異動先にうまく順応するには?【伸びる教師 伸びない教師 第29回】

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栃木県公立小学校校長

平塚昭仁

今回のテーマは、「異動先にうまく順応するには?」です。4月は異動の季節。異動した教師は新しい学校で戸惑うことが多くなります。そんな時にうまく順応していくにはどうすればよいかという話です。豊富な経験によって培った視点で捉えた、伸びる教師と伸びない教師の違いを具体的な場面を通してお届けする人気連載です。

執筆
平塚昭仁(ひらつか・あきひと)

栃木県公立小学校校長。
2008年に体育科教科担任として宇都宮大学教育学部附属小学校に赴任。体育方法研究会会長。運動が苦手な子も体育が好きになる授業づくりに取り組む。2018年度から2年間、同校副校長を歴任。2020年度から現職。主著『新任教師のしごと 体育科授業の基礎基本』(小学館)。

伸びる教師は異動先にうまく順応し、伸びない教師は前の学校と比較し不満を言う

異動は最大の研修

4月から新しい学校で勤務する方も多いと思います。

「異動は最大の研修」という言葉を聞いたことがあります。異動すると何かと戸惑うことが多く出てきます。

例えば、4月初めの職員会議で、それぞれの係から1年間の計画が出され、説明があります。学校によってやり方や内容が少しずつ違っているため、イメージがうまくつかめず、説明を聞いていても頭に入ってこないことがあります。

また、ICTひとつとっても使っているOSやアプリが違うと使い方を覚えるのにひと苦労です。他にも給食指導、会議のもち方、最終退出のしかたなど、細かいことを挙げたら切りがありません。

学校が変わっただけでこれほど多くのことが違うものなのかと異動のたびに思います。

そんな時、教師も人間ですので前の学校のシステムや子供たちのほうがよかったと思い、つい言ってしまいがちな言葉があります。

自分たちのやり方が否定されたように思う言葉

「前の学校では……」

実際に、前の学校のほうが効率的だったり進んでいたりといったこともあるかもしれません。しかし、以前からこの学校にいた教師からすると、自分たちがこれまでやってきたことを否定された気持ちになります。そうなると、どんなによい提案をしても導入できない理由を挙げられ「例年通りで……」ということになりがちです。

実際に、私も異動した先の学校でこの言葉を頻繁に使っていたところ、ある教師から「先生の前の学校のことは知りませんが、この学校にはこの学校のやり方があります」と、ビシッと言われた記憶があります。

ただ、改善点を伝えたほうが学校のためになる場合もあります。そんな時は言い方を変え、「こんな方法もあるかもしれません」と提案するだけで相手の受け取り方が変わってきます。

前の学校の子供たちと比べない

「この学校の子供たちは……」

新しい学校で面識のない子供たちに対峙すると、なかなか言うことを聞いてくれない場面が出てきます。前の学校の子供たちはもっと素直だったという気持ちになることもあります。そんなとき、つい口に出てきてしまう言葉です。

ただ、この言葉を聞いた周りの教師からは、「この学校の教師という自覚がないのかな」「できないことを子供たちのせいにしている」という疑念を抱かれます。実際に私も自分が担任していた子供たちを新しく赴任してきた教師に引き継いだ時、何度かこの言葉を言われ、不快に思ったことがあります。

同じことを言うのであっても、ある教師は「私の指導力不足だと思うのですが……」と言う前置きをしていました。この前置きがあるだけで周りの受け取り方は大きく違ってきます。時には、「それは先生のせいじゃないですよ」という反応が返ってくることもあります。

前の学校のほうがよかったと思うことは悪いことではありませんが、こうした言動が度重なると人間関係に亀裂が入ることもあります。

それは、子供たちに対しても同じです。

自分のルールを押し付ける教師

以前、隣の学級の子供たちからこんな相談を受けました。

隣の学級の担任は、新しく赴任してきた教師でした。子供たちによると、その担任は4月の初めから給食の配膳のしかた、朝の会のやり方、係活動のしかた、授業のルールなど、これまで学級として取り組んできたことを頭から否定し、自分のルールを押し付けてきたとのことでした。それだけでなく、うまくルールどおりにできない子供に対して厳しく当たるので、学級全体が暗い雰囲気になっているとのことでした。

子供たちからするとこれまで自分たちがしてきたことを否定され、納得がいかないまま新しいルールに従わされたことが嫌だったのだと思います。もち上がりの学級で、その学級独自の文化があったのでなおさらだと思います。

教師側からすると、よりよい方法を子供たちに示して、自分なりの学級をつくっていくことは間違いではありません。ただ、これまでのやり方を否定しなくても新しいルールは取り入れられたのかもしれません。子供たちと納得しながら進むことが一番大切だと思います。

まずはこれまでのやり方に沿う

「郷に入れば郷に従え」という諺があります。

学校が変われば、「システムが違う」「子供たちが違う」のは当然のことです。これまでの自分のやり方では通用しないこともあります。

それらをすべて自分に寄せたり他のせいにしたりするのではなく、まずは、そのやり方に沿ってやってみるという姿勢も大切だと思います。その上で、改善していくことは改善していくスタンスが大事であると私は考えます。

構成/浅原孝子 イラスト/いさやまようこ

※第16回以前は、『教育技術小五小六』に掲載されていました。

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