主体的活動で「おばけ屋敷」にレッツトライ【4年3組学級経営物語17】

連載
学級経営のポイント満載の学級小説「4年3組~6年3組 学級経営物語」
学級経営物語タイトル

11月②「新生お化け屋敷」にレッツ・トライだ!

文/濱川昌人(よりよい学級経営を考える大阪教師の会)
絵/伊原シゲカツ

4年3組担任の新任教師・渡来勉先生……通称「トライだ先生」の学級経営ストーリー。子どもたちの熱意を伝え、西華祭の出し物を、禁止されているお化け屋敷の実施を決意した渡来先生。イワオジから課題として出された「安全性」「豊かな学び」を取り入れた新しいお化け屋敷作りにレッツ・トライです!

<登場人物>

トライ先生
トライだ先生(渡来勉/わたらいつとむ)
主人公。教職1年目。教師になる熱意に燃えて、西華小学校に赴任。 やる気とパワーは人一倍あるものの、時には突っ走り過ぎるのが玉にキズ。しばしば飛び出す口癖から「トライだ先生」と 呼ばれるようになる。4年3組担任。
イワオジ
イワオジ先生(大河内巌/おおこうちいわお)
教職20 年の経験豊富な学年主任。4年1組担任。一見いかついが、 温かく見守りながら的確なアドバイスをしてくれ、 頼れる存在。ジャグリングなど意外な特技も。
ゆめ先生
ゆめ先生(葵ゆめ/あおいゆめ)
教職3年目。4年2組担任。新採のトライだ先生を励ましつつも一 歩リード。きまじめな性格で、ドライな印象を与えてしまうことも。音楽好きでピアノが得意。

お化けにトライ!

学級経営物語

土曜日の市立図書館、早朝からお化け関係の文献にトライする渡来先生。時間は既に夕刻。

『お化けの話って、たくさんあるんだな。それに、民俗学に分類されているのか……』

書物から顔をあげ、感心する渡来先生。

『お化けの話の背景には、地方の歴史や文化、信仰や風習等がある。例えば、雪深い里の雪女、熱帯雨林の中の妖怪…。どれにもいろんな生活様式や習慣が関係し、歴史や地域の学習につながる。お化け話から各地の暮らしが見える、だな』

ハッとする渡来先生。

『それって、総合的な学習で何度か活動した手法だ!』

具体的な活動は、まだ見えません。

しかし、学習活動を組み立てる糸口は掴めた気がしました。

『でも、大きな課題は、子どもたちの活動意欲だな』*POINT

窓の外の夕空に目を向ける先生。

そろそろ閉館、日曜日もお化けにトライです!

「主体的・対話的で深い学び」の視点
① 学ぶ意味と自分の人生や社会のあり方を主体的に結び付けていく「主体的な学び」。
② 多様な人との対話や先人の考え方(書物等)で考えを広げる「対話的な学び」。
③ 知識や考え方を活用した「見方・考え方」を働かせて学習対象と関わり、問題を発見・解決したり、自分の考えをもって表現したり、思いをもとに構想・創造したりする「深い学び」。
「主体的・対話的で深い学び」の姿勢
「主体的・対話的で深い学び」を実現するためには、特別活動を主軸に据え、互いのよさを認め合い、足りないところを補い合うことができる人間関係を構築する学級経営を進めることが大切です。個々の子どもへのきめ細かな声かけや配慮、多様な発言や目に見えない意欲の把握や評価、そしてアクティブ・ラーニングを行う学級集団づくりなど、課題は山積みです。下図は、新しい学習スタイルをイメージしたものです。新しいスタイルの授業づくりに挑戦してみましょう。

アクティブ・ラーニングを取りいれた学習スタイル
アクティブ・ラーニングを取りいれた学習スタイル

お化け屋敷リフォーム作戦!

月曜日、話合い再開です。

思いを語り出す渡来先生。

「みんながイチ押しのお化け屋敷は実現させたい。でも、禁止の理由も納得できる」

「じゃあ、どうするの!」

苛立つカズを司会のヒロが制止し、発言しました。

「先生には何かアイディアがあるんですか?」

微笑みを浮かべ、黒板に記された『安全性』と『豊かな学び』の文字を示す先生。

「課題はこの二つ。その解決方法は、お化け屋敷のリフォームだ!」

みんなの顔を見て、熱く語る先生。

「禁止のお化け屋敷に、先生がこだわり続けたのは、みんなの意欲が半端じゃなかったから…。瞳が輝いていたから…。だから、みんなでこの課題にトライしたい。先生はそう考えたんだ!」

静かな教室に、沸き起こる拍手。

「リフォーム作戦開始だ!」

話を具体化するヒロ。

続いて、学者タイプのハジメが提案。

「トライだ先生が言ってた民俗学から閃いたんだけど…。『お化けミュージアム』っていう出し物はどうかな?」

話合いが、一気に進展。

リュウが質問します。

「お化けの博物館って…、どんなのかなぁ?」

「…例えば、世界中のいろんなお化けの紹介。黒いサンタクロースって知ってる? サンタはよい子に喜ぶ物をプレゼントするけど、黒いサンタは、悪い子に嫌がる物をプレゼントする。それから、イギリスではお化けの出る屋敷は、値打ちがグーンと上がるんだって。それから…」

「お化け博士だね! ハジメは」

ドッと沸く教室。

その様子を、微笑みながら見守る渡来先生。

「お化けミュージアム」にトライだ!

「世界のお化けクイズがいいです!」

「怪談話を語る会もやりたい!」

「でも、怖い話を上手に語るって、なかなか難しいんだよ」

「国語の勉強みたいだなぁ」

出し物の話合いが具体的になってきました。

カズがやや不満げに発言します。

「でも暗くしないんだろ…。怖さが足りないよ」

「じゃあ、お化け体験はどうかな」

それを受けてジュンが提案。

その時、ドアがガラッと開き、特活主任の葵先生が教室を覗きました。

「やっと動き出したわね!」

全員を見回し、大きな声で告げます。

「3組の努力を認めて、お化けミュージアムは広い多目的教室での実施が決定したわよ!」

歓声が満ちる教室。

「ありがとうございます。完成の際は、ぜひ最初にお客さんとして!」

感謝の意を告げる渡来先生。

微妙に頷く葵先生。

「ええ。でも私…、少し苦手なのよね」

話合いが終わり、いよいよ制作段階に突入。

作業は、かなりスピードアップ! 決定した出し物ごとにブースを設け、それぞれを段ボールで仕切っています。

傍らでは、クイズや怖い話、体験等の打合せや、立ち稽古が行われています。

「豊かな学び」をお化けで実現

西華祭が間近の放課後、大河内主任と葵先生が多目的教室を訪問。

主体的に作業する子どもたちに感心する二人。

背を向ける渡来先生を見付け、称賛します。

「豊かな学びが見えてきたな!」

「禁止事項、クリアできそうね。すごい!」

勢いよく振り向いたその顔を見て、ギャッと悲鳴をあげ尻もちをつく葵先生。

大慌てで『のっぺらぼう』の面を外し、平謝りする渡来先生。

「す、すみません。カズがイマイチ怖さ不足だと言うので…」

怒りの視線を向ける特活主任の葵先生。

前途多難な、お化けミュージアムです。

「二学期がんばったね会」をしよう!
二学期は運動会をはじめとして、遠足、学習発表会等、多くの学校行事があり、活躍の場も増え、大きく成長できるときです。また、その度にがんばったことや成長を、教師や学級集団に認められたいという意識が強くなるときでもあります。教師は、日々の活動を振り返る活動の中で、いろいろな行事や学習場面で自分や友達の頑張ったところに気付くことができるように支援します。そこで、お互いのがんばりを発表して知らせ合い認め合うことや、みんなで集会活動をすることにより、より一層クラス全体のつながりが深まります。また、一人ひとりのがんばりや、よさを再確認し、三学期への意欲、自信へとつなげることができます。

(12月①につづく)

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『小四教育技術』2017年8月号増刊より

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