生成AIは先生自身の仕事を楽にするという点でも必ず役立つ【実践のポイントを分かりやすく解説! 生成AI活用の授業づくり「まずはココから」#02】

特集
生成AI活用の授業づくり「まずはココから」

東京学芸大学教職大学院・教授

堀田龍也
【実践のポイントを分かりやすく解説! 生成AI活用の授業づくり「まずはココから」#02】
生成AIは先生自身の仕事を楽にするという点でも必ず役立つ

前回は、中央教育審議会初等中等教育分科会デジタル学習基盤特別委員会の委員長として生成AIの利用に関するガイドラインの策定にも携わった、東京学芸大学教職大学院の堀田龍也教授に、生成AIを活用する上での基本的な考え方について伺いました。今回は堀田教授に、生成AIパイロット校などにおける実践研究の状況や各学校における今後の実践に向けた考え方などについてインタビューを行っていきます。

堀田龍也教授

堀田龍也(ほりた・たつや)
博士(工学)(東京工業大学)。東京学芸大学教職大学院・教授、学長特別補佐。2024年3月まで東北大学大学院情報科学研究科・教授(人間社会情報科学専攻メディア情報学講座情報リテラシー論分野)。文部科学省初等中等教育局・視学委員。国立教育政策研究所・上席フェロー。信州大学・特任教授。

生成AIでスピーディーな保護者対応が可能になる

現在、生成AIのパイロット校では、授業でどのように活用するかということと、先生が校務を行うときにどのように活用するかということについての実践研究が進められており、それによって「なるほど、そう使えばよいのか」という好事例が出てきています。

例えば学校説明会や授業参観などを行ったときに、学校では保護者からアンケートを取ることがありますが、その数が十数名だったら直接読んでいってもよいでしょう。しかし100名、200名という単位で来校されて、感想や学校への要望などの多種多様な意見が出てきたときには同様には対処できません。そこで、Googleフォームのようなもので一覧のスプレッドシートにして、そのテキストをコピーして生成AIに入れると、「大別すると、以下の4つの意見に分けられます」というようにまとめてくれるわけです。それは細かく言えば、正確ではない部分もあるかもしれませんが、大体合っています。

そのように対応すれば、少なくともアンケートを取った当日中に先生方は、「今日出てきた感想を整理すると、大体こんな感じです」と共有することができるわけです。それは100%ではないかもしれないけれども、大まかに整理された意見が共有できます。

さらに、そうやって例えば4つに大別されたうちの4つ目のキーワードが気になるものであれば、その生成AIが出したキーワードは、元々のアンケートの中にあったものですから、集まったデータのどこにあったか検索をかけ、キーワードのある文章を個別に見て、必要に応じて対応すればよいわけです。そのように、だんだん問題を絞り込んでいって、大した問題でないことについてはざっと確認するにとどめ、本当の問題に時間をかけることができます。

これまでであれば、数百枚のアンケートを1枚ずつ先生が読んで整理していくのに、それこそ1か月くらいかかることもあったでしょう。しかしアンケートを書いた1か月後に、保護者に連絡を取ってみても、「何のことですか?」となるかもしれません。しかし翌日に連絡が来れば、「ああ、先生方は見てくれているんだな」と思われるでしょう。そのようなスピーディーな保護者対応が可能になるのです。

あるいは学校で講演会があったとか、劇団に劇をしてもらったというときに、子供たちが感想を書いた場合でも同様に、集まった感想を生成AIで分けると、「子供たちがおもしろいと思ったところは、大体この3点ですね」というように分かるわけです。その結果を踏まえてお礼を伝えれば、リアリティーがありますし、何よりフィードバックが早いほうがお礼としても効果的なわけです。

そのように、大人である先生は自分たちの仕事を便利にするために、あるいは関わってくれた人たちに感謝し、対応していくためにどんどん活用したらよいと思います。

生成AIがどのような仕組みで動いているのかということを子供に教える

これから子供たちに教えなければいけないことは、生成AIがどのような仕組みで動いているのかということです。これは社会インフラになっていく以上は絶対に必要です。

テクノロジーは余りにも便利だから、我々は日々無頓着に使っています。しかし、ときどきシステムに問題が生じて、電車や飛行機の予約ができないとか、銀行の振り込みや引き落としができないなどということが起こって、大騒ぎになることがあります。もちろん社会インフラである以上、堅牢である必要はありますが、仕組みを知っていれば、「このテクノロジーは、こういうことを我々のかわりにやってくれているんだな」「ここに問題が生じているんだな」と分かるし、慌てずに済むかもしれません。

少し余談になりますが、私は今後、小学校高学年くらいから中学校、高校くらいまで、情報に関する授業として、テクノロジーの仕組みや人間の活動の何を支えてくれているのかをちゃんと教えていくべきだと思っています。それが分かっていれば、トラブルが起きないような使い方をしたり、トラブルが生じたときにも対処法を考えられたりするわけです。日本は人口が減少していくので、テクノロジーに支えられなければ社会を維持しづらくなっていきます。介護一つをとっても、被介護人口がどんどん増えますから、朝になったことをセンサーが検知し、自動で体を起こしてくれるような介護ベッドや自動で開くカーテンも必要になるでしょう。それらもプログラムによって動いているわけで、テクノロジーの仕組みを知ることが必要なわけです。

学校の授業でも、これまではなかなか直接会うことができなかった人の話も、テクノロジーによって遠隔のまま質問し、話を聞くことができるようになってきています。そのように、我々の生活はテクノロジーに支えられて便利になっていますし、テクノロジーを上手に使えば、これまでできなかったことも容易にできるようになるわけです。それはすばらしいことですが、同時に必ずリスクもあるわけですから、仕組みとリスクをちゃんと教育内容として教えるべきだと思います。さらに、それを教えるのが誰かと考えると、それは先生でしょう。だからこそ、先生は早い段階から生成AIのようなものも使いながら、仕組みやリスクを体験的に学んでおくべきだと思うのです。

当然、子供自身も体験していないことや勉強していないことは、なぜそうなっているか分かりません。そうすると、無邪気に頼ってしまうし、本当に何が便利になっているか考えずに使ってしまうため、学習しなくなってしまうのです。ですから、学校で少し面倒くさいことも子供たちにさせ、体験させていくことも意味がある大切なことだと思います。

例えば遠足で大仏を見て、「この大仏って何?」となったとき、その場で調べられるかどうかは重要です。全員とは言わなくても、班に1台くらいのタブレットを持っていっておいて、その場で調べられることが大切です。一方であらかじめ遠足のコースが分かっているならば、事前に何がありそうかを調べておけば、「15メートルの大仏があるらしい」と分かった上で見るので、「ああ、これが15メートルなのか」とリアリティーが増すわけです。そのように知識が体験を補完するし、体験したときに知識が入りやすくなります。

テクノロジーは体験を膨らませるためにあるし、体験を確認するためにあるし、人は体験で学習をしていくことを考えると、その体験を支えてくれているテクノロジーの仕組みを知っておくことはとても大切だと思います。

前回にも説明した通り、現時点の生成AIは子供たちに直接触らせられるほど精度が上がってはいませんが、もう少し経てば社会インフラになります。そうしたら、「これ、生成AIだったら何と説明するかな?」「君たちより分かりやすい文章で説明するかな?」と投げかけ、人間のパフォーマンスと比べて体験させ、考えさせて、「なぜそこまでできるのか?」「なぜそこまでしかできないのか?」それを規定するテクノロジーについて学ぶような授業が「情報」の授業として行われるようになるとよいだろうと思います。

生成AIを「この週末にまず使ってみるか」というくらいに自分ごととして捉える

今後、各学校で活用されることを考えてお話しすると、まず大人である先生はどんどん使うべきですし、それによって仕事を軽減していくことが必要です。ただ残念ながら生成AIが不確かなものであるということで、学校のコンピュータからアクセスできないようにしている自治体もあります。もちろん、子供が自由にアクセスできるのはどうかと思いますが、先生用は特に問題ないと思います。しかし、自治体によっては禁止している例もあり、個人用のパソコンや個人用アカウントで使っている先生もいるかもしれません。

もちろん、みんな使える環境があるのに、忙しさのあまり新しいものを使う余裕がなかったり、新しいものを使うのがおっくうだったりして使っていない場合もあるでしょう。しかし、使っている人は楽になっているのに、使わずに旧態依然と仕事を抱えているのはもったいないものです。おそらく今後は、「どんどん使いましょう」ということになっていくと思いますし、何より「働き方改革」が叫ばれて久しいわけですから、便利なものはうまく使っていけばよいと思います。そのためには良いケース、グッドプラクティスを提示する必要があり、生成AIパイロット校ががんばってくれているわけです。

そうした状況も踏まえながら、生成AIのガイドラインも先生に対して「もっと上手に使いましょう」という形でバージョンアップすることになると思います。

そうは言っても、前回お話しした通り、個人情報の問題、加えて著作権の問題などもしっかり気を付けることが必要です(資料参照)。個人情報同様、著作物も安易に入力すると生成AIがそれも学習してしまうため、気を付けなければなりません。特に学校教育の現場は、公共性に鑑みて一定の範囲で自由に活用できる特別な状態になっているため、著作権についてやや無神経になりがちです。そのため著作権についてより意識し、気を付けることが必要です。とはいえ、大きな流れで言えば、「大人はどんどん使いましょう」「それによってどんどん便利に働きやすくしていきましょう」という方向に国は動いていくと思います。

【資料】「初等中等教育段階における生成AIの利用に関する暫定的なガイドライン」より抜粋

資料 著作権保護の観点

子供に対しては、そのうちに子供向け生成AIが出ると思います。一部のところでは始まっているのですが、フィルタリングがかかっていて、子供にとって適切でない言葉はすべて弾いてくれるとか、子供が変なことを聞いたらアラートを出すというような子供向け生成AIの開発はすでに始まっていますし、そういったものが導入されることになると思います。

ですから、子供の活用に関しては慌てることなく、まず先生自身が体験しながら、生成AIの精度や利便性を体験し、学びながら、子供向けの開発がなされるのを待つくらいの気持ちでいればよいと思います。ただし、その開発は10年というような遠い先の話ではなく、もしかしたら1年後には実現するくらいのものすごいスピードで進んでいます。ですから、「まあ、2学期には使ってみるか」とのんびり構えるのではなく、「この週末にまず使ってみるか」というくらいに、自分ごととして捉えていただきたいと思います。それは先生自身の仕事を楽にするという点でも、将来、子供たちに教えるという点でも、必ず役立つものなのですから。

次回からは、2023年度、文部科学省のリーディングDX推進校及びAIパイロット指定校として、生成AIの利用に関する実践研究を進めてきた、茨城県つくば市立みどりの学園義務教育学校における実践の状況などを紹介していきます。

取材・文/矢ノ浦勝之

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