リレー連載「一枚画像道徳」のススメ #4 このトイレ使ってみたい?|戸来友美先生(北海道公立小学校)

子供たちに1枚の画像を提示することから始まる15分程度の道徳授業をつくり、そのユニットをカリキュラム・マネジメントのハブとして機能させ、教科横断的な学びを促していく……。そうした「一枚画像道徳」実践について、具体的な展開例を示しつつ提案する毎週公開のリレー連載。第4回は戸来友美先生のご執筆でお届けします。
執筆/北海道千歳市立桜木小学校教諭・戸来友美
編集委員/北海道函館市立万年橋小学校教諭・藤原友和
目次
1 ごあいさつ
みなさん、こんにちは。
北海道・千歳市で小学校の教員をしております、戸来友美と申します。
平成が令和に変わる瞬間、私は長年憧れていたフィンランドで迎えました。
長いゴールデンウィークを利用して、フィンランドの教育関連施設をめぐるツアーに参加したからです。
民間のツアーに参加したので、自腹社会見学です。
そのツアーでは沢山の写真を撮ってきました。私のiPhoneには、今でもたくさん写真が入っています。
見学後の夜には、ツアーに参加しているさまざまな職業や年齢の方と写真を見ながら振り返りをしました。
美味しいものを食べながら、交流すると新たな気付きをもらえました。
ツアーの中で、ヘルシンキ中央図書館「Oodi」で撮った写真があります。
その写真で「一枚写真道徳」をつくりました。
2 授業 〜このトイレ使ってみたい?〜
対象:小学6年
主題名:自分と異なる意見に耳を傾け尊重する
内容項目:C-11 相互理解、寛容
公衆トイレのイメージを聞きました。子供たちにとっての公衆トイレは、公園にあるトイレをイメージするようです。プラスのイメージはありませんでした。
●きたない。
●あまり使いたくない。
そして、どんな公衆トイレなら使いたいかを聞くと、清潔であることを求めていました。
●きれい。
●汚れていない。
そこで、以下の写真を提示します。
『これは、フィンランドという国の公衆トイレの写真です。以前に旅行に行ったときに撮ってきました。』
写真を見せると、口々に感想や質問の声が上がりました。
私は、子供たちの質問に答えました。

説明
「手を洗うところの色がきれい。」
「手が洗うところが真ん中なの?」
『そう、真ん中にきれいな色の手を洗うところがありましたよ。』
「電気おしゃれ。」
「なんで、一つだけ灯りがあるの?」
『おしゃれですよね。灯りが点いているところが人が入っている場所なのです。ドアが、すりガラスになっていて、人が入って鍵を閉めたら、個室の電気が点いて、外側から見るとこんなふうに見えます。でも、誰が入っているとか、人影はわからないので、安心してくださいね。』
「男用? 女用?」
『男女両方ともが使っていいトイレです。』
「このトイレしかないの??」
『その質問にはもうちょっと後に答えますね。』
質問にまとめて答えるたびに、「へぇ。」「そうなんだ。」という反応が見られましたが、公衆トイレが男女兼用であることを伝えると、「ええ!」というどよめきが起こりました。
発問1 このトイレを使ってみたいですか?
ほとんどの子が使ってみたくないと答えていました。
『このクラスでは、あんまり使いたいと思われないこのトイレが、ヘルシンキの中央図書館にある理由をみんなで考えてみよう。長所と短所をまとめる方法で考えよう。』
<長所>
●きれい。
●おしゃれ。
●明るい。
●どこを使っているかわかりやすい。
●家族で一緒にトイレに行ける。
●男子も個室なのがいい。
<短所>
●変な人がいたらいやだ。
●トイレが男子と女子に分かれていないとなんかいやだ。
●あまり想像できない。
●男子(女子)が使った後にトイレに入ったり、入られたりするのはいやだ。
『最初に、公衆トイレはきれいな方がいいと言ったけど、みんなが使うためには、きれいだけではなく、他にも必要なことがあるようですね。』
発問2 みんなが使えるために大事なことはどんなことですか?
『黒板に書いてある長所・短所のまとめをもう一度見てください。そして、自分を含めたみんなが使えるために大事なことは何かを考えましょう。そう考えた理由も書きましょう。』
それぞれに自分の考えを書いたものを交流させます。
交流の時の視点として、意見と理由を自分と比べながら聞くようにします。
「同じ意見でも理由が違うことがあるかもしれない、自分が全く気付かないことに出会えるかもしれない。自分の考えを深めたり広めたりできるから交流が大切なのです」と伝えます。
2 どこにどのようにつなげるか
この授業は学活で行う性教育で取り上げるLGBTQの理解につなげたいと考えています。
日本のお店のトイレで見かけたピクトグラムを示します。

この写真からLGBTQを知り、最初に見たフィンランドのトイレは、LGBTQの人には使いやすいトイレなのかもしれない。でも本当にそうなのだろうか? と考えを揺さぶりながら視野を広げられたらいいなと思っています。