「障害者差別解消法」とは?【知っておきたい教育用語】

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全ての国民が、障害の有無によって分け隔てられることなく、相互に人格と個性を尊重し合いながら共生する社会の実現に向け、障害を理由とする差別の解消を推進することを目的として、「障害を理由とする差別の解消の推進に関する法律」いわゆる「障害者差別解消法」が制定、施行されました。

執筆/創価大学大学院教職研究科教授・渡辺秀貴

障害者差別解消法制定の経緯

障害者の権利を守ることへの世界的な関心が高まる中で、日本は平成19年に「障害者の権利に関する条約」に署名し、その趣旨を反映するために平成23年には障害者基本法が改正されました。障害者差別解消法(正式名は「障害を理由とする差別の解消の推進に関する法律」)は、障害者基本法を具体化するものとして平成25年に制定されたものです。内閣府がこの法律を国民に広く周知するために作成したリーフレット「障害者差別解消法がスタートします」では、その趣旨や配慮するべきことが分かりやすく解説されています。

障害者差別解消法が目指すもの

この法律では、すべての国民が、障害の有無によって分け隔てられることなく、相互に人格と個性を尊重し合いながら共生する社会を実現することを目指しています。そのために、障害者が日常生活や社会生活を送る上で障壁となるような、社会の事物、制度、慣行、観念その他一切のもの、つまり「社会的障壁」を取り除くことが欠かせません。障害者に対する不当な差別的取り扱いや合理的配慮の不提供を差別と規定しています。

その上で、行政機関や事業者には、差別を解消する具体的な取組を求め、また、普及啓発活動を進め、障害者も含めた国民一人一人がそれぞれの立場で自発的に差別の解消に取り組むことを促しています。

この法で対象とする人

対象とする障害者は、障害者基本法第2条第1号に規定されている人です。身体障害、知的障害、精神障害(発達障害を含む)、その他の心身の機能障害があり、社会の様々な障壁の影響を受けて日常生活や社会生活に相当な制限を受ける状態にある人です。また、心身の機能障害のある人にとっては、環境に適応しにくい状態を社会の側がつくり出している場合もあります。このことからこの法律の対象は、いわゆる障害者手帳を持っている人に限られないとしています。

対象となる事業者

事業者としては、「商業やその他の事業を行う者」が対象となります。それは、目的の営利・非営利、個人・法人の別を問わず、同じサービスを繰り返し継続する意思をもって行う者を指し、ボランティア活動をするグループなども対象となります。

対応要領、対応指針

この法律では、行政機関等で働く職員や事業者が、障害者に適切に対応し、差別の防止また差別の解消を具体的に進めるために、対応要領や対応指針を作成することが定められています。

国・都道府県・市町村などの行政機関等では、所属職員がこの法律の趣旨に適切に対応するために、不当な差別的取扱いや合理的配慮の具体例を盛り込んだ「対応要領」を作成することとされています。

また、事業者を所管する国の行政機関は対応指針を作成します。そこには、不当な差別的取扱いや合理的配慮の具体例が盛り込まれており、事業者はこの指針に基づいて適切な対応をすることが求められます。

対応要領と対応指針は、障害のある人や障害団体などから意見を聞きながら作成することとされています。

上記を整理すると次のようになります。

不当な差別的取扱い

内閣府が作成した啓発リーフレットには、不当な差別的取扱いについて次のような具体例が示されています。

・受付の対応を拒否する。
・本人を無視して介助者や支援者、付き添いの人だけに話しかける。
・学校の入学や受験を拒否する。
・保護者や介助者が一緒にいないと店内に入れない。

これらの事例は、正当な理由がないのに、障害を理由としてサービスの提供を拒否する、その提供にあたって場所や時間帯を制限する、障害のない人には付けない条件などを付けるなどの不当な取扱いを示しています。正当な理由がある場合は、障害のある人に説明し、理解を得るように努めることが大切であることは言うまでもありません。

障害者施策の推進

令和5年3月に「障害者基本計画(第5次)」が閣議決定されました。障害者の自立及び社会参加の支援等のための政策を総合的、計画的に進めることで、障害者の権利に関する条約が目指す社会の実現につなげるとしています。障害者への偏見や差別意識を払拭して、障害者の人権の確保の基本となる考え方や原則への理解促進に継続的に取り組み、多様性と包摂性のある社会の実現を目指す取組が着実に進められようとしています。

▼参考資料
外務省(ウェブサイト)「障害者の権利に関する条約」令和5年2月7日
e-Gov法令検索(ウェブサイト)「障害を理由とする差別の解消の推進に関する法律」平成25年
内閣府(ウェブサイト)「障害を理由とする差別の解消の推進に関する基本方針」平成25年
内閣府(PDF)「障害者差別解消法リーフレット
S-POOL Plus(ウェブサイト)「障害者差別解消法とは?合理的配慮や罰則についても解説
内閣府(PDF)「障害者基本計画(第5次)」令和5年3月

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