多数決に代わる「どうしても制度」とは【あたらしい学校を創造する #4】

先進的なICT実践と自由進度学習で注目を集めた元・小金井市立前原小学校教諭の蓑手章吾(みのて・しょうご)先生による連載です。公立学校の教員を辞して、理想の小学校を自らの手でつくるべく取り組んでいる蓑手先生に、現在進行形での学校づくりの事例を伝えていただきます。

目次
「どうしても制度」とは
ヒロック初等部で取り入れたいことのひとつに、「どうしても制度」があります。これは、僕が前任校の公立小学校でやっていたことで、クラスの誰かが「どうしても!」って言えば、それを聞き入れてもらえる制度です。
例えば、クラスで水風船を投げあう水風船合戦をやりたいという意見が出たとします。ところが、Aさんが「水風船合戦には参加したい。でも、どうしても濡れるのは嫌だ」と主張した場合に、みんなはそれを受け入れ、Aさんは水風船を投げるけれども、Aさんに向けて水風船を投げないようにするのです。
この国では、物事を多数決で決めることが民主主義の原則だと考えられているようです。しかし、それは誤解です。多数決は集団の意思決定のひとつの方法にすぎません。
たしかに多数決は便利な方法ですが、強い人の意見がいつもまかりとおる危険や、マイノリティの意見が届きにくかったり、何となく総意に引きずられたりする欠陥があります。多数決のやり方ばかり経験していては、子供たちは、
「どうせ、自分の意見は尊重されない」
「話しあっても無駄だ」
と考えるようになります。
