菊池省三の教師力UP道場:授業に必要な「4つの力」まとめ(前編)

連載
菊池省三の教師力UP道場

教育実践研究サークル「菊池道場」主催、高知県いの町教育特使、教育実践研究家

菊池省三

菊池省三先生が伝説の授業の達人(鳥?)であるフクロウのショーゾー先生となって、ラビ子・ツネ夫・タヌ吉の3人、いえ3匹の教師のタマゴたちに「生きた授業技術」を伝授するお話。 第8回は、これまで学んできたことの復習です。「授業ライブ力」を高めるために必要な四つの力「マネジメント力」「パフォーマンス力」「トーク力」「ツカミ力」を実践できているでしょうか?

監修/菊池省三

きくち・しょうぞう。1959年愛知県生まれ。2014年度まで福岡県北九州市の小学校教諭を務め、退職。現在、教育実践研究サークル「菊池道場」主催、高知県いの町教育特使、教育実践研究家。『菊池省三の学級づくり方程式』(小学館)ほか著書多数。

ラビ子ツネ夫タヌ吉

スモールステップで学ぶ「授業ライブ力」とは!?

みなさんは、今の授業に満足していますか?
大学や初任者研修などで学んだ教育技術だけでは不十分だと感じたことはありませんか?
もっと子どもたちを引きつける充実した授業をつくりたいと思いませんか?
ラビ子、ツネ夫、タヌ吉の3人、いえ3匹も、そんな思いをもっている教師のタマゴたちです。
この連載は、3匹が「森の大学」の伝説の授業の達人(鳥?)であるフクロウのショーゾー先生のもとで、大学では学びきれなかった「生きた授業技術」を悪戦苦闘しながら学んでいくお話です。

ショーゾー先生とラビ子
ツネ夫とタヌ吉

授業ライブ力を鍛える「4つの力」とは?(前編)

鐘

キ~ンコ~ンカ~ンコ~ン

3匹_左向き

ショーゾー先生、おはようございますっ!

ショーゾー先生

きみたちみんな、晴れて小学校の教師になったと聞いて、わしもうれしいぞい。

ラビ子

ありがとうございます! 先生のご指導のおかげで、私たち、無事教師になることができました!

タヌ吉

オイラはぎりぎりまで危なかったから、ほっとしています。

ツネ夫

ホーント。タヌ吉はよく教師になれたよなー。ってか、よく卒業できたよね〜。

タヌ吉

何を〜!! ツネ夫みたいに人の気持ちがよくわからないヤツなんかに、教師が務まるのかよっ!!

ツネ夫

何だとー!

ラビ子じと目

ちょっと、やめなさいよ、みっともないなあ。けんかするために、今日ここに集まったんじゃないでしょ?

ツネタムしょぼん顔

しょぼん。

ショーゾー先生

3人そろってどうしたのかえ?

ラビ子

はい。実は、教師になったといっても、私たちまだまだわからないことだらけの毎日です。なのでショーゾー先生には、これからも課外講義をしていただけないかな、と思って参りました。

ショーゾー先生

ふむふむ。

ツネタヌ

先生、ぜひお願いします!

ショーゾー先生

ふーむ。教師になっても、教育技術を学ぼうとする姿勢はとても大切なことじゃ。よし、いいじゃろう。

3匹_左向き

ありがとうございます!

ショーゾー先生

実は、まだまだ伝えきれていないと思っていたことがたくさんあるのじゃ。きみたちも現場に出たということで、これからは今までよりゆったりしたペースで続けていこうかのう。

タヌ吉

それは助かります〜。

じと目のラビ子とツネ夫

えっへん!

授業ライブの方程式って?

ショーゾー先生

今回は、これまで学んできたことを確認するために、復習しようかのう。

3匹_左向き

ハイ!

ショーゾー先生

キミたちは、今まで大学で指導計画や指導案づくり、各教科の指導法などひと通り学んできたと思うが、それだけで子どもたちを引きつけることはできたかのう? 教師主導で進めてしまい、子どもたちの反応が今ひとつなんてことはなかったかい?

3匹

ありました……

ショーゾー先生

そうじゃろう。指導計画はあくまでも「計画」だし、指導案はあくまでも「案」なのじゃ。実際は違っていいはずだし、いや、違っているはず。前もって考えた流れに、無理矢理子どもをあてはめてはいけないんじゃ

ツネ夫

頭ではわかっているつもりなんですけれど。

ショーゾー先生

ふむ。例えば、教師の予想と違う反応が出たとき、切り捨ててしまうことはなかったかい? 「他の意見は?」と、「望ましい」答えばかりを求めて、授業を進めてしまうことはなかったかい?

ツネ夫

でもショーゾー先生、繰り返しになりますが、そんなこと言っても子どもたちのすべての反応ばかり優先していたら、タヌ吉みたいに、授業にならなくなっちゃいますよ。

タヌ吉

なんでオイラなんだよ!

ツネ夫

すぐに子どもたちに引きずられちゃって、授業にならなくなっちゃうじゃん。

ショーゾー先生

ふむふむ。確かにその通り。そこでキミたちに身につけてほしかったのがどんな力だったかの? ハイ、タヌ吉。

タヌ吉

鈍感力。

ツネ夫

あ〜、ホントに鈍感だあ。

ショーゾー先生

じゃあ、ラビ子。

ラビ子

ハイッ「授業ライブ力」です。授業ライブ力とは「事前の準備を活かしながらも、実際の授業の中で子どもたちとともに、いきいきした楽しい授業を創り出す力」のことです。

ショーゾー先生

ふむ。それじゃ、タヌ吉。授業ライブ力の方程式を解いてごらん。

タヌ吉

「授業ライブ力=(事前準備力+教室の空気を読む力+子どもを引き出す力)×教師の歌唱力」じゃなくて、えーっと何だっけ?

怒っているツネ夫

もう〜、また同じところで引っかかっているよ。

ショーゾー先生

仕方ないのう。もう一度書くかのう。

ライブ力=(事前準備+教室の空気を読む力+子供を引き出す力)× 教師の人間性

ショーゾー先生

ツネ夫、それぞれについて、説明しなさい。

ツネ夫

「事前準備」は、教材や発問、指示などの事前の授業準備をキチンとする力。「教室の空気を読む力」とは、子どもの状態、場所、状況、時間配分などをもとに、事前の準備を変更修正する力、「子どもを引き出す力」は、子どもをノセる力、ハプニングに対応する力、マイナスをプラスに変える力、子どもと子どもをつなぐ力など、教師の姿勢のことです。

ショーゾー先生

ふむ。これらには、「案」と違うときに「案」を捨てて、その場に対応する判断や技術などの適切な判断力が重要になる。そう考えると、「子どもとともに学ぶ力」といってもいいだろう。これらの要素と教師の人間性がかけ合わさって、はじめてすばらしい授業ができるというわけじゃ。

タヌ吉

ああ、そうだった。

ショーゾー先生

ところでタヌ吉。すぐに子どもたちに引きずられてしまうのは、どこが足らないと思うかい?

タヌ吉

「教室の空気を読む力」かな?

ショーゾー先生

それもあるが、いちばんの原因は、むしろ「子どもを引き出す力」じゃないかの?

タヌ吉

どうしてですか?

ショーゾー先生

ふむ。教師は子どもたちの言動にノセられるのではなく、子どもたちをノセるのが大切だからじゃよ。

タヌ吉

そうかあ。オイラはすぐにノセられちゃうからなあ。

ショーゾー先生

そこがタヌ吉のキャラクターのいいところでもあるんだがのう。ノセられたように見せかけて、実はノセていくように心がけていけばいいんじゃよ。これから、学んでいきなされ。

タヌ吉

ハイッ。

ショーゾー先生

それじゃあタヌ吉。授業ライブ力を高めるために必要な四つの教育技術とは何だったかの?

タヌ吉

ハイッ! 四つの力とは、「マネジメント力」「パフォーマンス力」「トーク力」「ツカミ力」の四つです

ショーゾー先生

ふむふむ。ラビ子、この四つの力とは何か、黒板に書いてみなさい。

ラビ子

ハイッ。

「マネジメント力」「パフォーマンス力」「トーク力」「ツカミ力」の説明の板書
ショーゾー先生

よろしい。一つずつ解説していこう。まずは、パフォーマンス力からいくぞい。子どもをノセて、子どもどうし、あるいはその子どもの過去と今の伸びをつないだり、教室の雰囲気を盛り上げたり、場を温めたりするのが教師のパフォーマンス力じゃ。いいかい、教師は単なる伝達者や評価者であってはならないのじゃ。

タヌ吉

パフォーマンスなら、オイラ、バッチリです!

ショーゾー先生

コラコラ、飲み会なんかで、一芸を見せるパフォーマンスとは違うんじゃぞ。

ツネ夫

先生の言葉に、もうノセられちゃってるよ。

タヌ吉

しょぼん。

ショーゾー先生

次はトーク力じゃ。

ツネ夫

これはぼくの得意分野だな。

タヌ吉

ツネ夫は、一方的にまくし立ててるだけじゃん。

ショーゾー先生

ふむ。一方的に話すことだけでは、トーク力の達人とは言えんのう。子どもの反応や様子に合わせた会話力がトーク力なんじゃ。ユーモアやその場がピリッと引き締まる言葉を意図的に使うのがポイントじゃ。教師が一方的に話すだけでなく、子どもの言葉をとらえ、クラス全体のものにしていく力が必要なんじゃ。

ツネ夫

先生から学んだあと、心がけているんだけれど、やっぱり難しいんだよね〜。

ショーゾー先生

三つめのツカミ力とは、子どもたちの集中力ややる気、意外性、適度な緊張感、好奇心などを引き出す力と言えるじゃろう。教師の働きかけによってきっかけをつくり、授業の大切な部分をより印象に残したり、脱線しかけたときの軌道修正したりすることができるのじゃ。

ラビ子

私はここがどうも苦手です。つい、型どおりの授業で進んでしまうというか、勉強不足というか……。

ショーゾー先生

なーに、気にすることはないぞい。少しずつ学んでいけばいいんじゃ。さて、これら三つの力を組み合わせることで、マネジメント力が十分発揮されるんじゃ。子どもたちの様子を見ながら、ときには作業の時間を多くしたり、ときには意見を言う場を取り入れたりするじゃろう。事前に構成した授業の進行を変更しても、子どもたちにより効果的な授業を組み立て、実行していく力が大切なんじゃ。
それじゃ、ツネ夫、この四つの力の関係をベン図で表してみなさい。

ツネ夫

ハイッ。

ライブ力の図の板書
ショーゾー先生

ふむふむ。よく理解しているようじゃの。まずは3人とも合格じゃ。次の時間では、これまで学んできた、それぞれの「力」を実際に使って、ひとつ模擬授業をしてみるかの。

3匹_左向き

ハイッ。

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構成:関原美和 イラスト:柴田亜樹子

「小四教育技術」2007年9月号~2009年3月号に掲載した記事を再録

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