教師自身のキャパシティを広げるには〈後編〉【伸びる教師 伸びない教師 第26回】
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今回は、「教師自身のキャパシティを広げるには」の後編です。ある教師が学級の子供たち相手に日々奮闘していくなかで、自分のキャパシティを広げていくという話です。豊富な経験で培った視点で捉えた、伸びる教師と伸びない教師の違いを具体的な場面を通してお届けする人気連載です。
※本記事は、第26回の後編です。
目次
周りの先輩教師に聞きまくる
以前勤めていた学校に20代の若い男性の教師が赴任し、6学年の担任を務めることになりました。
子供思いの教師でとてもやさしく、いつも子供たちのために一生懸命でした。
はじめは6年生の子供たちとうまくやっていましたが、いつの間にか子供たちが言うことを聞かなくなり、学級の荒れが見えはじめました。それからというもの、その教師は放課後になると、先輩の教師に教育技術から学級経営のこつまで、とにかくわからないことは聞き回っていた姿を思い出します。
「子供が話を聞いていないとき、どんなふうに注意をするのですか」
「先生の学級のルールを教えてください」
教えてもらったことは早速次の日から実践し、それでもわからないことは再度先輩の教師に質問をするということを繰り返していました。
また、自分の空き時間は必ず先輩の教師の授業を見に行き、授業を参観して学んだことをノートにびっしりと書いていました。次第にそのノートは2冊3冊と増えていきました。
学級の荒れが見え始めてから2か月くらい経った頃でしょうか。
少しずつ学級の雰囲気が変わってきて、子供たちの攻撃的な言動は少なくなり担任の話にも耳を傾けるようになりました。子供同士のトラブルは減ってきましたが、それでも卒業まで担任の苦労は絶えませんでした。
子供たちが教師のキャパシティを広げる
その教師は、6年生を卒業させた次の年、中学年の担任となりました。
子供たちが学級の中でのびのびと安心して生活しているのがはたから見ていてもわかるくらいよい学級をつくっていました。

私が「いい学級をつくっていますね」と、声をかけると、「卒業させた子供たちにいろいろと教えてもらいましたから」
と、ちょっと照れながら答えていました。
自分のキャパシティを超えた子供たちを担任した経験は、自分を大きく広げてくれるものです。なかなか言うことを聞かない子供たちは、私たち教師を大きくしてくれるのかもしれません。
私は若いとき、キャパシティの大きい先輩教師を見て「早くああなりたい」といつも思っていました。自分はまだまだだという思いを強くもっていたのだと思います。
しかし、今になってみると、はじめからキャパシティの大きい教師は少ないのだということに気付かされました。どの教師も、時には失敗、時には成功、そうした繰り返しの中で自分なりに学び、少しずつキャパシティを大きくしているのだとわかりました。
焦らず、目の前の子供たちに誠実に向き合っていくことがキャパシティを大きくする一番の方法かもしれません。
構成/浅原孝子 イラスト/いさやまようこ
※第16回以前は、『教育技術小五小六』に掲載されていました。
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