウィリアム・ジェームズの言葉に、「楽しいから笑うのではなく、笑うから楽しいのだ」というものがあり、心理学の実験によってこのことは証明されています(※アズイフの法則)。
※心理学者リチャード・ワイズマンが提唱。その感情になるように行動すれば、その感情が生み出せるとした法則。
たとえ、あまり楽しいと思っていなくても、楽しそうに振る舞うことで、脳は次第に楽しくなってくるということです。ですので、まずは先生が笑顔で、笑いながら参加しましょう。すると、先生自身がどんどん楽しくなってきます。さらに、このアズイフの法則のことを子供たちにも伝え、みんなで大げさなくらいに笑うように呼びかけましょう。
人の気分というのは伝播していくものです。先生が楽しく参加していると、それだけで子供たちの気分もよくなるでしょうし、その影響を受けて楽しみ始めた子供たちがさらに場を盛り上げてくれることでしょう。
そして、日頃から笑顔が絶えない、笑いの絶えないクラスになれば、冒頭にあげたように、そのことが保護者にも伝わっていくでしょう。その取りかかりとして、ぜひ今回紹介した実践を活用してください。
瀧澤真(たきざわ・まこと)●千葉県公立小学校校長。1967年埼玉県生まれ。千葉県公立小学校教諭、教頭、袖ヶ浦市教育委員会学校教育課長などを経て現職。木更津技法研主宰。著書に『WHYでわかる!HOWでできる!国語の授業Q&A』(明治図書出版)、『道徳読み活用法』(さくら社)、『職員室がつらくなったら読む本。』(学陽書房)など、多数。
イラスト/佐藤雅枝、イラストAC
【瀧澤真先生執筆 連載】
学級担任の時短術(全12回)
【瀧澤真先生ご著書】
まわりの先生から「むむっ! 授業の腕、プロ級になったね」と言われる本。
まわりの先生から「おっ! クラスまとまったね」と言われる本。