「パフォーマンス評価」とは?【知っておきたい教育用語】

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【みんなの教育用語】教育分野の用語をわかりやすく解説!【毎週月曜更新】
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いま学校教育では、思考力・判断力・表現力の育成が従来にも増して重視されています。児童生徒の思考・判断のありようはペーパーテストでは測れません。表現活動などを通して評価する「パフォーマンス評価」が必要になります。

執筆/東京学芸大学准教授・梶井芳明

みんなの教育用語

パフォーマンス評価とは

学習におけるパフォーマンスとは、知識や技能を活用したり応用したりして学習課題に取り組む児童生徒の姿を指します。パフォーマンス評価とは、このような児童生徒の姿を評価することです。

2016年12月の中央教育審議会答申に、「資質・能力のバランスのとれた学習評価を行っていくためには、指導と評価の一体化を図る中で、論述やレポートの作成、発表、グループでの話合い、作品の制作等といった多様な活動に取り組ませるパフォーマンス評価などを取り入れ、ペーパーテストの結果にとどまらない、多面的・多角的な評価を行っていくことが必要である」とあります。

従来の評価の多くは、知識や技能の量を断片的に把握することに重点が置かれていました。多肢選択式問題や正誤問題、穴埋め問題などによる評価です。

一方、パフォーマンス評価は、知識や技能の質を総合的に把握することに重点が置かれます。そのパフォーマンス評価を実践するためには、児童生徒が知識や技能を総合して取り組むことが求められる学習課題、いわゆる「パフォーマンス課題」を開発する必要があります。

パフォーマンス課題とは

パフォーマンス課題とは、現実的な状況のなかで、児童生徒が様々な知識や技能を総合して取り組むことが求められる学習課題を指します。

例として、個別の知識や技能を確認することを主たる目的とした口頭発表や実技といった「実演」、知識や技能を総合的に活用する力を確認することを目的としたレポートや展示物といった「完成作品」などがあります。

パフォーマンス課題は、特定の課題、課題解決に必要となる知識・技能、成果物、評価の観点の、4つの要素で構成されます。なお、課題を設定する際には、その課題に取り組むにあたって想定される状況とともに、パフォーマンスの目的や学習者の役割を明確にする必要があります。

パフォーマンス課題で期待される「永続的理解」

1980年代後半、アメリカではトップダウンの教育政策や、量的評価に重点を置いた教育改革に対する批判が起こり、知識・技能を活用する力を評価することが求められました。そして、パフォーマンス評価を中心に据えたカリキュラム設計の方法が開発されました。

それは「生徒が細かい知識の大部分を忘れてしまった後も残ってほしいと教師が願う重大な観念、すなわち重要な理解(永続的理解)」を獲得させようとするものです。永続的理解を明確にするためには、「本質的な問い」を考えることが重要となります。

本質的な問いとは、問いに対する内容理解を促進したり、探究を促したりするような問いです。一問一答では答えることができないような形式の問いであり、断片的であった知識や技能を関連づけたり総合したりするのに役立ちます。

時間の経過とともに、学んだ内容の詳細を思い出すことができなくなったとしても、永続的理解があれば、その後の問いに対する理解や探究を助ける重要な役割を果たすことができます。

わが国の学校教育におけるパフォーマンス課題も、めざすところは同じです。

パフォーマンス評価の授業実践

パフォーマンス課題とその評価の具体例として、小学校6年生の国語科の学習単元「国連子ども会議の意見書」の授業実践を取り上げてみます。

課題は、「6年1組で、『国連子ども会議』を開くことになりました。あなたは『平和』について考え、自分たちにできることをみんなに呼びかけなければなりません。そのための説得力ある意見書を作り上げてください」というものです。

評価は、①関心を引きつける書き出しか、②具体例が詳しく分かりやすいか、③つなぎ言葉が適切に使われているか、④反論する意見が書かれているか、⑤結論が強く語られているか、⑥事実と意見が区別して書かれているか、の6つの観点で行います。

なお、6つの観点に基づくパフォーマンス評価に取り組む際には、ルーブリック(評価指針)を使用します。ルーブリックは、パフォーマンス課題に対する学習活動を通して学習者に育成したい資質・能力について「評価観点」を設定し、それぞれの観点に対応する学習の到達度として「評価基準」を定めて表を作成し、学習者の学びの姿を文章で表現していくものです。

以上の授業実践は、「説得力ある意見書を書くにはどうしたらよいか?」という「本質的な問い」を設定し、「『はじめ・中・おわり』の構成にし、その中に『書き出し』『意見の提示』『事例』『反論』『結論』の要素をどのように入れるか工夫する」「読み手や聞き手に語りかけてともに考えさせたり断定的な表現を利用して訴えかけたりするとよい」という「永続的理解」の獲得を目標としたパフォーマンス課題とパフォーマンス評価の一例です。

パフォーマンス評価に取り組むためには、良質なパフォーマンス課題を開発する必要があり、その際、「永続的な理解」を見据えた「本質的な問い」の設定が鍵になります。

▼参考文献
石井英真「アメリカにおける教育目標論の展開─パフォーマンス評価論による行動目標論の問い直し─」(『カリキュラム研究』第18号、2009年)
岸本実「パフォーマンス評価:パフォーマンス課題とそのつくりかた」(田中耕治編著『やわらかアカデミズム・〈わかる〉シリーズ よくわかる教育評価[第3版]』ミネルヴァ書房、2021年)
西岡加名恵編著『「逆向き設計」で確かな学力を保障する』明治図書出版、2008年
西岡加名恵編著『「資質・能力」を育てるパフォーマンス評価 アクティブ・ラーニングをどう充実させるか』明治図書出版、2016年
文部科学省(ウェブページ)「学習評価に関する資料」

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