子供たちの気持ちを学習に集中させる方法|沼田晶弘の「教えて、ぬまっち!」

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沼田晶弘の「教えて、ぬまっち!」
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国立大学法人東京学芸大学附属世田谷小学校教諭

沼田晶弘

自主性と集中力を最大限に引き出すユニークな授業が話題のカリスマ教師「ぬまっち」こと、沼田晶弘先生。今回は、 「子供たちが集中できないとき、学習に気持ちを集中させる方法はありますか?」という質問にアドバイス。 効果的な学習方法とグッズの活用アイデアを教えてもらいました。

ぬまっち連載
撮影/下重修

子供が夢中になる鉄板ネタをもつ

ボクの場合は、いつでも子供の集中力を最大限に引き出す「計算トレーニング=計トレ」という「鉄板技」がある。

計トレを始めたのは、ボクが二年生の担任だった時、九九を覚えさせるために、百ます計算ならぬ「81ます計算」を取り入れたことがきっかけ。
進め方は、縦9×横9マスでつくった用紙を用意し、1~9の数字を縦横1列目に順番に並べ、「よーいドン」の合図で81のますをかけ算で埋めていくというもの。計算の制限時間は2分。2分以内に全問正解した子にはU-2(Under 2minutes)の称号が与えられ、「U-2」と書かれたライセンスカードをもらうことができる。

ちなみに、一年生には足し算でやってみたけれど、通常なら眠たいはずの5時間目でもものすごく集中する。

どうしても子供たちを集中させたいときには、こうした「鉄板技」をもっておくのも手だよね。

ゲーム性やイベント性をもたせる

さらに、最初に並べる数字をランダムに並べ変えたり、一度U-2になっても、次の計トレでミスをしたり、2分を切れなければU-2の称号は剥奪されるという厳しいルールを設けたけれど、実は子供はこのように難易度を少しだけ上げたり、ちょっと厳しい制限があったりするほうが燃えるんだよね。また計トレ中はF1レースのテーマ曲をかけて盛り上げるなど、イベント性をもたせるようにした

すると、もはや計トレは勉強ではなく、ゲーム化してしまい、子供たちは休み時間もとりつかれたように自主的に計トレをするようになった。家に帰っても計算に熱中する子が続出して、保護者もびっくりするくらい。当然計算力は格段にアップしたよ。

普通ならイヤイヤ取り組む勉強も、ゲーム性やイベント性をもたせるように工夫することで、子供のやる気や集中力を引き出すことができる

学習を盛り上げるグッズを活用

ボクは、子供たちのやる気を引き出すグッズには、出し惜しみせず投資することにしている。

計算トレーニング「U-2」で、2秒以内に全問正解した子には、U-2資格を取得した証明として、「U-2 ライセンスカード」を作って渡していたことは前述したとおり。

そのほか、漢字テストで高得点を取った子には「KTK」、友達の自学自習をサポートする役の子には「SLA(セルフラーニングアドバイザー)」などのライセンスカードも作っていた。

ライセンスカードは机の上に貼るから、取得者は一目瞭然。当然みんなの羨望の的となる。ただし、ライセンスには期限があり、月末にすべて失効してしまうので、子供たちはまたライセンスカード取得を目指して夢中になって自主学習に励んでいたよ。

最近は、ボクの顔のイラストで作った「ぬまっちシール」や「マスキングテープ」が大人気。子供たちが粋なことをしたときに貼ってあげるようにしたのだけれど、思いのほか効果的でボクもびっくりしている。

ただし、こうしたカードやシールも続けていればそのうち飽きることもある。

だから、最初はこうしたグッズを活用してやる気や集中力を引き出し、その効果が持続している間に、プライドをさらに刺激して、「がんばってよかった」「またがんばりたい」という気持ちで心の中をいっぱいにしてあげることが大事。

グッズなどのご褒美は、あくまで外発的動機づけ。そこをきっかけに、自分の中からやる気がわいてくるような内発的動機付けへと変化させることが重要だと思っているよ。

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沼田晶弘先生
沼田晶弘先生

沼田晶弘(ぬまたあきひろ)●1975年東京都生まれ。国立大学法人東京学芸大学附属世田谷小学校教諭。東京学芸大学教育学部卒業後、アメリカ・インディアナ州立ボールステイト大学大学院にて修士課程を修了。2006年から現職。著書に『「変」なクラスが世界を変える』(中央公論新社)他。
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取材・構成・文/出浦文絵

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