「アセスメント」とは?【知っておきたい教育用語】

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【みんなの教育用語】教育分野の用語をわかりやすく解説!【毎週月曜更新】
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「アセスメント」という言葉が、学校でもさまざまな場面で使われるようになっています。多くは「評価」とか「査定」という意味で使われますが、もっと深い意味があります。子どもたちの学びの充実に向けて、この言葉をどのように理解して使ったらいいでしょうか。

執筆/東京学芸大学准教授・末松裕基

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問題解決のための仮説の構築

「アセスメント(assessment)」は従来、「環境アセスメント」「リスクアセスメント」など、主に環境や製品管理などの分野で使われてきた言葉です。しかし、最近では「看護アセスメント」「ヘルスアセスメント」など、いろいろな分野で使われるようになってきました。

「アセスメント」の語源はラテン語で「補佐として判事の横に座る」を表していました。そこから、「(課税のため財産・収入を)算定する」「(税金・罰金などを)査定する」となり、「見積もる」「評価する」「査定する」「判定する」の意味が定着したようです。

学校でも「心理アセスメント」「学力アセスメント」「対話型アセスメント」などというふうに、いろいろな場面で使われるようになってきています。

たとえば、子どもをどのように理解するかという場面で「アセスメント」を使う場合、子どもの「実態把握」という意味になりますが、それだけではありません。

また、「アセスメント」を「心理検査」とイコールととらえて使われることがありますが、「心理検査」は「アセスメント」の有効な手段であってもイコールではありません。

検査や面談をはじめ、さまざまな方法を用いて子どもの状況を測定・評価しながら、そこから得られた情報を総合的に解釈し、その上で有効な方策を仮説として立てていく過程が「アセスメント」です。つまり、「アセスメント」には、問題状況の「査定」に加えて、問題解決に向けた「仮説の構築」という意味合いが含まれます。

子どもを理解するための「アセスメント」の場合は、子どもの指導・援助のあり方を決定するために必要な情報を収集・判断・検証する過程と考えることができます。

「学力アセスメント」の場合も、単に学力を評価するだけではありません。子どもの興味・関心・知識の状況の把握、授業時の理解度や目標に応じた実態把握・成績評価、フィードバックを通じた学習の意義や次の学習の課題の発見、学習計画の修正などが想定されます。

ですから、学習後にアセスメントするのではなく、学習前と学習中においてもアセスメントするわけです。

「アセスメント」の視点とは?

アセスメントは、査定・評価が目的ではなく、その過程を通じて仮説を立て、実際に行動していくことが重要になります。

子どもを理解するためのアセスメントの場合、対象は個人、環境、個人と環境の関係、と大きく分けることができます。

  1. の個人については、学習状況、生活面の様子、子どもの感情、考え、行動、得手不得手などに注目します。
  2. の環境については、家庭環境、生活環境、学習環境の状況・条件などが考えられます。
  3. の個人と環境の関係については、どのようなときに問題や行動が起きているか、誰が関わっているときにうまくいっているか、どのような条件下で効果的な対策が実施されているかなどに注目します。

そしてアセスメントにおいては、知能検査などの検査だけでなく、行動観察や面談をはじめさまざまな方法によって情報を集め、子どもの特性と教育課題などを把握し、一人ひとりに合った有効な指導や支援の方法・手立てを明らかにしていくことを目指していきます。

アセスメントの方法とは?

アセスメントにおいては、まず情報(データ)を収集します。

子どもを理解するアセスメントでは子どもに関する質的・量的情報が必要になりますが、そのために行動観察、面接、標準化された客観的な検査などを行います。客観的な検査としては、発達、知能、言語、社会性、運動などに関する検査があります。

これらの情報をもとに、子どもの状況、問題、教育課題などを測定・評価し、総合的に解釈していきます。その上で、指導・援助についての仮説を立てていきます。

情報収集においては、検査等による客観性ももちろん重要になりますが、それに加えて、関係者への聞き取りや、情報の読み取りも大切になってきます。

そして、指導・援助の仮説を立てるわけですが、その際、子ども当人や保護者の希望や願いも重要な情報源になります。

アセスメントは、これらの情報を集め、解釈・吟味し、そこから有効な問題解決のあり方を計画し、問題解決の方針や方法を決定・修正していく一連の流れを指します。

収集された情報は、会議等で多面的に検討され、総合的に理解されることが求められます。そして、この過程において、複数の教職員や関係者が子どもについての情報を共有し、有効な関わりや支援を目指すことが必要です。

▼参考文献
青山眞二編『アセスメントで授業が変わる:特別支援学校・学級で生かす子ども理解と支援のアイデア』図書文化社、2019年
藤田和弘「アセスメント再考」(『LD & ADHD』明治図書、2004年7月号)
渡邉雅俊「特別支援を必要とする子どもの学校適応におけるアセスメントの活用」(『國學院大學 人間開発学研究』第6号、2015年)
OECD教育研究革新センター編著『形成的アセスメントと学力:人格形成のための対話型学習をめざして』明石書店、2008年

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