「子どものメンタルヘルス」とは?【知っておきたい教育用語】

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【みんなの教育用語】教育分野の用語をわかりやすく解説!【毎週月曜更新】

子どもたちのこころは、成長とともに大きく揺れ動き、気持ちが不安定に見えたり、何を考えているのかわからなくなったりします。子どものこころの病気を知り、SOSのサインに気付き、子どものこころと向き合うことが大切です。また、COVID-19による子どものメンタルヘルスも憂慮されます。

執筆/文京学院大学名誉教授・小泉博明

子どものこころのSOSサイン

厚生労働省HPの「こころもメンテしよう」にある「子どものメンタルヘルス」の要点をまとめると、次のようになります。

悩みやストレスが大きくなって、こころがダウンしそうなとき、とくにこころのSOSは睡眠、食欲、体調、行動の4つの面に出てくることが多いでしょう。「今までこんなことなかった」「どうも普段の様子と違う」など、いつもと違うことへの気づきが大切です。そのようなサインが続いている場合、必ずしもこころの病気とは限りませんが、長く続くような場合は、こころのSOSなのかもしれません。

厚生労働省(ウェブサイト)「こころもメンテしよう」より抜粋・要約

学校だからこそ気付きやすいSOSサインがあります。学校は、子どもが1日の大半を過ごし社会生活を送る場所なので、家庭では見えないサインでも、授業や団体行動、友人との関係の中で気付けることがあります。

学校では問題行動の多い子どもばかりに注意が向きがちですが、こころの不調は必ずしも問題行動となって表れるわけではありません。すべての子どもに気を配り、先入観にとらわれず、多様な視点から見守ることが大切です。

こころの病気について知る

子どもの「ひきこもり」「不登校」は病気ではありません。しかしそこに、こころの病気が隠れていたり、こころの病気の原因になったりすることもあります。「自分を傷つける」という行為、自傷行為もすべてがこころの病気ではありませんが、子どものこころがSOSを出している証拠です。

また、一人で悩みを抱えてしまい「消えてしまいたい」というようなサインは、自殺に結びつくこともあります。リスクが切迫していると感じられた場合は、速やかに専門家に相談するなどの対応を行うことが必要です。

子どものこころの病気は、大人とは症状やケアの方法が異なることもありますが、うつ病、不安障害、統合失調症、薬物乱用、摂食障害などの病気があります。

子どものこころと向き合う

学校で子どものこころの不調に気付いたときには、注意する、叱るという姿勢ではなく、一緒に問題を考えようという共感の姿勢、寄り添う姿勢で話を聞きます。また、話をするときは他の子どもには目立たないように、秘密を守ることを約束します。

学校で気付いた子どもの問題は、学校の中だけで解決していこうと考えがちです。しかし、学校の中で起きた問題であっても、学校外の悩みやこころの病気が大きく影響していることが多くあります。保護者と連携して対処し、地域の相談機関や医療機関などの利用できる社会資源との連携についても積極的に考えていくことが、問題を早く解決します。

保護者から子どもについて相談を受けたときには、学校が提供できる資源として、養護教諭やスクールカウンセラーに相談できることを知らせます。子どもが嫌がるならば、保護者だけでも相談に応じることを伝えます。

地域の保健所や保健センター、都道府県・政令指定都市の精神保健福祉センターに相談することもできます。公的な相談窓口では、電話相談、来所相談のどちらも可能で、地域で活動しているこころの専門医も紹介してもらえます。

子どもが医療機関を受診したり、通院していたりする場合、保護者に無断で教職員から主治医に連絡をとっても、医師には守秘義務があるので、何も教えることができません。主治医と連携するためには、保護者を通じて方法を確認する必要があります。

▼参考資料
厚生労働省(ウェブサイト)「こころもメンテしよう
国立精神・神経医療研究センター(ウェブサイト)「こころの情報サイト
ユニセフ(国連児童基金)(ウェブサイト)「世界子供白書2021 子どもたちのメンタルヘルス」 

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