性教育の授業は教材探しから始めよう

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学校教育における性教育は、生命尊重や人間尊重、男女平等の精神に基づく「人格の完成と豊かな人間形成」をめざす、 教育課程の中に位置づけられた教育活動です。そのため、道徳や特別活動、総合的な学習の時間などの教科等との連携を図りながら、学級担任も積極的に取り組むべきものです。しかし実際は、指導の方法が分からないという声も多く、十分な指導が行われているとは言えません。性教育の教材が少ないことも、授業の困難さにつながっているようです。日本性教育協会が執筆編集した「すぐ授業に使える性教育実践資料集 中学校改訂版」の執筆者グループの一人、堀内比佐子さんに、中学校の性教育についてアドバイスをいただきました。

堀内比佐子さん
全国性教育研究団体連絡協議会事務局長・堀内比佐子さん

性教育とは「人とどう関わるのか」を考えること

―本書『すぐ授業に使える性教育実践資料集』では、中学校における性教育の資料や指導方法を紹介していますが、性教育の現代的な課題はどのようなところにありますか?

堀内 最近は、学校でも性教育の大きな課題として、LGBTやSNSなどのネットの問題を取り上げることも多くなってきました。しかし、それらの問題の背景や、根本的な課題から教育しなければ、本来の性教育とは言えないのです。

これまでの性教育では、異性とどう関わるかということが非常に大事なポイントでした。しかし今日では男と女の二つの性だけではないという視点で捉えるようになり、結局は「人とどう関わるのか」ということが重要になっています。実はこれが、これからの時代にとても大切なことであり、社会生活を過ごすための基
盤にもなるでしょう。

ー学校における性教育の教材・資料等は十分でないとお考えですか?

堀内 残念ながら十分ではないと思っています。その原因は、性教育という教科がないからです。他の教科のように、学習指導要領がないので、指導のねらいや内容が明確に記されているわけではないため、捉え方やねらい、指導法が様々になっています。

人としての生き方を学ばせる性教育を!

堀内 現在、性教育の学習として一番基盤になるのは、保健体育の「生殖に関わる機能の成熟」でしょう。ここで自分の体が子供から大人になる過程を学ぶのですが、生物学的な体の変化を学ぶだけが性教育ではありません。そうした知識に加え、自分の性をどう自認しながらアイデンティティを育てていくか、そして自分は人とどう関わり生きていくのか、といったより幅広い捉え方が必要です。しかし、こうした授業実績が積み上げられてはいません。

指導にあたっては、様々な教科と関連付けて指導していく必要があります。例えば、社会科の公民では憲法を学び、婚姻や人権、メディアリテラシーの問題も取り上げますが、それらはすべて性教育と関係しています。道徳には「生命尊重」というテーマがありますが、命の大事さに加え、新たな生命の誕生に対する学びもできるでしょう。特別活動においては、学習指導要領に記された「自他の個性の理解と尊重」や「より良い人間関係の形成」のため、男女相互の理解と協力について、さらに思春期の不安などを学ぶことができるでしょう。

―今後学校として性教育をどう実施するとよいのでしょうか?

堀内 現実問題として、性教育はもう待ったなしの状況です。大事なことは、先生方が子供たちの現実を見て、性に関する部分も含めて人としての生き方を学ばせていかなければいけないということを、しっかり認識することです。とはいえ、学校の体制が整っていない中、実践経験が少ない先生が指導をしなければならない場合もあるでしょう。本書の指導案やワークシートは、実践例を基にした使いやすいものとなっているので、各校の実態に応じて活用していただければうれしいですね。

堀内比佐子さん

堀内比佐子(ほりうち・ひさこ) 全国性教育研究団体連絡協議会事務局長。 元東京都公立中学校女性校長会会長。

性教育実践資料集

堀内比佐子先生が共同執筆した本
『すぐ授業に使える性教育実践資料集 中学校改訂版』
日本性教育協会・編 小学館

取材・文/大和信治(Edupedia)写真/編集部

※この関連記事は、先生のための教育事典『EDUPEDIA』でも配信します。あわせてお読みください。

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