小4国語「もしものときにそなえよう」指導アイデア
教材名:「もしものときにそなえよう」(光村図書 四年下)
指導事項:〔知識・技能〕(2)イ〔思考力、判断力、表現力等〕B(1)ウ、エ
言語活動:ア
執筆/香川県教育センター指導主事・尼子智悠
編集委員/前・文部科学省初等中等教育局教科調査官・菊池英慈、前・香川県公立小学校校長・川井文代
目次
単元で付けたい資質・能力
①身に付けたい資質・能力
本単元では、書きたい事柄について集めた材料を比較したり分類したりして整理する力、考えとそれを支える理由や事例の関係について理解したうえで、それらの関係を明確にしながら書き表し方を工夫する力を付けます。
また、書いたものを見返して、間違いを正したり、相手や目的を意識した表現になっているかを確かめたりして、文や文章を整える力を付けます。
②言語活動とその特徴
本単元では、一人ひとりが決めた災害についてのテーマについて調べ、調べたことを基に、その災害への対処のしかたなどを友達に分かりやすく文章で伝える言語活動を位置付けます。
地震や津波など、自分が気になる災害のテーマについて紹介することで、一人ひとりが自分の考えを伝えようという意識を高めます。
また、同じテーマについて調べた友達と文章を見せ合い、より相手に伝わる文章にするためにはどうすればよいか話し合うことで、考えの述べ方や例示のしかたなど、さまざまな視点から文章の構成について考えることができます。
単元の展開(12時間扱い)
主な学習活動
第一次(1時)
①これまでの学習をふり返り、意見文を書く際の課題を確認し、課題解決の見通しをもつ。
→アイデア1 深い学び
【学習課題】
防災について自分の考えが伝わるように意見文を書こう。
第二次(2~10時)
②何について調べるか、テーマを選ぶ。
③④自分が調べたいテーマについて調べ、集材する。
⑤⑥どのような構成で書くとよいか話し合う。
→アイデア2 対話的な学び
⑦⑧話し合ったことを基に、文章を書く。
⑨⑩書いた文章を友達と見せ合いながら、より効果的な文章構成について話し合う。
→アイデア3 主体的な学び
第三次(11・12時)
⑪友達と文章を読み合う。
⑫学習のまとめをする。
アイデア1 「意見文」を書く際のポイント、本単元での課題を捉える
まず、これまでに学習してきた「案内文」「報告文」「物語文」「紹介文」などでは、それぞれ何を伝えたかったのかを確認したり、それぞれの文章を書くときのポイントを確認したりしましょう。
▼意見文を書くときに生かせそうなポイント
■題材の設定・情報の収集・内容の検討
・取材する:三年上「仕事のくふう、見つけたよ」【報】、四年上「新聞をつくろう」【報】
(実際に見る、インタビューする、図書館やインターネットを利用する、アンケート調査をする)
・目的に応じた資料を選ぶ:四年下「伝統工芸のよさを伝えよう」【紹】
(調べたいものを大まかに知る・・・百科事典など、調べたいものについてくわしく知る…調べたいものについて書かれている本)
・ パンフレット、見学記録
■構成の検討
・「はじめ―中―おわり」の構成で書く:三年下「食べ物のひみつを教えます」【報】、四年下「伝統工芸のよさを伝えよう」【紹】
・はじめに最も伝えたいことを書く:四年上「新聞をつくろう」【報】
■考えの形成
・例をあげて伝える:三年上「仕事のくふう、見つけたよ」【報】、三年下「食べ物のひみつを教えます」【報】
・写真で伝えることと文で伝えることを吟味する:四年上「新聞をつくろう」【報】
■推敲
・字に間違いがないか、文末表現が合っているか確かめる:四年上「お礼の気持ちを伝えよう」【礼】
・事実の誤りはないか確かめる:四年上「新聞をつくろう」【報】
・読み手に分かりやすく伝わるか確かめる:四年上「新聞をつくろう」【報】
本単元で書こうとする文章は、「案内文」「報告文」「紹介文」「お礼文」のどの文種に近いか確認をします。そうすることで「自分の考えを主張する」という「意見文」の特徴を捉えさせます。そして、その違いをふまえ、教科書の例文を基に「意見文」を書く際に特に重要なことは何かを考えさせましょう。
この文章で一番伝えたいこと(意見)があり、その意見を伝えるために、意見をはっきりと述べられていることや、それを支える「事例」や「理由」の構成などが工夫されていること、という意見文の特徴を捉えさせ、学習課題を立てましょう。
▼3つの例文
①
○○さんへ お元気ですか。
先日は、~していただきありがとうございました。□□という体験をさせていただき△△ということが、よく分かりました。特に~
②
私は、○○町の伝とう工芸品である△△をしょうかいします。
△△は、およそ百年前からこの町の伝とう工芸品として作られてきました。この町の人々だけ……。
③
私が見付けた○○の仕事の工夫をほう告します。
○○という仕事は主に△△ということをします。こうりつ的に仕事をするために、さまざまな工夫をしています。……
▼問題提起の文
この文章は、①~③のどの文章に似ていますか。また、どこが同じで、どこが違いますか。
①はお手紙だから違うね。②と③とは似ているけれど、②は紹介しているだけで、自分の考えが入っていないから少し違う気がするよ。
③は、自分が調べて見付けたことを伝えようとしているから、今回の文章と似ているね。
アイデア2 文章の構成とその効果について話し合う
「書き手の考え」「理由」「事例」について、どのような関係がよいのか考えさせます。その際には、これまで学んできたことを基に、教科書に例示されている二つの文章を見比べ、どのような構成の工夫がされているか話し合わせます。
また、図書や専門家の話などから「~によると」「~で調べてみると」などの表現を使って引用していることや、「例えば」「理由は三つあります」などと例を挙げているということも捉えさせましょう。
そして、それらがあることで、どのような効果があるのかを話し合うと、より学びが深まります。
▼構成の工夫について話し合う
北山さんは自分の考えの説得力をもたせるために、道路の危険という視点と視界という視点の二つの視点から、理由を挙げている。
木村さんも、妹とペットの二つの視点から例を書いているよ。さまざまな視点から書くことができたら、説得力が増すね。
▼表現の工夫について話し合う
北山さんは、一つ目の理由の後に「もう一つ理由が」と付け加えているね。報告文のときは「まず」「次に」という言葉を使っていたよ。意見文でもこの書き方は使えそうかな。
意見文では、自分の意見をはじめと終わりに二回述べることで、自分の伝えたいことが何かがよく伝わるようにしているよ。これは、紹介文の構成のしかたとは違うね。
アイデア3 「中」の文章の構成について、さまざまな構成を試してよりよい構成を考える
「中」の文章について、「段落の数」「段落相互のつながり(中の段落どうしのつながり・自分の考えとのつながり)」「事例や理由の挙げ方」という観点で推敲します。
理由や例示の数は多すぎたり、少なすぎたりしないか、はじめに述べた自分の考えに対して、それぞれの段落で述べている理由や例示が整合しているかどうか、理由や例示をする際の表現が適切かどうかを検討します。
▼「中」の文章の構成
○○という自分の考えについて、AとBという理由を書いたのだけど、これで考えが伝わるかな。
Aは、考えに合っていると思うけれど、考え→Bの順で読んでみると、理由として合っていないと思うよ。理由として△△ということも考えられるんじゃないかな。
Bで「もう一つの理由は」とするのなら、自分の考えのところに「理由は二つあります」と述べたり、Aのところに「一つ目の理由は」と述べたりしたほうがいいと思う。
多くの家庭に向けての意見文だから、「子供の避難のために」「父母の避難のために」「祖父母の避難のために」の三つの理由をあげたらいいんじゃないかな。
イラスト/佐藤道子 横井智美
『教育技術 小三小四』2021年2月号より