小学校理科の「主体的に学習に取り組む態度」とは? 【進め!理科道〜よい理科指導のために〜】#8
「進め!理科ロード」では、小学校理科に関する基本的な考え方について、発信していきます。前回から具体的な方法や考え方についてもUPしはじめました。しばらくは、「評価」について連載していきます。
普段、理科だけでなく教育一般に関する講演も行っているのですが、なかでも「主体性」についての依頼が多いです。これは、小学校に限らず、大学を含めどの学校種でも課題になっているのです。以前、「主体的、対話的で深い学び」というキーワードがはやりました。子どもたちを主体的にするには?と、先生方の関心が高まったわけです。
また、「育成すべき資質・能力」の3つの柱が据えられたことで、評価においてもこれまでの「関心・意欲・態度」から「主体的に学習に取り組む態度」に変わりました。
理科では、「資質・能力」に合わせて「知識・技能」「思考・判断・表現」「主体的に学習に取り組む態度」の3つの観点で評価がなされます。今回は、前回の「知識・技能」に引き続き「主体的に学習に取り組む態度」について、確認していきましょう。
(※前回の記事はこちら)
執筆/國學院大學人間開発学部教授・寺本貴啓
1.「主体的に学習に取り組む態度」は「関心・意欲・態度」とはちがう!
数年前(以前の学習指導要領)までは、いわゆる意欲的な評価の観点は「関心・意欲・態度」でした。しかし、現在では「主体的に学習に取り組む態度」という言葉に変わっていますね。
言葉が変わるということは、その意味も変わるということです。「主体的に学習に取り組む態度」と「関心・意欲・態度」の違いは何でしょうか?
以前の「関心・意欲・態度」は、どういう時に評価することが多かったかを考えるとわかりやすいと思います。これまでは、授業の最初の方である「導入場面」で評価することが多かったように思います。授業の導入場面では、「もの」や「現象」を見せながら演示したり、子どもたち自身が「もの」や「現象」を直接体験したりして、自然の事物現象に興味・関心をもたせます。
つまり、子どもたちの「おもしろい」や「やってみたい」「調べてみたい」という気持ちを引きだす場面になります。この子どもたちの姿をみて、「この子は興味・関心があるな」と評価してきたということです。
では、「主体的に学習に取り組む態度」に言葉が変わりましたが、「主体性があるかどうか」を測りたいときに、授業の導入場面だけで評価できるでしょうか?
ここに、「主体的に学習に取り組む態度」と「関心・意欲・態度」の違いがあると考えられますね。「関心・意欲・態度」は授業の一場面でもその姿が見られればよかったのですが、「主体性」となると、授業の一場面だけでは不十分であるということがわかります。
理科でいう「主体性」は、「問題解決の過程全体を通して意欲のある姿が継続している(複数の場面で意欲的な姿が見られる)」ことが前提となります。
2.小学校理科の「主体的に学習に取り組む態度」の評価とは?
小学校理科の学習指導要領解説理科編(平成29年度版)には、主体的に問題解決しようとする態度について、以下のように書かれています(下線は筆者)。
主体的に問題解決しようとする態度とは、一連の問題解決の活動を、児童自らが行おうとすることによって表出された姿である。
児童は、自然の事物・現象に進んで関わり、問題を見いだし、見通しをもって追究していく。追究の過程では、自分の学習活動を振り返り、意味付けをしたり、身に付けた資質・能力を自覚したりするとともに、再度自然の事物・現象や日常生活を見直し、学習内容を深く理解したり、新しい問題を見いだしたりする。このような姿には、意欲的に自然の事物・現象に関わろうとする態度、粘り強く問題解決しようとする態度、他者と関わりながら問題解決しようとする態度、学んだことを自然の事物・現象や日常生活に当てはめてみようとする態度などが表れている。小学校理科では、このような態度の育成を目指していくことが大切である。
このように小学校理科では、一連の問題解決の活動において、子どもたちが自分自身で判断し行動して解決しようとする姿を指していることがわかります。
それでは、問題解決の各場面においてどのような姿が見られれば、「意欲的である」といえるのか見てみましょう。
3.小学校理科の「知識・技能」の評価とは?
「知識・技能」とあるように、評価の中身としては、「知識が身についているか」「技能が身についているか」という2つに分けられます。
ここで示したものは、あくまでも例です。また、すべての姿が見られないとだめなのかというとそうではなく、何十人もいる学級で一人一人の評価をすると考えると、現実問題としてすべての姿を見取ることは物理的に厳しいと思います。様々な場面で3つ程度の姿が見られれば「主体的に問題解決に取り組んでいる」といってよいと考えられます。
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<著者プロフィール>
寺本貴啓●てらもと・たかひろ 國學院大學人間開発学部 教授 博士(教育学)。小学校、中学校教諭を経て、広島大学大学院で学び現職。小学校理科の全国学力・学習状況調査問題作成・分析委員、学習指導要領実施状況調査問題作成委員、教科書の編集委員、NHK理科番組委員などを経験し、小学校理科の教師の指導法と子どもの学習理解、学習評価、ICT端末を活用した指導など、授業者に寄与できるような研究を中心に進めている。