コンビニ先生にはならない! ~連載小説「教師の小骨物語」 #7

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教師の小骨物語【毎週水曜更新】
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新米でもベテランでも、教師をしていると誰でも一つや二つは、「喉に詰まっている”小骨”のような」忘れられない思い出があります。それは、楽しいことばかりではなく、むしろ「あのときどうすればよかったの?」という苦い後悔や失敗など。そんな実話を取材して物語化して(登場人物はすべて仮名)、みんなで考えていく連載企画です。

7本目 「コンビニ先生にはならない!」

「子供たちに毎日日記を書かせて、毎日返事を書く」と決意したのは、今から10年前の初任のときだった。ぼく(住田宏隆、仮名)のあこがれの指導教諭が理想的な日記指導をしていたからだ。

一番の目的は「文章力を身に付ける」ことだったが、コミュニケーションツールとして活用し、子供たちにとっても思い出の宝物になればいいと思っていた。

だが、実際に始めてみると、日記を提出させることは想像以上に大変だった。

初任は5年生だったが、子供たちは面倒くさがり、ぼくも返事を書く時間を作るのに苦労した。毎日1ページと決めていたが、子供たちも「書くことがない」と言う。提出しない子もいたし、日記でのやりとりも正直面白くはなかった。

《今日は外に遊びに行きました。キャッチボールをしました。楽しかったです》

《よかったね。外で遊ぶっていいことだよ》

ぼくも「なんだかなぁ……」と感じていた。

日記指導に悩む教師

テーマを与える方法も試みた。

「もしも宝くじで1億円が当たったら?」「給食の食レポをしてみよう」など、それなりに楽しんで書いてくれる子もいた。1ページでまとめる力、漢字や用語の指導もした。

だが、なかなか子供たちのほうから書きたくなるような日記にはならないまま、初任校での空回りは続いた。

日記指導を焦りながらも、大変な失敗をしたこともある。

ある時、一人の男子が日記のなかに、いじめられていることを仄めかせる詩を書いてきた。そのとき、ぼくは深く考えずに近くにいた男子たちに聞いてみた。

「サトルくんって、いま、誰かにいじめられているなんてことあるの?」

「そんなことないよ」

「そっか、ならいいんだけど」

ぼくがサトルくんに書いた返事は、「きっと気のせいだよ。大丈夫だよ。また何かあったら日記に書いてね」だった。

ところが、翌日、サトルくんの母親から怒りの電話がかかってきた。

「日記の返事、読みました。先生、あの子の日記を読んでどう思いました? 勇気を出して書いたのに、簡単に“大丈夫だよ”なんて……」

この件については、弁解の余地もない。当時、ほかにも問題のある子がいて、クラスが落ち着いてなかったため、サトルくんの日記の件もさらっと受け流してしまったのだ。いじめという重大でセンシティブな問題を軽く受け流した僕は、教師失格だった。

日記を通して、悩みがあったら解決してあげようと思っていたのに、肝心なときに力になれなかったのだから。

その後も高学年の担任になり、日記指導は続けたが、子供たちの反応は相変わらず薄かった。

2校目で“自分流”の日記指導を見つけた!

2校目に転任になったタイミングで、ぼくは日記指導に関する良書に出合った。子供たちが喜んで日記を書くアイディアが満載だった。

これまで、「日記の提出を、シールなどの“ご褒美”で釣らない!」と決めていたのは、初任のときに憧れた先輩がご褒美的なことはしない主義だったからだ。でも、ぼくにはその先輩のような日記の指導力がない。そのことを素直に認めて、考えを改めようと思った。

子供たちの「集めたい」「攻略したい」という志向に応え、シール、表彰、日記番付表、日記マラソンなど、次々に子供たちが楽しめる仕掛けを考えた。

すると、クラスで日記が盛り上がり、提出率はぐんとアップした。

そうなると、返事もなかなか大変だ。ぼくは提出を週3回、返事を書く時間を音楽や図工がある曜日に定めた。返事は2文で書くことにしているが、こちらのスキルも上がってきて、子供たちの心に響くコメントも書けるようになってきた。

その後の学年でも日記は楽しく続き、いまでは“自分流”の日記ワールドができあがった。

初任校でなかなか上手くいかなかった日記指導が、2校目で上手く軌道に乗ったのは、感銘を受けた指導書との出合いもあったが、いま振り返って思うことがある。

日記に限らず、初任校で先輩を見習って「やるぞ!」と決めたことは、「1校目では借り物でも、2校目では“自分のもの”としてスタートできる」ということだ。

空回りしていたことも、転任して次の新しい学校で急に突破口が見つかることもある。

教師10年目。どんな失敗をしてもしつこく成長していける教師でありたい。

そして、「住田先生の担任になったら、日記を書かされるぞ~」と兄から弟へ語り継がれるような……。

そうなるまでには、思い出すのも辛いような日々もあったが、あきらめずに試行錯誤をしながら“自分流”を見つける年数は、確かに必要だった。

取材・文/谷口のりこ  イラスト/ふわこういちろう

『教育技術』2020年11月号より

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