別れゆく児童に、心に残る言葉を贈ろう。担任メッセージのヒント集!
6年生の担任は卒業で。それ以外でも、新学期のクラス替えや人事異動などで、これまで受け持ってきた児童と別れることは多いと思います。また、ここのところ学校の統廃合がどんどん進み、地域コミュニティの中心であった小学校がなくなることで、地域から元気な児童の姿が遠ざかってしまうと言う、寂しい事例も増えてきたようです。
さまざまな理由から別れゆく児童たちへ、せめてものプレゼントに、心に残るメッセージ、教師の言葉を贈りたいですね。どんなものにしていきましょうか。
【連載】マスターヨーダの喫茶室~楽しい教職サポートルーム~
目次
1 印象に残るスピーチとは !?
わたしはこれまで、学校行事の記録カメラマンになることが多く、卒業式の後、担任が卒業生の児童たちにラストメッセージを語る場面をたくさん見てきました。まさに役得です。非常に多くの学びがありました。心に残る担任のラストメッセージには、こんな共通点があったと思います。
①短いフレーズで決める
感極まっているからこそ、短い言葉にまとめます。
そして短いながらも、児童に後でその意味を咀嚼してもらえるような、意味のあるフレーズがいいですね。
②語りに緩急をつける
皆が知っているエピソードなどはサラッと!
しかし、強調したいところは、ゆっくり話します。
③公平さと潔さをもつ
一部の児童ではなく、全員に対して分け隔てなく、公平に接したいですね。
そして、学級全体として「この学級はこれで解散!」という潔い宣言をします。
この3つです。だらだらしていると児童の心には何も印象に残りません。思い出にひたっているのもいいですが、児童は次のステップを進もうとしているのですから、明るく力強く潔く送り出していきたいものです。 せんせいの目に涙のひとしずくでもあれば、言葉は何もいらないですが…。
2 心につきささる「パンチライン」(いちばん印象に残る部分)を考えよう
担任の心さえこもっていれば、メッセージはどんなものでもいいのです。しかし、卒業や別れのシーンに適した「響きやすい」言葉というものもあります。ここぞというときの殺し文句、決めぜりふ、いわゆる「パンチライン」ですね。自分の言葉を編んでいく際に、ぜひ参考にしてください。
【児童】
○自慢の子たち
○最高のクラス
○わたしにとってみなさんは宝物
【学級】
○助け合い支え合う学級
○この教室に通ってくれてありがとう
○この学校この学級で過ごしたことを誇りにしてくれると嬉しい
【日常】
○未来からの留学生とともに過ごした輝く日々
○全力で取り組んだ汗びっしょりの毎日
○うまくいかないときも多かったけど、それさえ光り輝いてみえるいい思い出
【生き方】
○人生でいちばん大切な「思いやりの心」をここで学んだはず
○笑顔を大切に
○自分を信じて
○学び続けるこころが大切
○感謝の気持ちをいつでももって
○前を向いて歩んでほしい
【若手教員として】
○キミたちのおかげでせんせいになれた
○本当はもう教師なんてやめようと思ったことがあったけど、みんなの笑顔が支えてくれた
○悪い子なんて一人もいない。みんな一生懸命成長しようともがいていた。振り返れば幸せな瞬間の連続だった
【感傷】
○「さよなら」ではなく「また会おう」
○今年の桜は新しい学校、新しいせんせい、新しい友だちと見るんだね。ちょっと寂しい
○小学校を振り返らないで! 新しい環境をみつめてほしい。でも、いつでも待っているよ
3 こんなことができれば一人前
こんな場面にも出会いました。
ある高校の、卒業前最後のホームルームを見ることが許されました。Sせんせいと言う、大変に人気のある教諭が担任でした。
Sせんせいは、まず、生徒一人ひとりに対して、短いながらも愛情と思い出にあふれる声をかけをされました。クラス中、涙あり、笑いありです。さすが、生徒全員をよく見ていらっしゃいます。
そして、最後にひと言。
「キミたちに、みんなに、最後に言いたいことがある。
『死ぬなよ!』
卒業おめでとう!」
さて、この4文字に込められたSせんせいの思い。その意味を、生徒たちはどのようにとらえたのでしょうか。
当時わたしは、彼ら生徒たちの父親くらいの年齢になっていました。個人的にも、家族や親しい人、友の死などを数多く経験していました。様々な記憶が頭をよぎります。せんせいは、どんな思いをこめて、この言葉を贈ったのだろう…。
●自死など絶対するな。何があっても、もらった生命を全うせよ!
●健康に注意せよ。親や教師より先に死ぬようなことがあってはならない!
●自分らしさを大事にせよ。自分を大事にできない人は、他の人も大事にできない!
●死ぬ気でやれば何でもできるが、死なない程度にがんばれ!
●失敗したとしても、生きてさえいればやり直せる。やりたいことを見付けて、チャレンジもできる。
●お金がなくても健康がいちばんだ!
●戦う前に逃げるな。立ち向かえ。自分の心を殺すな。
●生きてるだけで丸儲け(明石家さんまさんの名言)
などの解釈ができるのかな、と思いました。
いや、そうではなく、これら全てかも知れません。
置かれている状況や気持ちのありようは、クラス全員、みんな異なります。みんなが、それぞれにとって、最適の意味として解釈し、心に残してくれれば良いのでしょう。何と素晴らしいせんせいだろう。こんなことができれば一人前、いや一人前以上なんだろうな、と思いました。
分かりやすくするため、饒舌に一から十まで語るより、覚えやすく短い言葉で伝える方が、聞き手の心に刺さりますし、その意味を自分なりに考えることになるでしょう。
<参考資料> 児童の心に近いマンガの名言
あなたが伝えたいと思うこと。それにいちばん近いものを、児童にとって最も身近な、マンガやアニメのセリフから引用して伝えてみることもいいですね。せんせい自身の解釈やエピソードを少し付け加えてもいいでしょう。
「勝たなくてもいいさ ただ 負けるな」
(井上雄彦『リアル』第9巻・集英社より 高橋久信の父の名言)
「他人にやらされていた練習を 努力とは言わねえだろ」
(満田拓也『MAJOR』第31巻・小学館より 茂野吾朗の名言)
「あきらめたら そこで試合終了ですよ」
(井上雄彦『SLAM DUNK』第8巻・集英社より 安西線先生の名言)
「もし諦め(あきらめ)切れるんなら そんなもん夢じゃねえ」
(『宇宙兄弟』第2巻講談社より 南波日々人の名言)
「力をだすには自信がいる 自信をつけるには とことん練習することだ」
(山本鈴美香『エースをねらえ』第1巻・ホーム社より 宗方仁コーチの名言)
「勉強でも仕事でも楽しんでやったものが 一番自分の力になるものさ」
(赤松健『ラブひな』第7巻・講談社より 瀬田記康のことば)
「努力した者が全て報われるとは限らん しかし! 成功した者は 皆すべからく努力しておる」
(森川ジョージ『はじめの一歩』第42巻・講談社より 鴨川源二の名言)
「同じことをやるなら 若いうちだぞ たいていのことは あとで笑い話になる」
(あだち充『ラフ』第9巻・小学館 大和圭介の父親の名言)
「悩みってさ 生きてる人間の特権だよね」
(小畑友紀『僕等がいた』第一巻・小学館より 矢野元晴の名言)
「生きものはな どんなちっぽけなものでも 生をうけたからにはなにか 生きる役目をもっているはずじゃ」
(手塚治虫『火の鳥』第4巻鳳凰編より 良弁僧正の名言)
「迷った時はね 『どっちが正しいか』なんて 考えちゃダメよ (中略) 『どっちが楽しいか』で決めなさい」
(小山宙哉『宇宙兄弟』第5巻・講談社より 金子・シャロンの名言)
「生きているうちにはいい事があるよ いやな事があっても 明日を信じて 生きていかなくっちゃね」
(さくらももこRMC『ちびまる子ちゃん』第13巻集英社より まる子の名言)
「おれは助けてもらわねェと 生きていけねェ自信がある!!!」
(尾田栄一郎『ONE PIRCE』第10巻・集英社 ルフィーの名言)
「創造するってことは まず真似ることから 始まるんだ!」
(三田紀房『ドラゴン桜』第2巻・講談社より 桜木健二の名言)
「あの青年は人のしあわせを願い 人の不幸を悲しむことのできる人だ
それがいちばん人間にとって大事なことなんだからね」
(藤子・F・不二雄『ドラえもん』(てんとうむしコミックス25巻・小学館より しずかちゃんのパパの名言)
◆
大切な大切な教え子たちを、世の中という大海へ送り出するとき、どんな言葉をもたせてあげようか、もしかすると一生会うことがないかもしれない。そんなことを考えながら、せんせい自身が「パンチライン」を選んだり考えたりしてほしいです。その言葉が教え子たちの生きる軸になっていくのかもしれないですから…。
【参考図書】
『心にひびくマンガの名言 第一巻~第五巻』(学研教育出版)
イラスト/したらみ
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山田隆弘(ようだたかひろ)
1960年生まれ。姓は、珍しい読み方で「ようだ」と読みます。この呼び名は人名辞典などにもきちんと載っています。名前だけで目立ってしまいます。
公立小学校で37年間教職につき、管理職なども務め退職した後、再任用教職員として、教科指導、教育相談、初任者指導などにあたっています。
現職教員時代は、民間教育サークルでたくさんの人と出会い、さまざまな分野を学びました。
また、現職研修で大学院で教育経営学を学び、学級経営論や校内研究論などをまとめたり、教育月刊誌などで授業実践を発表したりしてきました。
『楽しく教員を続けていく』ということをライフワークにしています。
ここ数年ボランティアで、教員採用試験や管理職選考試験に挑む人たちを支援しています。興味のあるものが多岐にわたり、さまざまな資格にも挑戦しているところです。