小2特別活動 学級活動編「ワクワクして楽しい運動会にするための工夫を考えよう」指導アイデア

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【文部科学省視学官監修】特別活動 指導アイデア
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帝京大学教育学部教授(元文部科学省視学官)

安部恭子
小2特別活動 学級活動編「ワクワクして楽しい運動会にするための工夫を考えよう」指導アイデア バナー

文部科学省視学官監修による、小2特別活動の指導アイデアです。5月は、学級活動(1)「ワクワクして楽しい運動会にするための工夫を考えよう」を紹介します。

私たちの地域では、多くの小学校が5月に運動会を実施します。思い出の残る運動会に向け、子供たち自身の「もっと盛り上げてみんなで楽しみたい」、「運動会を通して学級の絆を深めたい」という思いが話合いにつながった実践です。学級会の話合いを通して生まれた創意工夫が豊かな学校行事に生かされた実践例を紹介します。

執筆/青森県公立小学校教諭・馬渡静香
監修/文部科学省視学官・安部恭子 青森県八戸市総合教育センター所長・河村雅庸

年間執筆計画

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04月 クラスの合言葉をつくろう
05月 ワクワクして楽しい運動会にするための工夫を考えよう
06月 雨の日の遊びを決めよう
07月 夏祭りをしよう
09月 夏休みの思い出発表会をしよう
10月 なわとび集会をひらこう
11月 なかよし学きゅうまつりをしよう
12月 1年生と遊ぼう会をひらこう
01月 思い出パーティーを開こう
02月 思い出いっぱいのクラス文集をつくろう
03月 「2年生のバトン」をわたす会をしよう

学級活動(1)議題「ワクワクして楽しい運動会にするための工夫を考えよう」の実践

本活動に入るまでの活動

運動会前の児童朝会

本校では児童朝会で、代表委員会で話し合って決定した運動会テーマの披露と、赤白の組分けを行います。子供たちは、「今年は赤組かな? 白組かな?」と、ワクワクしながらこの日を迎えました。まずは、今年の運動会テーマが発表されます。

熱(あつ)き絆(きずな) 仲間(なかま)とともに 勝利(しょうり)へGO(ゴー)!

テーマ披露の後に、いよいよ赤・白の組分けです。本校では、各学級代表の子供がくじを引きます。みんなはドキドキしながら見守ります。私の学級では、今年は赤組に決まり、歓声が上がりました。

「キャリア・パスポート」の活用

短学活などの時間に、「キャリア・パスポート」を活用して、運動会の個人のめあてを決めます。

運動会のテーマが発表されましたね。2年生の今年は、どんな運動会にしたいかな

1年生のお手本になりたい

応援をがんばりたい

「勝利へGO!」だから、赤組が優勝したいな

みんないろいろ楽しみなことがあるね。1年生の時の「キャリア・パスポート」を見て、思い出してみよう

1年時に運動会について記入した「キャリア・パスポート」例

「キャリア・パスポート」を活用して、1年生のときにがんばったことや、できるようになったときに感じた気持ちを想起することが、2年生としての運動会に対しての期待を高めることにつながります。

運動会で、がんばったことやできるようになったことがいっぱいあったことを思い出したよ

練習は大変だな、と思ったけれど、友達や家の人にほめられてうれしかったな

楽しい運動会だった。今年もがんばりたいな

この後、次のような話合いが行われました。

教師:去年の運動会よりもよい運動会にするためにどんなところをがんばりたいのかを考えて決めましょう。
子供1:今年の団体競技は「大玉ころがし」だって! 絶対に勝ちたい!
子供2
:他のグループのことも、みんなで応援しなくちゃ!
子供3
:応援して、「やったあ!」って言いたいよね。
子供4:運動会でがんばるために、何か工夫ができないかな。
子供5:何かを作って応援したら、もっと楽しくなりそうじゃない?
子供6:学級会ポストに入れようよ。学級会でみんなで話し合いたいな。

このように運動会に向けて子供たちの気持ちが高まる中、学級会ポストに入っていた、「運動会をもっと楽しくしたい」の提案カードを受けて、今回の議題が計画委員会で選定され、学級みんなで決定されました。

学年に学級が2クラス以上あるときは、学年会などでこうした議題で話し合うことを事前に伝えておくようにしましょう。特に、今回の実践は学校行事の場で行うものなので、事前に特別活動部会や職員集会などで知らせておくようにするとよいでしょう。

事前の活動

学級の子供の活動

話し合うこと①「何をするか」
話し合うこと②(①で決まったことについて)「どのようにするか」について、
学級会ノートに自分の考えを書きます。

計画委員会の活動

ア)学級会カードから、意見の傾向を把握します。
イ)計画委員会で、教師と一緒に学級会の活動計画や意見の短冊等を作成して、話合いの見通しをもてるようにします。

本時のねらい

みんなの思いや願いを出し合いながら、みんながもっとワクワクして楽しい運動会にするための工夫を話し合って決めることができる。

本時の実践〈学級会〉

議題「ワクワクして楽しい運動会にするための工夫を考えよう

<提案理由> 
今年の運動会も優勝を目指して、みんなと力を合わせて一生懸命がんばりたいです。みんなでなにかをつくって応援したり、いっしょにやったりするとワクワクして楽しい運動会になると思います。1年生のときよりも、ワクワクして楽しい運動会にしたいです。

<決まっていること>
・みんなでつくったり、一緒にできたりするもの
・簡単にできるもの  
・応援席でできるもの

話し合うこと① 何をするか

【出し合う】
今回は学級会の前に、「みんながワクワクして楽しい」とはどんなことかを計画委員会で話し合い、学級のみんなに伝えて、イメージの共有化を図りました。また、一人一人が学級会ノートに書いた考えを短冊にして、学級会コーナーに掲示しました。事前に質問があったら答えるなど、みんなの意見や考えを共通理解しておくことで、本時では「くらべ合い」から話合いを進められるようにしました。

「みんながワクワクして楽しい」とは、どういうことか、事前に共通理解を図るようにします。
朝の会や帰りの会で、事前に出し合った意見を紹介しておくことで、どんな意見があるのか確かめたり、分からないことについて事前に質問したりしておくことができます。
本時の話合いを【くらべ合う】段階から始めることで、話合いの時間の確保にもつながります。

 

【くらべ合う】

学級会カードの意見を計画委員会でまとめて、短冊にしました。これ以外に意見はありますか?

どんな運動会にしたいか、事前に出た意見を短冊にまとめる。

司会:新しい意見や質問がなければ、くらべ合いの話合いに入ります。意見を発表してください。
子供1:私は「走る練習をする」がいいと思います。わけは、もっと走るのが速くなりたいからです。
子供2:私も「走る練習をする」に賛成です。1年生のときよりも上の順位をとりたいからです。
子供3:ぼくは「走る練習をする」に反対です。休み時間に「練習する」って言ってたけど、休み時間は遊びたいからです。
子供4:私は「走る練習をする」に賛成です。だって、運動会では速く走りたいから、練習した方がいいからです。
子供5:ぼくは、「走る練習をする」に反対です。練習は、体育の時間にすればいいからです。
教師:はい! 先生からいいですか。
子供たち:はい、先生お願いします。
教師:体育の時間について、先生から話しますね。運動会のために、体育の時間に「走る練習」はしますが、それは走る順番や、“用意、スタート”から“ゴール”までの走り方を確認するためです。ですから、「速く走る練習を体育の時間に」と学級会で決めることはできません。
そして、学級会は、学級みんなの生活が楽しくなったり、みんなが仲よくなったりするために話し合います。ですから、走る練習も学級活動ではない時間に行うとよいでしょう。でも、「速くなりたいから練習したい!」と、思う気持ちはとても大切ですよ。

教科学習の時間の内容は、子供たちが決める自治的活動の範囲ではありません。また、教科の学習内容は教科の授業の時間に行うものですから、今回のように「速く走るための練習をする」ことは、学級活動の時間に行う内容として適切ではありません。
学級活動(1)の時間は、学級生活の充実・向上に関わる内容を行うものです。そのことを子供たちに伝えつつ、意見を出した子供や賛成した子供の気持ちに配慮して話し合うようにします。

子供1:私は、休み時間に「速く走るために練習する」の意見は、やっぱりどうかなあと思います。運動会はがんばりたいけど、休み時間は自由に遊びたいんじゃないかな。
子供2:○○さんと同じで、休み時間は遊びたい人もいるので無理矢理練習はちょっと……。
子供3:だったら、休み時間に練習している人がいて、「教えて」「一緒にやろう」って言われたら、協力するにしたらどうですか? やりたい子や、やってもいい子の練習を手伝うってことで。
子供4:それがいいです。練習したい子がいるって分かったから、協力できると思う。
お願いされたら、助けることにしようよ。
司会:「練習する」は、休み時間に自由にやる。協力できるときは協力する。という意見が出ましたが、みなさんどうですか?
子供たち:賛成です。いいです。
司会:ありがとうございます。

反対意見が多く出された場合でも、短冊をすぐに下げてしまうのではなく、反対の理由に着目し、改善策や生かすことができないかを子供たちと一緒に考えていくようにすることも大事です。

 

司会:ほかの考えに、意見をお願いします。発表してください。
子供1:私は「作戦を考える」に賛成です。大玉ころがしで勝ちたいからです。
子供2:私も「作戦を考える」に賛成だけど、さっき先生が体育の時間の話をしていたからどうなのかな…。作戦は体育の時間のことですか?
司会:先生に質問が出ましたが、先生どうですか?
教師:体育の時間でも大玉ころがしの練習はするから、そのときに作戦の時間はとれますよ。
子供2:分かりました。ありがとうございます。
司会:ほかの考えに、意見をお願いします。発表してください。
子供3:私は「絵」に賛成です。運動会をがんばる絵をみんなで描いたら、楽しいと思うからです。
子供4:私も賛成です。みんなの絵を合わせると楽しい運動会になりそうです。
教師:みんなで描くって、一人一人かな? 合わせて大きな絵にするのかな?
子供3・4:どっちかなあ。どっちも、かなあ。
子供5:みんなで同じ時に、一人一人が描いてもいいし。
子供6:みんなで一つの絵もいいなあ。ポスターみたいだよね。
司会:「絵」を描きたいと思っている人が多いようです。「絵」はやることにしてもいいですか。
子供たち:いいです。
司会:では、「絵」は決まりで、話合い②で、どのようにやるかを決めます。
子供1:合わせてみる考えですが、「がんばれ!と拍手する」と「大きな声で応援」は、同じじゃないかな。どちらも応援のことなので一緒にしていいと思います。
子供2:なるほど、いいんじゃないかな。
子供3:そうだね。みんなのことを「がんばれ! もう少し!」って応援したい。
子供4:「応援」をいっぱいしたいので、賛成です。
子供5:応援グッズも使って応援したらどうかな。6年生の応援もがんばりたいなあ。

この後、それぞれの意見のよいところを認め合いながら、話合いが進みました。

【まとめる】

司会:では、話合い①の「どんなことをやるか」は、絵を描くことと、応援することに決まりました。
――――拍手(パチパチパチ……)――――
司会:ありがとうございます。

話し合うこと② どのようにやるか

黒板記録の子供は、話し合うこと①で決まった2つの内容の短冊を新しく作って、話し合うこと②の場所へ貼ります。①の短冊を動かしてしまうと、話合いの過程が分かりにくくなるので、新たに短冊をつくりましょう。※下記画像「板書例」の話し合うこと②黄色い短冊を参照。

【出し合う】

司会:では、話合い②に入ります。はじめに、運動会前に描く絵についてです。どんな絵にしたらよいと思いますか。近くの人と、少し相談してみてください。
(1~2分ほど経ってから)
司会:では、意見をお願いします。
子供1:絵は、みんなで一緒にやりたいです。大きく作って、後ろの黒板に貼るのはどうですか?
子供2:賛成です!「みんなで」でやることにしているしね。ぼくたちの運動会ポスターだね。
子供3:ゴーゴーゴーの歌に出てくる「太陽」の形の絵ってどうですか? 赤組のキャラクターだから。
子供4:いいね!「輝く太陽」のようにだね。
子供5:太陽の絵に賛成です。
子供6:賛成です。赤組の運動会キャラクターみたいだね。
――――拍手(パチパチパチ……)――――
司会:次に「応援」について意見を出してください。
子供1:私は、応援グッズの旗を作ったらどうかなと思います。
子供2:私は、メガホンはどうかなと思います。簡単に作れそうだし。
子供3:メガホン? それって作れるの?
子供2:紙で作れると思います。朝のあいさつ運動で、6年生が使っていました。
子供3:じゃあ、作り方を聞けばいいのかな。どんな形?
子供4:メガホンって何か分からないな。どうやって使うの?

メガホンを見たことがない、分からないという子供に対して、意見を出した子供が困ってしまいました。

教師:司会さん、○○さんに実際にみんなの前でやってみてもらったらどう?
司会:○○さん、前に出てきてやってみてもらっていいですか?

今回は、何人かの子供たちが手伝いながら、実際にやってみせました。
教師がメガホンの写真を大型テレビで見せたり、「それはこんな感じ?」というように作成してあげてもよいでしょう。

学級会でメガホンの話題が出てきたが、メガホンが分からない子がいたため、画用紙を丸めたもので説明する。

子供2:これです! こうやって「がんばれ~!」って応援します。
子供4:そうか! それなら分かるよ。盛り上がりそうだね。
子供2:紙をこうやって丸くすれば作れそうです。(近くにあった紙を丸めて見せながら)ほら!
子供3:じゃあ、私たちにも作れそうだね。いいんじゃない? 賛成です。

実物を見せることで具体的に考えることができたり、子供たちがイメージを共通理解することができたりして、よりよい合意形成につながります。

それでは、みんなの意見をまとめます。絵はポスターみたいに大きい紙に描いて太陽の形にする、応援では画用紙でメガホンを作って応援するに決まりました

ワクワクして楽しい運動会にするために、みんなでできることを考えて決めることができましたね。今日出た意見は、どれも運動会を楽しくするための素敵なアイデアです。先生も、運動会がとても楽しみでワクワクしてきました。絵や応援グッズ作りをこれから協力してがんばりましょうね

※1クラスだけメガホンをもって応援することになるので、事前に学年や学校の先生方に伝えて了解してもらいました。

この後、ノート記録が決まったことを発表し、振り返りをしました。

◆板書例

小2特別活動 学級活動編「ワクワクして楽しい運動会にするための工夫を考えよう」指導アイデア  板書例

事後の活動

馬渡学級で作った運動会の絵。「みんなで力をあわせる」「まけてもさいごまでやる」「楽しもう!」など、一人一人が目標を書き込んだ。

運動会という学校行事に向けて、「ワクワクして楽しい運動会になる工夫をみんなで考えて、協力して取り組むことで、学級の友達とももっと仲よくなるために」自分たちにできることは何かを考え、よりよく工夫することでもっと学校生活を豊かにできると経験することができました。「なりたい自分」から「仲間と考えを合わせながら、ともに実現を目指していく」話合いになりました。

事前にめあてを記入していた「キャリア・パスポート」を活用して、振り返りを記入します。子供たちのがんばりや成長を教師が認め励ます一言を加えました。

子供たちが自由に自分自身の運動会のがんばりについて書けるように、作文(絵日記)なども活用して、「やってよかった!」「3年生の運動会がもっと楽しみになった!」と思えるようにするのもよいでしょう。

イラスト/高橋正輝

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