「学習や指導方針の見直し・改善が多すぎる」と悩む先生へのアドバイス|沼田晶弘の「教えて、ぬまっち!」
独自の学級経営&教科指導で子供たちのやる気を引き出す「ぬまっち」こと、沼田晶弘先生 。今回は、「学習や指導方針、 評価の方法などが数年で見直されるなど、改善とはいえ変更が多いことに加え、『結局、昔の方が良かった 』 と言われることに不満がある」という先生の悩みに答えていただきました。
目次
教育も時代に合わせて変化することは必要
2020年から新しい学習指導要領がスタートし、GIGAスクール構想も前倒しで導入されるなど、ここ数年教育現場ではさまざまな改善が行われ、教師はその対応に追われてきた。しかし、あまりその成果を実感できないという人もいるだろう。
そして方針転換を求められるたびに、「昔のほうがよかった」という意見が出るのも事実。でも、時代に合わせて変化するということはやはり必要なのだと思う。
例えば、車の新型デザインが出ると、最初のうちは「なにこれ!」と違和感を感じてしまうけれど、見慣れてくると、昔のデザインの車を「古いな」って思うよね。それと同じなんじゃないかな。
新しいことを取り入れることは誰でも不安だし、多少なりともストレスにはなるけれど、それは必ずしも悪いストレスとは限らない。「変わらない」ことは安心だし、楽だけれど、「成長していない」という視点も忘れてはいけないと思う。最近ビジネスの現場でよく使う「コンフォートゾーン」と同じなんじゃないかな。
「コンフォートゾーン」を抜け出すことで成長できる
「コンフォートゾーン」についてちょっと説明すると、人の置かれた状態には3つの領域があり、「コンフォートゾーン」とはその中で「居心地のいい場所」を意味する。自分が持っているスキルだけでいろいろなことを解決できるため不安を感じない領域で、それほど汗をかかなくても褒められたり、尊敬されたりすることもある。しかしその場所に居続けると人間は成長しない。
そしてそのコンフォートゾーンから一歩外に出たところに広がるのが「ラーニングゾーン」。未知の領域であり、自分のスキルや経験があまり通用しないため不安を感じる「居心地の悪い場所」だ。しかしその居心地の悪い場所を居心地のよい場所にするために、意識的にいろいろなことにトライして努力しようとするので、人として成長できると言われている。
ラーニングゾーンのさらに外側にあるのが「パニックゾーン」。ここは、自分の能力をはるかに超えるレベルを求められるので、精神的にも肉体的にも追い込まれた状態になるような危険な空間だ。
つまり、人としても組織としても成長するには、コンフォートゾーンに留まるのではなく、パニックゾーンに行かない程度に、ラーニングゾーンに飛び出す必要があるということ。
教育現場も何かを大きく変えるときには、不安やストレスがつきものだけれど、ある程度の不安やストレスならば、自分が成長するためにもそれらを克服しようと努力していく必要があると思う。
変化に立ち向かう勇気を身に付けよう
ボクの学校は国立の実験校として、常に時代に先んじた先駆的教育を模索することがミッションでもあるので、他の公立の小学校が取り組んだことのないような新しい研究的実践を常に行っていて、毎年改善・変更のオンパレードだ。
ボクの学校に限らず、最近は自治体によって教科担任制など新たなシステムを取り入れる学校も増えているよね。
例えば教科担任制に関して言うと、ボク自身は教科の枠組みを超えた勉強がやりにくくなるからつまらないなと思うこともある。でも実際にやってみたらきっと新しいやり方や可能性を見つけていくだろうとも思っている。
ボクが、「決まったことに対してあれこれ言っても仕方がない、自分なりに新しいやり方を見つけていくしかない」と考える性格ということもあるけれど、どんな状況でも前向きに捉え、変化に適応することで自分も組織も成長していけるという実感があるからなんだ。
それに目まぐるしく変化する社会の中で、教育現場だけが「昔と同じやり方」にこだわっていては、その社会を生き抜く子供たちは育てられないよね。教師自身も不安・ストレスを克服し、「ラーニングゾーン」に跳びだす勇気が必要なんじゃないかな。
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沼田晶弘(ぬまたあきひろ)●1975年東京都生まれ。国立大学法人東京学芸大学附属世田谷小学校教諭。東京学芸大学教育学部卒業後、アメリカ・インディアナ州立ボールステイト大学大学院にて修士課程を修了。2006年から現職。著書に『板書で分かる世界一のクラスの作り方 ぬまっちの1年生奮闘記 』(中央公論新社)他。 沼田先生のオンラインサロンはこちら>> https://lounge.dmm.com/detail/2955/
取材・構成・文/出浦文絵