「富山・金沢宣言」とは?【知っておきたい教育用語】

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2023年5月12日から15日にかけて、富山市と金沢市でG7教育担当大臣による教育大臣会合が開催されました。自由・平和、法の支配と民主主義の価値観を共有しつつ、永岡桂子文部科学大臣が議長となり、「コロナの影響を踏まえた今後の教育のあり方」を全体テーマとして、4つの大臣会合セッションにおいて議論を実施。これらの成果をまとめた共同宣言の「富山・金沢宣言」を採択しました。

執筆/創価大学大学院教職研究科教授・宮崎猛

G7教育大臣会合「富山・金沢宣言」

G7の教育担当大臣が2023年5月12日から15日、富山・金沢で会合を開き「富山・金沢宣言」を採択しました。参加国は日本、イタリア、カナダ、フランス、米国、英国、ドイツ(議長国順)及び欧州連合(EU)、経済協力開発機構(OECD)、国際連合教育科学文化機関(UNESCO)で、日本の文部科学大臣が議長を務めました。

2023年のG7教育大臣会合の概要

G7教育大臣会合はサミットに合わせて開かれる閣僚級会合の1つで、2023年は広島サミット(5月19日~21日)に合わせて開催されました。今回のサミットでは、教育大臣会合を含め外務大臣会合、農業大臣会合、財務大臣・中央銀行総裁会議など15の会合が各地で開かれました。

G7教育大臣会合は、「コロナの影響を踏まえた今後の教育のあり方」を全体テーマとして、4つの大臣会合セッションで議論が展開されました。また、芝園小学校、八尾中学校、金沢大学といった地元の学校・大学の訪問・交流や、高志の国文学館、富山市ガラス美術館、金沢21世紀美術館、国立工芸館などの文化施設の訪問も行われました。

金沢大学では学生が未来の教育などをテーマに「多様性」「包括性」といったキーワードを盛り込んだプレゼンテーションを行い、各国の閣僚らがそれぞれの国の取組を説明するなどの交流が行われました。富山市立芝園小学校では、児童が日本語と英語で富山の魅力を発表したり、参加者が児童たちと給食を食べたりするなどして交流を深めました。

「富山・金沢宣言」の内容

G7各国間で自由・平和、法の支配と⺠主主義の価値観を共有しつつ、以下の基本的考え方に基づいて、各国で教育政策を進めていくことで合意しました。

・「⺠主主義や自由、法の支配や平和の礎」としての教育の普遍的価値を改めて共有しつつ、持続可能な社会の創り手を育む。
・コロナ禍やウクライナ侵略で停滞した国際的な人的交流の促進に向けて協働して取り組む。
・ウクライナも含め危機的な状況にある子供(特に女子)や学生が質の高い教育にアクセスできるよう取り組む。
・生成AIを含めた近年のデジタル技術の急速な発達が教育に与える正負の影響を認識する。

また、G7が目指す取組の方向性として、以下の4点が確認されました。

1.コロナ禍を経た学校の役割の発揮とICT環境整備
2.全ての子供たちの可能性を引き出す教育の実現
3.社会課題の解決とイノベーションを結び付けて成⻑を生み出す人材の育成
4.国際社会の連携に向け、新たな価値を創造するための国際教育交流の推進

このなかで生成AIを含めた近年のデジタル技術の進展については、「教師と生徒の対面によるやりとりが引き続き最も重要である」として、デジタル技術は「補完するものとして年齢や発達段階に応じたデジタル技術の活用を奨励する」ことが確認されました。

また、デジタル技術は「学習や指導に好機をもたらすと同時に、教育システムに対して課題を提示していることを認識する」と述べ、「教師のICTスキルの向上に取り組む」ことの重要性とともに、子ども自身がデジタル技術の可能性と課題について「自ら取り組むことができるよう、情報活用能力に係る教育を充実させる」ことの重要性が強調されました。

▼参考資料
文部科学省(PDF)「G7教育大臣会合「富山・金沢宣言」(仮訳)」(2023年)
文部科学省(PDF)「2023年G7教育大臣会合 富山・金沢宣言(概要)」(2023年)
NHK「富山 NEWS WEB」(ウェブサイト)「G7教育相会合が閉幕 各国閣僚らが学生と交流」(2023年5月15日)
朝日新聞デジタル(ウェブサイト)「G7教育大臣会合、富山で開幕」(2023年5月13日)

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