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低学年のダンス指導 ポイントは「キュー出し」「オノマトペ」

2019/9/2

秋の運動会シーズンを目前に、ダンス指導に頭を悩ませる先生方も多いのでは?

長年の子どもたちにダンス指導を行い、現在は教員向けのダンス研修や、運動会の振付指導を行っているダンスインストラクターの菊浪信子さんに、低学年を対象としたダンス指導のポイントを教えていただきました。

写真/長嶋正光

「正しく動く」より「声を出す」を優先
間違ってもいいから楽しむ雰囲気をつくる

私がダンスを始めたのは2人目の子どもを出産した後、30歳ころからです。当初はエアロビクスを始めたのですが、せっかくなので子どもも一緒に連れていき、キッズビクスのレッスンに通わせるようになりました。

私自身が子どもたちに指導をするようになったのは、子どもたちと通っていたスクールでキッズビクスを指導していた先生に、「一緒に教えてみない?」と声をかけていただいたのがきっかけです。

そもそもダンスは好きでしたが、子どもを指導することは初めてだったので、わからないことだらけでした。教えてみてわかったのは、大人に教えるより、子どもたちに教えるほうがずっと大変だということ(笑)。

本格的に指導する前に、キッズビクス用の指導プログラムを受講したのですが、そこで、子どもたちをどうやって安全に動かすのか、さらにどのようにダンスを楽しませるのかということなど、しっかり叩き込まれましたね。 今でもその時に教えていただいたことがいろいろと役立っています。

ミラー指導では、アイコンタクトと
オーバーアクションを意識する

もっとも基本的なダンスの指導法の一つが「ミラー指導」です。子どもたちと対面して立ち、子どもの動作とは反対の動作で、まさに鏡のように動きながら教えます。

この時に大切なのは、子どもとしっかりアイコンタクトを取ることです。子どもたちの顔・目をしっかり見ながら、動きはオーバーなくらい大きく見せるように心がけています。

楽しく安全に踊るために
「キュー出し」のタイミングが重要

ダンスの経験がない子も含めて、子どもたち全員を一緒に同じように動かすためには、「キューイング」がポイントです。いわゆる「キュー出し」ですね。例えば、右に移動する場面では、右に動き出すそのタイミングでキュー出しをしたのでは遅すぎます。動き出す心の準備ができるよう、やや少し前のタイミングで、「次、右だよ」と伝えてあげなくてはなりません。

実は私も慣れるまではこのキュー出しのタイミングをつかむのが難しく、指導者から「遅い!」と何度も注意されてきました。

自分ではタイミングよく声かけをやっているつもりでも、子どもたちの動きを見ていると、「おっとっと」とつまずいてしまったりするので、やはりタイミングが遅かったのだと気づくことも多かったですね。そうした経験を何度もくりかえし、ようやく子どもたちが動きやすいタイミングがわかってきました。

現在、小学校や中学校で若い先生方にダンス指導をしているのですが、やはりこのキュー出しのタイミングができない方が多いと感じます。どうしても自分のタイミングで声をかけてしまうのです。そうすると、初めてダンスをする子にとってはやはり難しいのです。タイミングがずれてしまうと、転んだり、つまずいたりと、怪我につながることもあるので、子どもたちが安全にダンスを楽しむためにも、子どもに合わせたキュー出しが非常に重要だと思います。

低学年へのダンス指導は「オノマトペ」が有効

写真/長嶋正光

ダンスの動きの特徴を伝える時にも有効なのが、いわゆる「オノマトペ」。ダンスの動きは基本的には、ワン、ツー、スリー、フォーといったカウントでできています。

しかしこのカウントで指導するよりも、「ビヨーン、ビヨーン」といった擬態語や擬音語を使ったり、「グー・パー」「おしりフリフリだよ」など、子どもたちがイメージしやすい動きに変えて伝えたほうが覚えやすいのです。

例えば、横にステップを踏むときも、「足をパー、グー、パー、グー」と言いながら教えます。そのほうが「右出して、左寄せて」と言うよりも、子どもは理解しやすいのです。

さらに低学年なら、前にパンチをする動きをするときには、「アンパンチだよ」と言ってあげたり、下にパンチする動きの時には、「そんなの関係ねぇ!」と言ってあげると、とても喜びますね(笑)。

受け身にならないよう、どんどん声を出させる

子どもたちにはとにかく声を出させるようにしています。子どもはちゃんと踊れていなくても、声を出すことで 「やっている感」を感じるからです。また、声を発することによって、動きが運動神経にも伝わりやすくなるので、声を出すことはとても重要。

また、先生だけが声を出していると、子どもが受け身になります。「先生を助けて!」「ずっと先生、声を出しているからつらい! みんなも声を出して一緒に数えて」などと声をかけ、子どもを巻き込んでやることで、子どもたちのテンションも上がります。特に低学年の子たちは素直なので、「もっと!」と言えば言うほど声が大きくなります。ノリノリの元気な子がいたら、思い切りほめてあげ、「みんなもこの子みたいに真似して」と伝えるとよいでしょう。

苦手な子に無理じいしない 教え合いも効果的

子どもたちの中には、ダンスが苦手だったり、間違うのが恥ずかしくて踊りたがらない子もいるでしょう。低学年では特に、正しい動きよりも、子どもらしく元気に楽しく踊ることを意識してほしいので、授業の導入部分で、「間違っても大丈夫だから、チャレンジしてみよう」「間違ってもいいから大きく動いてみよう」といった声かけをしましょう。

その上でやはり踊りたがらない子がいたら、無理じいさせないほうがよいと思っています。その代わり、「難しかったら、足の動きだけやってみようか」「一緒に声を出すのだけお手伝いして」など、少しでもその子ができそうなことをやらせて、もしそこを頑張っていたら認めてあげましょう。

なかなか動きが覚えられない場合は、お友達同士で見せ合うのもよいでしょう。先生の伝え方だけではわからないことも、例えばペアになって、「お互い見合いっこして、よいところや違っているところを教え合いましょう」と声かけをすると、「どういうところがよかった?」「ここをもっとこうしたほうがよかった」などと話し合いながら、じっくりお互いの動きを見るようになります。

まずは人の動きを見て覚え、「自分も次はあそこを気をつけてやってみよう」という意識づけを積み重ねていくとよいでしょう。

センスを磨くためにはリズム遊びで!

ダンスのセンスを磨くコツとしては、音に合わせて動く機会をたくさんつくるとよいでしょう。最初から曲に合わせて動くことは難易度が高いので、例えば手拍子などで、リズム遊びをするのもお薦めです。

例えば、手と手を合わせる時には「タン」、膝を叩く時には「トン」というようなルールを覚えさせ、タン、トン、タンと、それぞれの音に合わせて手やひざを叩きます。それを繰り返しながら、「今度は立ってみよう。今度タンの時にお膝しっかり曲げるよ。トンのときはお膝伸ばして。タン、トン、タン!」というように、いろいろな動きを加えていきます。

実はこの動きはストリートダンスのダウンの動きにつながります。

保護者に寄り添い、子どもの頑張る姿を見せる

保護者に対しても私が心がけているのは、保護者の気持ちに寄り添うこと。「うちの子、最近全然やる気がなくて」といった愚痴でも「そうなんですね」と言って、まずはご自宅での様子や保護者の言い分を聞いてあげます。その上でスクールでの様子を伝えてあげつつ、なるべくたくさんその子に声かけをしてあげます。そしてもし自信がなさそうな子には、よいところを見つけてほめてあげるようにします。

また、私は保護者の前でも遠慮なく子どもたちを頼ります。実際に一人では抱えられないこともあるので、できそうな子には、年下の子の動きをサポートしてもらったり、どんどん役割を与えます。そうすると子どもたちが私を助けようと、それぞれ頑張ってくれるのですが、そうした姿を見ると、逆に保護者の方は、子どもたちを動かすことのできる指導者だと信頼してくれるようになると感じています。

きっと学校現場では先生方も一人ではできないこともあると思いますし、ダンスが苦手な方もいるでしょう。まずは先生ご自身が、一人で抱え込まず、「間違ってもいい」「楽しもう」というところからスタートしてほしいなと思います。実は、子どもを頼ったり、子どもを巻き込んでみると解決することも多いはずです。

例えば、ダンスが得意な子を先生役にして前に立たせてリードさせてあげれば、ダンスが得意な子も退屈にならず、先生はできていない子たちのフォローに回ることができます。また、「先生も苦手だけど頑張るから、一緒にやろうよ」と言ってあげれば、ダンスに苦手意識のある子も、先生と一緒に頑張ってみようと、きっと前向きになってくれると思いますよ。


菊浪信子さん

REMIXダンススクール代表。30歳からエアロビクスを始める。その後ヒップホップやストリートダンスなど、さまざまなジャンルのダンスを学び、現在は、NSSA(公益社団法人日本ストリートダンススタジオ協会)公認のダンスインストラクターとして、REMIXダンススクールで、子どもから大人までストリートダンスを指導。さらに、学校ダンスA級指導員としても活躍。各地の小学校や中学校で児童への指導はもちろん、教員向けの研修も行っている。


取材・文/出浦文絵  撮影/長嶋正光

『小二教育技術』2017年9月号より

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