先生の勤務時間【わかる!教育ニュース#7】

連載
中澤記者の「わかる!教育ニュース」

先生だったら知っておきたい、さまざまな教育ニュースについて解説します。連載第7回のテーマは「先生の勤務時間」です。

勤務の過少申告を求められた先生は、小学校で15.9%

記録の改竄。霞が関ではびこったことが、学校でも横行しているのでしょうか。

小中学校教員の6人に1人が、記録上の労働時間を少なく書き換えるよう、管理職などから促された経験があることが、名古屋大学の内田良教授などの研究者グループの調査で分かりました。

2021年11月、インターネットを通じ、公立校の管理職を除く20~50代の教員924人の回答を集めて分析したところ、ここ2年間で勤務の過少申告を求められた人は、計16.6%。小学校では15.9%いました。

持ち帰り仕事を含めた、総時間外勤務(残業)が週20時間以上の人は、小学校で59.8%に上ります。週40時間以上でも10.8%。「過労死ライン」の残業時間の目安は月80時間ですので、単純計算で週20時間を超えると危険域になります。

興味深いのは、改竄を求められたのが、残業が多い人ほど多いことです。小学校で残業が週19時間以下の人だと9.3%ですが、20~39時間の人だと16.2%、40時間以上では32.7%に上ります。

この分析は、国や自治体の調査では見えない実態を浮かび上がらせるのが狙いです。休憩中や家でこなす仕事。書き換えでなかったことにされた労働時間。教員の働き方改革が唱えられ、改善に動きだしているかと思いきや、実際には「見えない残業」が存在しているのです。

勤務時間の把握に客観的な方法を使っていない自治体の50.8%が予定なし

中央教育審議会は19年1月、学校での働き方改革に関する答申で、勤務時間管理の徹底や、学校がやるべき業務の明確化、専門スタッフや外部人材の活用などを提言しました。文部科学省も教員の残業上限を「月45時間、年360時間」までとする指針を示し、タイムカードなどで客観的に労働時間を把握していない教育委員会への指導や自治体名の公表も考えています。

文科省が教職員の残業時間の推移を教委に確認したところ(参照データ)、21年4~8月は19年の各同月と比べて、「月45時間以下」の割合が増えていました。ただ、長期休みのない4~6月だと、「45時間超~80時間以下」が依然3~4割。80時間もゼロになっていません。勤務時間の把握に、タイムカードなど客観的な方法を使っているのは、都道府県や政令市が100%に対し、市区町村は85.9%にとどまります。しかも、導入していないところの50.8%が、開始予定もないと答えました。

教員の心身の疲労、なり手不足、不十分な授業準備…。長時間労働がさまざまな悪影響を及ぼすことは、すでに指摘されています。でも、業務量が多く、職場の効率化も進んでいないのに、働く時間を減らせと迫っても、無理というものです。

長時間労働がなくならない現実から目をそらしたままでは、その原因を探ろうとも、まして改めようともしないでしょう。記録の書き換えでしのぐ、見せかけの「改善」も絶えないのではないでしょうか。

参照データ
文科省の残業に関する教育委員会への調査
https://www.mext.go.jp/content/20220304-mxt_zaimu-000019724_1.pdf

教員免許更新制の廃止【わかる!教育ニュース#8】はこちらです。

執筆/東京新聞記者・中澤佳子

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