小1算数「たし算とひき算」指導アイデア
執筆/福岡県那珂川市立岩戸小学校教諭・小野祐揮
編集委員/国立教育政策研究所教育課程調査官・笠井健一、福岡教育大学教授・清水紀宏

目次
本時のねらいと評価規準(本時の位置 1/2)
本時のねらい
数量の関係に着目し、演算決定の根拠を図や言葉で説明する活動を通して、加法や減法を用いる問題場面の理解を深めることができる。
評価規準
問題場面の数量の関係を図で表現し、演算決定ができる。(知識・理解)
問題場面
①ひよこが11 わ、にわとりが3わいます。あわせて、なんわいますか。
②なわとびをしている人が、12 人います。一りんしゃをしている人が、5人います。
どちらが、なん人、おおいですか。
①と②の問題は、たし算とひき算、どちらの問題でしょうか。
①も②も、たし算かな。
①はたし算、②はひき算だと思う。
①の問題は、「11+3」と「11-3」のどちらだと思いますか。
(式を提示し、たし算かひき算かを挙手させる)
②の問題は、「12+5」と「12-5」のどちらだと思いますか。
(式を提示し、たし算かひき算かを挙手させる)
たし算なのかひき算なのか、どちらかな。
本時の学習のねらい
たし算なのかひき算なのか、ブロックや図を使って説明しよう。
見通し
・ブロックを使う。
・図を使う。
お話のどこを見て、たし算かひき算なのかと思いましたか。
①の問題は「あわせて」と書いてあるから、たし算。
②の問題は「どちらがなん人おおい」と書いてあるから、ひき算。
ほんとうに? たし算かひき算か、もっとわかりやすく説明できますか。
ブロックを使う。
図を描けばいい。
ブロックや図を使って、たし算かひき算かを説明しましょう。
自力解決の様子
A:つまずいている子
演算決定に、戸惑いがある。
B:素朴に解いている子
問題場面をブロックの操作や図で表現し、演算を正しく決定している。
C:ねらい通りに解いている子
問題場面の図を基にして、演算決定の根拠を言葉で説明することができる。
自力解決と学び合いのポイント
これまでの学習では、「たし算」の単元で加法の文章題を、「ひき算」の単元で減法の文章題を扱うため、演算がどちらか判断する機会は少ないと言えます。本時では、加法と減法の場面を同時に提示し、演算決定の根拠を考えさせます。演算決定の根拠としては、「あわせて」などの問題文中の言葉だけを根拠とするのではなく、問題の場面をブロック操作や図で表現することを通して、「だから『あわせて』はたし算」などと説明させます。
A の子供に対しては、「あわせる」と「ふえる」がたし算、「のこり」と「ちがい」がひき算で求められたことを想起させるとともに、①と②の場面をブロックの操作で表現させることを通して、どちらの演算なのかを考えさせましょう。
Bの子供に対しては、①、②の操作を表す図の表現を工夫させながら、とりわけ②が、減法であることを言葉で説明させましょう。
全体交流では、求めたい数を囲んだ図を完成させていくことを通して、①では、2つの数を合わせた全体の数を求めていること、②では、2つの数を1対1対応をしたときに、「残る部分」の数を求めていることを明確にし、加法や減法の理解を再確認しましょう。
ノート例
たし算の図とひき算の図を、比べてみましょう。問題の答えになるところは、それぞれ図のどんなところになっていますか。
たし算の図は、全部の数が答えになっています。
ひき算の図では、全部ではなくて、一部分が答えになっています。
全部の数を知りたいのか、一部分を知りたいのかがわかれば、たし算かひき算かがわかりますね。
本時のまとめ
全体を求めているのがたし算、一部分を求めるのがひき算。
評価問題
式が「16 -7」になる問題と図を、選びましょう。
(式が「16 +7」になる問題と図、「16 -7」になる問題と図をいくつか提示し、「16 -7」になる問題と図を選択させるとともに、その根拠を説明させる)
●期待する解答例
問題文の言葉と図を結び付けて、減法の場面を選択、判断することができる。
子供の感想例
図を描いたら、たしざんかひきざんか、よくわかった。
ワンポイントアドバイス
福岡教育大学教授・清水紀宏
「たすのかな ひくのかな」は、加法や減法の演算決定の理解を深めることを意図した授業です。第一学年で扱う加法や減法の問題は、第二学年で扱う逆思考の問題(例:問題文に「もらった」という言葉があっても、減法で立式する問題)ではないので、問題文のキーワードだけでも正しい演算決定ができるのですが、本時ではそれにとどまらず、具体物の操作や図による表現活動を通して、演算決定の根拠を考えさせているところがよいと思います。また、求差の意味の理解は求算より難しいので、その学び直しにもなっています。
新学習指導要領では、第一学年に「数量や図形を見いだし、進んで関わる活動」として、「身の回りの事象を観察したり、具体物を操作したりして、数量や形を見いだす活動」が位置付けられています。色板や数え棒による形の構成という活動は、第二学年の学習の素地となる経験を提供しますが、それとともに、子供が形に「親しむこと」もぜひ大切にしていただきたいです。
イラスト/佐藤雅枝、横井智美
『小一教育技術』2019年1月号より