「学級じまいは、次学年への期待を抱かせよう」保護者を味方にする学級経営術 #13
学級担任なら、一度は保護者対応に悩んだ経験があるのではないでしょうか。しかし、保護者が味方になってくれたら、こんなに心強いことはありません。この連載では、保護者が担任と学級を応援したくなるような学級経営について、その月の学校状況に合わせたアイデアを紹介します。第13回は、「学級じまい」に注意すべきポイントを解説します。
執筆/千葉県公立小学校校長・瀧澤真
目次
名残惜しくてもしっかり区切りをつける
先生方は、3月の別れのときに、子供たちからどんな言葉をかけてもらいたいですか。
○来年も先生に担任してほしい
○ずっと先生がいい
そんなふうに言ってもらいたいですか。もちろん、そんな言葉を聞いたら嬉しくなります。教師冥利につきますよね。でも、そういう欲を捨てることが大切ではないかと、私は思っています。
子供たちが、いつまでも前担任のことを引きずっていたら、次年度の担任は同じような気持ちになるでしょう。
○昨年はよかったなあ
なんて台詞を4月に聞いたら、そういう子から心が離れてしまう教師がいるかもしれません(教師だって人間ですからね)。また、その子にとっても、いつまでも過去にとらわれているのは不幸です。
もちろん、ほとんどの子はあっさりと次の担任に気持ちが切り替わります。でも、あまりにも自分色に染めすぎていたら、そうはいかないこともあるのです。
実際、超個性的な学級経営をしていた人の次の担任は非常にやりづらいものです。
ということで、子供たちがしっかりと気持ちに区切りをつけ、気持ちよく次の学年に進めるようにしていくのが、「学級じまい」のポイントになります。 そのためには、本当にもう終わりなのだと実感させ、次に向けてがんばろうという気持ちにさせるとよいでしょう。
ステップ1:このクラスでの1年間を振り返る
まずは、この1年間をしっかりと振り返りましょう。振り返ることで、いよいよ終わりなのだという気持ちが徐々に高まってきます。
そのために私がよくやったのは、「学級解散パーティー」です。
学年にもよりますが、実行委員を募り、企画運営を任せます。教師もアドバイザーとして参加します。内容は子供に任せていいのですが、よいアイデアが出なければ、教師から提案してもいいでしょう。
例えば、この学級での思い出を振り返ります。子供たちにアンケートをとり、思い出ベスト10を決めましょう。
そして、それぞれの思い出を解説するパワーポイントを作成します。とはいえ、そんなに凝ったものは不要です。例えば、遠足だったら、そのときの集合写真を貼り付ける程度でいいでしょう。
なお、単にアンケートをとっても、回答がなかなか集まらないこともあるので、教師が一覧を示し、そこから選んでもよいとすることもできます。今年度初めての授業参観・○○への遠足・惜しくも準優勝の運動会・初めて習った九九……のように、具体的に示すと選びやすいでしょう。
次に、各自ができるようになったことの発表をします。
第12回「最後の授業参観&懇談会アイデア」で示した発表と同じようなことでかまいません。この1年間の成長を発表し合い、互いの成長の喜びを分かち合いましょう。
それから、みんなで楽しむレクをします。
思い出ベスト10の準備などで時間がかかるので、このレクは簡単なものでかまいません。例えば、なんでもバスケットなどは、準備がほとんどいらず、それでいてどの学年でも楽しむことができるので、お勧めです。
このような会を行い、最後に担任から、どんなことにも終わりが来る、この1年ももうすぐ終わるのだと子供たちに語りましょう。
ステップ2:次学年への期待を抱かせる
過去を振り返り、子供たちがいよいよ終わりなのだと実感したら、次学年への期待が高まるような取組をすることも大切です。前を向かせ、気持ちを切り替える準備をさせるのです。
そこで、学級解散パーティー後は、「進級を喜び合う会」もやりましょう(時間がなければ、学級解散パーティーと一緒にやってもいいでしょう)。
まず、次年度の活動の紹介をします。
新しく始める勉強、その学年ならではの行事などを、パワーポイントを使って説明したり、現在1学年上の担任をしている先生に来てもらい、話を聞いたり、質問したりします。
次に、一人一人が次年度に取り組みたいことを発表します。
簡単な一言でいいのです。次の学年での目標を考えること自体が、新たな年度への期待となるのです。もちろん、教師も次年度への思いを語りましょう。
私はこんなことを伝えていました。
〇先生は、4月からは、新しいクラスで新しい子供たちとがんばります。みんなも新しい先生とよりよいクラスをつくってほしいと思います。
〇もちろん、君たちのことも大切に思っています。だから困ったときは、いつでも相談してください。でも、そういうことがないのが一番幸せなことです。便りがないのは、みんなが元気である何よりの証拠なのです。どうか充実した日々を過ごしてくださいね。
なお、普段は学級通信を出さないという先生も、できれば学級解散パーティーや進級を祝う会のことは、保護者にも知らせましょう。なぜ、このような会をするのかという先生の気持ちと、保護者に1年間の協力への感謝を伝えましょう。
保護者ともいろいろあった1年かもしれませんが、先生の気持ちを込めた通信を出すことで、この先生はがんばってくれたと、先生の味方になってくれるかもしれません。その保護者とは、もう二度と会わないかもしれません。今さら味方になってもらっても仕方がない。そんなふうに思うかもしれません。でもそうやって、出会ったことに感謝し、人とのつながりを大切にすることが、その次の信頼につながるのではないでしょうか。
瀧澤真(たきざわ・まこと)●千葉県公立小学校校長。1967年埼玉県生まれ。千葉県公立小学校教諭、教頭、袖ヶ浦市教育委員会学校教育課長などを経て現職。木更津技法研主宰。著書に『WHYでわかる!HOWでできる!国語の授業Q&A』(明治図書出版)、『道徳読み活用法』(さくら社)、『職員室がつらくなったら読む本。』(学陽書房)など、多数。
イラスト/イラストAC
【瀧澤真先生執筆 連載】
学級担任の時短術(全12回)
【瀧澤真先生ご著書】
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