リレー連載「一枚画像道徳」のススメ #14 デザインの定義|藤倉稔先生(北海道公立中学校)

連載
リレー連載 明日の授業に生きる!「一枚画像道徳」のススメ

北海道公立小学校教諭

藤原友和

子供たちに1枚の画像を提示することから始まる15分程度の道徳授業をつくり、そのユニットをカリキュラム・マネジメントのハブとして機能させ、教科横断的な学びを促す……。そうした「一枚画像道徳」実践について、具体的な展開例を示しつつ提案する毎週公開のリレー連載。第14回は藤倉 稔先生のご執筆でお届けします。

執筆/北海道下川町立下川中学校教諭・藤倉稔
編集委員/北海道函館市立万年橋小学校教諭・藤原友和

アイスキャンドル日本発祥の地、北海道下川町で公立中学校教員をしております藤倉稔です。
下川町は北海道の北部に位置し、札幌からは自家用車で4時間程度かかります。
SDGsをはじめとする持続可能なまちづくりへの取組が注目を集め、「北海道であなたが住みやすいと思う街ランキング(ねとらぼ調査隊、2022年3月1日から3月16日)では、第1位となり、移住者が年々増えています。

私の専門教科は数学科なのですが、今年度は免許外教科担任制度で美術も教えています。そのため、美術科教諭の友人と話をしたり、書籍を読んだり、アート作品を見る機会が増えました。美術教育について学んだことで、外の世界はこれまで以上に色彩豊かに見えるようになりました。
子供たちにも同じような変化が起きてくれたらいいな、という願いを込めて「一枚画像道徳」を考えました。

1 「一枚画像道徳」の実践例

対象:中学3年生
主題名:デザインとは
内容項目:A−5 真理の探究、創造

先日、3年ぶりに北海道旭川市で開催された陶芸フェスティバルに行きました。
今回の目的は、鳥が描かれた食器を購入することでした。会場をあちこち歩いていると、「陶房呑器」という作家さんのお店で、とてもかわいい食器を見つけました。今回紹介する授業では、そのときに撮った以下の写真を提示します。

(2022年9月、旭川陶芸フェスティバルで筆者撮影)

発問1 写真を見て、思ったこと、気付いたこと、考えたことはありませんか。

かわいい。
あの鳥は、シマエナガと文鳥かな。
陶器。
茶碗の裏面に絵が描かれている。

説明

通常、「デザインをする」という言葉は「かっこよくする、かわいくするなど、見た目を美しくするために、どのような色や形、バランスにするかなどを考えること」という意味に捉えられることが多いかと思います。
ですが、この写真にある食器について陶房呑器の作家さんがおっしゃった言葉を聞いて、その作家さんが「デザイン」という言葉を少し違った意味で使っていることに気付きました。

発問2 陶房呑器の作家さんは茶碗の裏側の絵について、次のようにおっしゃっていました。作家さんの立場になって●●と××に入る言葉を考えてください。

私「(一緒に買い物にきた家族に向かって)お茶碗の裏側にもかわいい鳥が描かれているよ。」
家族「あー、本当だ。」 
作家さん「あのね、茶碗の裏側にも絵を描いているのは、●●へのご褒美なのよ。だって、××でしょ。」

しばらく考える時間を与え、周りの人と交流させます。
そして、正解を発表します。
陶房呑器の作家さんは「裏側の絵は、食器を洗ってくれた人へのご褒美なのよ。茶碗を洗って水切りラックに置くと、可愛い鳥さんのお顔が見えるでしょ。」とおっしゃっていました。それを聞いたとき、心が温かくなり、この商品を購入することを決めました。

さらに、陶房呑器の作家さんと同じような考え方をしているデザイナーを二人紹介します。

①ETV「デザインあ」の総合指導を担当し、「明治おいしい牛乳」「キシリトールガム」などのパッケージをデザインした佐藤卓さんは「デザイン= “気づかうこと” に他なりません」と述べています*1

②明治のチョコレート「THE Chocolate」のパッケージをデザインした石川俊祐さんは「デザインとは、人に向き合う “やさしさ” である」と述べています*2

最後に、西村佳哲さんの『自分の仕事をつくる』*3を参考にして、次のように語ります。

「陶房呑器の作家さんのように、丁寧に時間と心がかけられた仕事は『素材の旨味を引き出そうと、手間を惜しまずつくられる料理』『表には見えない細部にまで手の入った工芸品』『一流のスポーツ選手のプレー』に似ています。
『このくらいでいいだろう』という力の出し惜しみを感じることはありません。
このような仕事に触れるとき、私たちは嬉しい気持ちになるものです。なぜ嬉しいのでしょうか。
きっと、『あなたは大切な存在で、生きている価値がある』というメッセージを受け取れるからだ、と私は考えます。
また一方で、例えば安売りの家具屋の店頭に並ぶ、カラーボックスのような本棚──化粧板の仕上げは側面まで、裏面はベニヤ貼りの商品からは、「裏は見えないからいいでしょ? だから、こんなもんでいいでしょ?」という、人々を軽く扱ったメッセージが伝わってくるように感じます。」

このようにまとめ、教科書(光村図書)に掲載されている陶芸家で人間国宝の前田昭博さん(故郷の真っ白な雪景色を表現するために、14年の歳月をかけて白磁の作品をつくった作家)の挑戦は、単に美を追求したものではなく、その仕事が誰かの幸せにつながっているのだ、ということを感じてもらいます。
そうすることによって、子供たちにとって遠い存在に感じられる芸術家の追究を、少しだけ身近に感じられる、と考えました。

2 他教科等とのつながり

中学校美術科では、日本及び世界の文化遺産としての絵画や彫刻を鑑賞します。
鑑賞する際、子供たちは作品の色彩や構成などその「美しさ」には注目しますが、「生活をより豊かにする」「自分たちの生活に生かす」といったデザインの重要な機能に対する視点は、なかなか持ちにくい傾向があるように思います。
美術の授業は中1では年間45時間、中2・3では年間35時間しかありませんので、この「一枚画像道徳」の授業をきっかけとして、日常の風景を見る目や考え方が変わり、子供たちの生活の中に豊かな時間が増えていくなら、教師としてこの上ない幸せではないでしょうか。
また、学校祭において、教室展示や演劇などのステージ発表を見てくれる保護者や地域の方々に幸せな気持ちになってもらうため、丁寧に時間と手間をかけて準備する態度につながることも期待できるのではないでしょうか。

おわりに

今回、自分の身の周りにある出来事から「一枚画像道徳」の授業をつくりました。
1単位時間の授業づくりの場合、身の周りから道徳の種を見つけることは困難かもしれませんが、コンパクトな「一枚画像道徳」の授業であれば、自分にもできること、自分にしかできないことを見つけられるかもしれません。

今後もこの連載で紹介される「一枚画像道徳」の授業を参考にして、自分の見つけた道徳の種を1単位時間の授業に育てていける技術、1単位時間の授業に見合う道徳の種を見つける眼を、少しずつでも身に付けられるとといいな、と思いました。

<参考文献>
*1 佐藤卓、2017年、『塑する思考』(新潮社)
*2 designing2021年5月12日「デザインは事業の道具ではなく、“やさしさ”のまなざし──KESIKI石川俊祐」
*3 西村佳哲、2009年、『自分の仕事をつくる』(ちくま文庫)

今後の連載予定
第15回 佐々木嘉彦(山形県酒田市立松原小学校教諭)
第16回 三浦将大(北海道函館市立大森浜小学校教諭)
第17回 倉内貞之(青森県五所川原市立栄小学校教諭)
第18回 古舘良純(岩手県花巻市立若葉小学校教諭)
第19回 有田雪花(神奈川県海老名市立中新田小学校教諭)
第20回 木村麻美(弘前大学教育学部附属小学校教諭)
第21回以降も豪華執筆陣が続々と執筆中です。

リレー連載「一枚画像道徳」のススメ ほかの回もチェック⇒
第1回 日本最古の観覧車
第2回 モノに宿る家族の「幸せ」
第3回 それっていいの?
第4回 このトイレ使ってみたい?
第5回 「命の重さ」は
第6回 「快」のコミュニケーションができる子供たちに
第7回 未来と今をつなぐ橋を架ける一枚画~『もの』『こと』『ひと』をみる目を深める~
第8回 「一枚画像道徳」を読み解く
第9回 地域の魅力、知ってる?
第10回 あえて「分かりにくい」写真で
第11回 なにが見える?
第12回 地域の課題の受けとめ方
第13回 函館港まつりに込められた想い

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