教員免許更新制の廃止【わかる!教育ニュース#8】
先生だったら知っておきたい、さまざまな教育ニュースについて解説します。連載第8回のテーマは「教員免許更新制の廃止」です。
目次
廃止に「賛成」は、現役教員で96.0%
7月に廃止される教員免許更新制は、多忙な学校の負担を増し、教員のなり手不足を招いたとも言われ、現場に不評でした。世の人々も廃止に賛成かと思いきや、民間調査「日本トレンドリサーチ」によると、教員免許がある人とない人で考えに差があるようです。
調査は2022年5月、インターネットを通じて全国600人の回答を集めました(参照データ)。現役教員、教員免許はあるが現役ではない人、教員免許を持っていない人で回答を分析すると、廃止に「賛成」は、現役教員で96.0%に上りますが、現役でない免許保有者は65.3%に低下。免許のない人だと42.5%まで減り、「反対」が57.6%と逆転します。
この意識差は、回答理由の自由記述にくっきり出ています。
免許保有者の「賛成」の声には「講習を受けるために授業を休むなど、子どもを犠牲にしている」「大した内容でない研修を押しつけられ、負担ばかり大きい」「いちいち更新しなければいけないのは手間」といった、時間やお金に対して効果が薄いことへの訴えが目立ちました。
一方、免許のない人に圧倒的に多い「反対」の意見には「1度取ればその後何もしなくていいというのは、親の立場からすると不安」「どんな免許も期限を設けたほうがいい。取得時点で能力があっても、一生保持しているとは限らない」「不祥事が多発している教員資格。次々と変化する社会情勢。適性を都度確認するべきだ」など、教員への不信感がにじんでいました。
指導力不足教員に対しての気がかりな提言
免許更新制は「指導力不足の教員がいる」という批判の高まりを受け、第1次安倍政権下の2007年に法改正し、09年から始まりました。教員免許の有効期限を10年と設定し、期限前の2年間のうちに30時間以上の講習を受けないと、失効する仕組みです。
受講義務は、ただでさえ不透明な状態の学校で、教員の負担を増やしました。免許はあるけれど現役でない人の転職や復帰を妨げ、人材確保の壁だとも指摘されました。
21年3月、当時の萩生田光一文部科学相が中央教育審議会に「抜本的見直し」を求めて諮問。同年11月、中教審特別部会が廃止を了承しました。文科省は23年度から、教員が自主的に研修を受け、どれだけ能力が向上したかを校長が評価する新たな仕組みを始める考えです。
ただ、自民党文部科学部会が6月14日、末松信介文科相に気がかりな提言をしました。指導力不足の教員には、公務員の身分保障の例外となる「分限免職」や教職以外への転任、再研修をするよう要求したのです。党内には更新制廃止に慎重論が根強かったと言い、管理強化を続けたい意図を感じます。
子どもへの体罰や性暴力の監視は必要です。でも、「資質向上」の名の下に度の過ぎた管理が広がれば、教員から個性を奪います。教員が自己研鑽し、それぞれの強みを学校に持ち寄ってこそ、子どもの学びが豊かになると思います。
参照データ
【教員免許更新制度の廃止】「現役教員」の96.0%が「賛成」、一方で免許を「保有していない」方の57.6%は「反対」(日本トレンドリサーチ)
https://trend-research.jp/14819/
執筆/東京新聞記者・中澤佳子