高学年女子の「トリセツ」
高学年になると、子供たちの体は第2次性徴が始まり、それに伴ってさまざまな心理的変化が訪れます。いわゆる「思春期」です。この時期、特に女子同士のトラブルは、親も先生も、「扱い方が難しい」「どこまで相手をすればよいのかわからない」「面倒くさいから放っておこう」などと思ってしまいがちですが、それが失敗のもと! そんな高学年女子の気持ちを理解するために「トリセツ」を用意しました。
執筆/広島県公立小学校校長・寺戸典子
目次
1.心理は複雑です
精神分析家のエリクソンは、青年期(いわゆる思春期)の心理社会的な発達課題を「アイデンティティ(自我同一性)の獲得」としました。「アイデンティティ」とは、「自分とは何か」「どう生きていくか」についての答えです。
つまり、この時期は自意識が高まり、周りからどう見られているかが気になり、その結果、優越感、自己嫌悪感、劣等感を抱いて精神的に不安定になることがあるのです。友達といることで、その不安が解消される気がして、いつも誰かといたくなります。
一見、扱いにくいようですが、心理的な発達の中では当然の姿と理解し、困らずに見守っていきましょう。
2. こんなとき、どうする?
急にその子との距離を感じたとき
大人に近づく女子は、担任には、一人前の大人として扱ってほしいと思い始めます。特に男性の担任からいきなり友達感覚で話しかけられると、自分が大切にされていないように捉えたり、友達の手前、特別扱いされているようでよそよそしくせざるをえなかったり、「嫌悪感」を持ったりと、心の中は不安定でモヤモヤしているのです。そんなときは、名字を呼ぶ、呼び捨てにしない、丁寧な言葉遣いをするなど、大人の接し方をすると、子供のほうから距離を縮めてくることが多いです。
何を考えているのかわからないとき
担任が話を聞いてもわからないときには決していい加減な対応で終わらせるのではなく、先輩の先生や、子供たちが話しやすいという女性の先生に協力を求めましょう。
そのときは必ず、自分も一緒に話を聞いた方がよいか、席をはずしたほうがよいかを確かめましょう。
担任に話してきたのなら、「聞いてほしい」という気持ちがあるということです。話しているうちに、自分で考えが整理できたり、心がすっきりしたりして、自然に解決するということもあります。
子供は必ずしも、答えや解決方法を求めるために話しているわけではないことも考えておくとよいでしょう。
親に言わないと約束したけれど……
「親には言わないから」と言う担任を信頼して子供が話したことでも、聞いてみると保護者に連絡しないといけない内容のときもあります。
保護者がわが子の問題を知らないというのはよくないことです。しかし、子供と約束したのにもかかわらず、担任が勝手に保護者に知らせてしまうと、子供との信頼関係は一瞬にして崩れてしまいます。
事案の大きさにもよりますが、保護者に伝えるべき内容の場合には、必ず本人にそのことを話し、本人が納得した上で保護者へ連絡をしましょう。
家に帰って、本人が自分から話せるような状況か、また、安全が守れているかを確認の上、家庭に連絡をしましょう。
注意して! こんなとき
教員経験年数にかかわらず、失敗し、間違えることもありますが、それでも繰り返して子供とかかわると、うまくいくこともたくさんあります。ただ、まれに次のような病気が隠れていることがありますので、注意しましょう。
子供の心身症
〈摂食障害〉
食べられなくなる、家族と食事をしない、極端に体重が減るなど。
〈起立性調節障害〉
立ちくらみやめまい、朝なかなか起きられない、腹痛や頭痛など。
子供の精神疾患
〈統合失調症〉
何となく怖い感じがする悪口を言われている気がするなどの不安が一定期間継続する。
〈パニック障害〉
息苦しさ、めまい、震えなどと激しい恐怖感が合わさり、パニック発作を起こすことから始まるのが特徴。
〈新型コロナうつ〉
新型コロナウイルスに感染する不安や、自粛生活へのストレスなどから起こるうつ症状。
イラスト/北澤良枝
『教育技術 小五小六』2021年12/1月号より