小6国語「帰り道」板書の技術

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見やすく理解しやすい「単元別 板書の技術」元京都女子大学教授・同附属小学校校長 吉永幸司監修
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今回の教材は、物語文の「帰り道」です。単元の目標である「観点を決めて感想を書き、交流しよう」に向けて、登場人物同士を比較し、お互いの関係性や共通点、相違点を捉えていきます。そのため、登場人物同士を比較しやすくする板書、時系列を分かりやすくする板書を取り入れています。そのような板書の工夫の数々を紹介します。

監修/京都女子大学附属小学校特命副校長・吉永幸司
執筆/埼玉県公立学校教諭・田中崇亮(せせらぎの会)

 

単元名 観点を決めて感想を書き、交流しよう
教材名 「帰り道」(光村図書 6年)

単元の計画(全4時間)

1 同じ出来事に対する律と周也の捉え方や心情について話し合い、単元の目標を確かめる。
2 律と周也の人物像について話し合う。
3 律と周也の心情の変化について話し合い、物語後の律と周也の関係を想像する。
4 観点を決めて感想を書き、交流する。

板書の基本

登場人物同士を比較しやすくする板書

登場人物同士を比較しやすくし、お互いの関係性や共通点、相違点を捉えやすくするために板書の文字や囲み枠を色分けして板書します。

1/4時間目の板書では、1つの出来事に対する律と周也それぞれの捉え方や心情を並べて書くので、区別して比較しやすくするために、律に関することは赤チョーク、周也に関することは黄チョークを使って囲みます。

時系列を分かりやすくする板書

物語の中の時間がどのように進んでいるかを捉えやすくするために、黒板の右から左に向かって時系列に沿って出来事を並べたり、登場人物の心情を板書したりします。

『帰り道』は、2人が学校から帰っている場面の途中に、昼休みの出来事を回想する文章が入ります。3/4時間目の板書では、昼休みの出来事が物語の発端となっていることを理解できるようにするために、律と周也がいた場所などを、「昼休み」「玄関口」「歩道橋」「遊歩道」と時系列に沿ってカードを並べて示します。

板書を利用した授業の進め方(1/4時間目)

小6国語「帰り道」板書の技術 板書
時間目の板書

1 題名から想像をふくらませる

日付・題名・作者を板書し、「帰り道」という題名について想像をふくらませます。登場人物の2人に、自分の体験や心情を重ねながら読み進むことができるようにするため、自分たちが学校からの帰り道にどんなことをしているか、どんな気持ちで帰っているかなどを発表させ、黄チョークで板書します。

2 物語の全文を読み、登場人物を押さえる

めあてを板書し、子供に物語の全文を黙読させます。その後、登場人物を発表させ、「律」「周也」と板書します。また、物語の始まりでは2人がどんな関係だったかを発表させ、黄チョークで板書します。

3 物語の構成を確認する

「文章の書き方の特徴はなんでしょう」と問い、子供の発表を受け止めながら、同じ出来事を2人の視点から別々に書いていることが特徴であることを確認します。物語における「視点」とは、「出来事を語っている立場」を表していることを伝えて、板書します。また、教科書ではに文章が分けて書かれており、教科書のは律の視点、教科書のは周也の視点から書かれていることを子供と確かめ、色分け(律の視点…赤色、周也の視点…黄色)して板書します。

4 どんな出来事があったかを押さえ、律と周也の心情について比較する

教科書P30に書かれている場面から、どんな出来事があったかを押さえ、スペースを開けながら「周也がしゃべり続ける」「昼休み」「二人ともだまりこむ」「天気雨」「雨上がり」と板書します。1人学習の時間をとり、それぞれの出来事に対して律と周也がどんな心情でいるか分かる叙述を考え、発表させます。子供の発表を受け、それぞれの出来事における律と周也の心情が分かる叙述を板書し、律の心情が分かる叙述は赤チョークで囲み、周也の心情が分かる叙述は黄チョークで囲みます。

また、物語が進むにつれて2人の心情に共通する部分が増えていくことを気付きやすくするため、出来事ごとに2人の心情を比較し、異なる(正反対の)部分は青チョークで線を結び、共通する部分は赤チョークで結びます。

5 単元の目標を確かめる

4で比較したことから、気付いたことを発表させ、◎印を付けて板書します(「同じ出来事でも二人の感じ方がちがう。」「二人の共通点が増えていく。」「二人の関係が変わっていく。」 など)。構成の工夫や2人の関係の変化など「帰り道」は様々な観点からおもしろさを感じることができることを伝え、単元のめあて「観点を決めて感想を書き、交流しよう。」を板書します。

板書を利用した授業の進め方(3/4時間目)

小6国語「帰り道」板書の技術 板書
4時間目の板書

1 めあてを確かめる

本時のめあて〈律と周也の心情の変化をとらえ、「その後の二人」について考える。〉を板書します。本時の学習では、叙述を基に律と周也の心情の変化を捉え、2人の関係が物語の中でどのように変わっていくかを理解できるようにし、さらに物語の後にどのような関係になっていくか、想像をふくらますことができるようにすることを伝えます。

2 「言葉にすること」について、律と周也の違いを読み取る

黒板を上段下段に分け、上段には律について、下段には周也についてまとめられるように赤チョークで「律」、黄チョークで「周也」と板書します。

物語の中で「言葉にすること」について悩む2人を対比していることに気付かせるために、「自分が思っていることを言葉にすること」について律と周也は自分自身をどう思っているか、叙述を基に考えて、発表させます。

子供の発表を受けて、律は「思っていることを言葉にできない」ことに悩んでいることを押さえ、上段に板書します。また周也は「自分の言葉が軽く、相手の言葉を受け止められないこと」に悩んでいることを押さえ、下段に板書します。

3 時系列に沿って、2人がいっしょにいた場所などを確かめる 

物語は玄関口から始まっていますが、途中に昼休みの回想が入るため、時間が戻ります。そこで、黒板の上部に「昼休み」「玄関口」「歩道橋」「遊歩道」の順に2人がいっしょにいた場所などを示したカードを貼り、昼休みでの出来事から2人の関係が変化していったことを捉えやすくします。

また、天気雨が降ったことが2人の関係を大きく変えるきっかけとなったことを確かめ、「歩道橋」と「遊歩道」のカードの間に「天気雨がふる」と板書し、青チョークで囲みます。

4 叙述を基に、律と周也の心情の変化を捉える

「昼休み」「玄関口」「歩道橋」「遊歩道」それぞれの場所で、2人がどんな思いでいるか、叙述を基にまとめていきます。先に、教科書のを読み、律の心情が表れている叙述に線を引かせます。線を引いた叙述を発表させ、黒板上段に白チョークで板書し、さらに叙述から読み取れる律の心情を発表させて、赤チョークで板書します。また教科書のを読み、周也についても同じように進めて黒板下段に板書していきます(叙述から読み取れる周也の心情は黄チョークで板書する)。

5 物語の中で律と周也の関係の変化を捉える

律と周也が相手との心の距離をどう感じているか、4の板書に点(律は上段に赤色の点、周也は下段に黄色の点)を打って表します。

黒板の真ん中に近付くほど、相手と心の距離を近く感じていて、真ん中から離れるほど心の距離が遠く感じていることを表すことを伝え、「昼休み」「玄関口」「歩道橋」「遊歩道」それぞれの場面でどこに点を打てばよいかを発表させます。

子供の発表を受け止めて、板書に赤色の点と黄色の点を打ちます。また、赤色の点は赤チョーク、黄色の点は黄チョークを使って線で結びます。こうすることで、途中までは互いの心の距離は広がり続けるものの、天気雨をきっかけにして大きく近付くことを捉えやすくします。

6 物語後の律と周也の関係について、想像をふくらませる

赤色と黄色の矢印の変化などをヒントにして、物語後の律と周也の関係はどうなっていったかを想像させます。なん人かの子供に発表させ、板書し、他の子供が考える手がかりとなるようにします(何でも言い合える仲になって、絆が深まる。けんかが増えるかもしれないけれど、仲良くなる。何も言わなくても通じ合える関係になる。律のほうから周也に話しかけるようになる。 など)。

 

構成/浅原孝子

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