小6理科「土地のつくりと変化①」指導アイデア

執筆/大阪府公立小学校教諭・西岡賢一
編集委員/国立教育政策研究所教育課程調査官・鳴川哲也、大阪府公立小学校校長・民辻善昭、大阪府公立小学校校長・細川克寿

主体的・対話的で深い学びの実現に向けた授業改善

「主体的・対話的で深い学び」の視点から授業改善を行い、資質・能力を育成するには、どのようにすればよいのでしょうか。

まず、「主体的な学び」については、自分たちで観察、実験を通して解決できそうな問題を見いだすことができるようにすることが大切です。また、予想や仮説をもち、見通しをもって観察、実験などを行うことで、より妥当な考えをつくりだしていくことができます。さらに、学習活動が意味付けられたり、得られた知識や技能を基に次の問題を発見したり、新たな視点で自然の事物・現象を捉えたりするために、学習活動を振り返ることができるようにすることも大切です。例えば、学校の地面の下の様子を想像して、考えを絵や言葉で表現し交流した後、疑問を出し合い、自分たちで観察や実験を通して、解決できそうな問題を設定することなどが考えられます。

また、「対話的な学び」については、子供自身が自分の考えを広げたり深めたりしながら、より妥当なものにするために、あらかじめ個人で考え、その後、意見交換をしたり、根拠を基にして議論しながら科学的に問題解決したりできるようにすることが大切です。例えば、地層のでき方について、実際の地層の構成物である丸みを帯びた礫や砂の観察から予想や仮説を立て、モデル実験での検証計画を立案したり、考察の場面において、既習内容である流れる水の働きを根拠とし、対話を図ったりすることで、より妥当な考えをつくりだすことができると考えます。

最後に、「深い学び」については、「理科の見方・考え方」を働かせながら問題解決を行うことで、資質・能力を育成することが大切です。また、問題解決の過程で、その時間やこれまでの学びを振り返ることができるようにしながら様々な知識をつないで、知識を相互に関連付けてより深く理解したり、考えを形成したりできるようにすることも大切です。

さらに、新たに獲得した資質・能力に基づいた「理科の見方・考え方」を、次の学習や日常生活などで働かせることができるようにすることも大切です。例えば、校舎建設時のボーリング試料や何地点かの柱状図を、地図上に立てて示すことで、空間的な見方・考え方を働かせ、地層の広がりを視覚的に捉えることができると考えます。

Ben LescureによるPixabayからの画像

授業づくりのポイント

① 自然の事物・現象から問題を見いだし、見通しをもって観察・実験を行う場面の設定。

② 自分の考えを基にグループや全体で対話し、考えを広げたり深めたりする場面の設定。

③ 学びを振り返り、様々な知識をつないで、より科学的な概念を形成することに向かう場面の設定。

単元のねらい

土地やその中に含まれるものに着目して、土地のつくりやでき方を多面的に調べる活動を通して、土地のつくりや変化についての理解を図り、観察、実験などに関する技能を身に付けるとともに、主により妥当な考えをつくりだす力や主体的に問題解決しようとする態度を育成する。

単元計画(二次 全8時間)

一次

1時

●学校の地面の下の様子を想像して絵や言葉で表現し、考えたことについて話し合う。

●学校のボーリング試料や崖の写真を見て気付いたことを話し合い、問題を見いだす。

① 「土地に縞模様が見られるのはどうしてだろうか?」

② 「土地の縞模様は、ずっと奥まで続いているのだろうか?」

③ 「土地の縞模様は、いつ、どのようにしてできたのだろうか?」

二次

2・3時

土地に縞模様が見られるのは、どうしてだろうか?

●学校のボーリング試料や崖の写真などを詳しく観察し、縞模様が粒の大きさや形、色の違いによってできていることを調べる。(活動アイディア①)

 土地は礫、砂、泥、火山灰などからできており、層をつくって広がっている。このような層を「地層」と言う。


4・5・6・7時

地層はどのようにしてできたのだろうか?

●地層に含まれる丸みを帯びた礫や砂などから、流れる水の働きと地層のでき方を関係付けて調べる。(活動アイディア② )

●火山灰や軽石などが含まれることから、火山の働きと地層のでき方を関係付けて調べる。

 地層は流れる水の働きや火山の噴火によってできた。


8時

地層はいつ頃できたのだろうか?

●化石や地質試料などから、いつ頃できた地層なのかを調べる。

 地層には化石や礫、砂、泥が固まってできた岩が含まれ、遥かな昔から堆積した重みで長い年月をかけてできたことが分かる。

単元デザインのポイント

単元構想

子供が主体的に問題解決に取り組むには、子供が問題を見いだすことが大切である。そこで、一次を問題を見いだす場とした。そして、二次では、一次で見いだされた問題を解決し、学習を振り返ることで、子供自らが学びを自覚できる場となるように単元を構想する。

一次

一次では、地面の下の様子を想像して、表現し話し合ったことを基に、学校のボーリング試料や崖の写真を見る。そこから得られた疑問を出し合い、疑問の中から、自分たちで観察や実験を通して解決できそうな問題を設定することができるようにする。自分たちで設定した問題という意識が、問題解決を主体的にする。また、自然事象から問題を見いだす力を育成する場とする。

二次

二次では、学校のボーリング試料や崖の写真などを詳しく観察することから、柱状図などを用いて地層の様子を可視化する。いくつかの地点の柱状図を地図に照らし合わせて示すことで、空間的な見方・考え方を働かせ事象を捉えることができる。さらに、流水の働きによるモデル実験や、火山灰、化石、岩石標本などの観察を通して、地層のでき方を説明することができるようにし、時間的な見方・考え方を働かせながら問題解決することで資質・能力を育成できる場とする。また、予想をする時や考察する際には、自分の考えを基にグループや全体で対話しながら、自分の考えを広げたり深めたりできる場とする。

活動アイディア① (二次 2・3時)

【一次 1時】

私たちの町や学校の地面の下は、どのようになっていると思いますか? 絵や言葉を使って表現してみましょう。

道路はアスファルトで舗装されているけれど、その下は土だと思う。

崖の写真を見ると、縞模様になっているけれど、どうしてかな?

【一次 2時】

問題

土に縞模様が見られるのは、どうしてだろうか?

予想

層になっているように見えるのは、土の粒の大きさが違うからじゃないかな。

少しずつ色が違う土が重なっているからかな。

結果

ボーリング試料を観察すると、粒の大きさが違う土が重なって層になっていた。また、他の土と色が異なる層もあった。

考察

私の予想と同じで、色が違っているように見えたのは、土の粒の大きさが違ったからなんだね。

火山灰でできている層があったことから、昔、火山が噴火していたことが分かるね。

層の様子を柱状図で表すと分かりやすいね。隣の柱状図と順番が似ているから、間もつながっているんだろうね。

結論

土地は礫、砂、泥、火山灰などからできており、層をつくって広がっている。このような層を「地層」と言う。

指導におけるポイント

調査官からのワンポイント・アドバイス

国立教育政策研究所教育課程調査官
鳴川 哲也

自然の事物· 現象に触れながら学ぶ

本単元の学習を行う際、可能な限り、子供たちが実際の地層を観察することが望ましいのですが、各学校の地域の実態によっては、直接地層を観察することが難しい場合も多いと思われます。

本展開例には、できるだけ子供が自然の事物· 現象に直接触れながら学習するための工夫が多く掲載されています。ボーリング資料は各学校にあるかもしれませんが、地域にある公共施設などに問い合わせれば貸してくださる場合もあります。地面の下の地層の広がりを考える際、学校のボーリング資料だけでは、広がりを考えることはできません。3 地点の資料があれば、地層の広がりを考えることができるでしょう。本展開例では、そのボーリング資料を基に、柱状図を立体的に示すといった例が掲載されています。空間的な見方を働かせながら、地層についての理解を深めることができますね。

また、土の粒の大きさを観察したり、五年生での「流れる水の働きと土地の変化」の学習と関連させながら学習を進めたりすることが掲載されています。このように、これまでの学習内容との関連を図りながら本単元の学習を進めることで、資質· 能力を育成することが大切です。

6年理科 土地のつくりと変化②

イラスト/山本郁子

『小六教育技術』2018年10月号より

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