小4国語「走れ」指導アイデア
教材名:「走れ」(東京書籍 四年上)
指導事項:〔知識・技能〕(1)オ(2)イ 〔思考力、判断力、表現力等〕C(1)イ、エ
執筆/香川県公立小学校教諭・高橋直美
編集委員/前・文部科学省教科調査官・菊池英慈、前・香川県公立小学校校長・川井文代
目次
単元で付けたい資質・能力
①身に付けたい資質・能力
本単元では、場面の移り変わりとともに描かれる登場人物の気持ちが、どのように変化しているのか、叙述を基に想像を広げて読む力を身に付けます。
また、登場人物の気持ちの変化を、周囲の人物の言動や関わりに着目して読むことで、複数の場面の描写を結び付け、中心となる人物の気持ちの変化とその理由を捉えながら読む力を育成していきます。
②言語活動とその特徴
本単元では、中心人物の気持ちの変化とその理由について語り合うという言語活動を設定します。「走れ」は、中心人物「のぶよ」の、母や弟、走ることといった複数に対する気持ちが、場面の移り変わりとともに変化していく物語です。
子供は、中心人物である、のぶよの行動や会話などの叙述から、気持ちの変化を捉えることで、のぶよの気持ちの変化が、のぶよの母や弟との相互関係に深く関わっていることに気付きます。
そして、のぶよの気持ちの変化について考えたことを友達どうしで伝え合うことで、多様な読み方があることが分かります。

単元の展開(10時間扱い)
主な学習活動
第一次(1・2時)
①②既習の物語の中心人物について話し合い、物語を読むうえで、登場人物の気持ちの変化を捉えることが大切であることに気付く。
→アイデア1 主体的な学び
【学習課題】物語を読んで、中心人物についての感想を伝え合おう
第二次(3~8時)
③「走れ」を読んで、各場面の出来事を確かめ、内容の大体をつかむ
④⑤⑥場面の展開に注意しながら人物の気持ちを読み取る。
⑦⑧中心人物の気持ちの変化について話し合う。
→アイデア2 深い学び
第三次(9~10時)
⑨⑩中心人物についての感想をまとめ、交流する。
→アイデア3 対話的な学び
アイデア1 人物の気持ちの変化を捉える学習に興味をもつ
単元のはじめに、既習の物語について心に残っていることを話し合いながら、物語には、中心人物の気持ちが大きく変わるものとそうではないものがあることに気付かせます。
そして、中心人物の気持ちが大きく変わる物語のなかでも、それが、一人の人物とのかかわりによって変わるものと複数の人物とのかかわりによって変わるものがあることを確認し、複数の気持ちが一人のなかにあることや、気持ちの変化を捉えながら読む学習に興味をもたせます。
今まで習った物語は、中心人物の気持ちは大きく変わりましたか。
「サラダで元気」のりっちゃんは、気持ちがあまり変わっていません。でも、「サーカスのライオン」のじんざや「モチモチの木」の豆太は大きく気持ちが変わっています。
「走れ」は、お母ちゃん、けんじ、走ることの三つがかかわります。
中心人物の気持ちの変化が、三つのことに関係している物語なんておもしろそう。どんなふうに関係しているのだろう。
アイデア2 中心人物の気持ちの変化について考える
第二次では、中心人物の気持ちの変化について話し合います。のぶよの気持ちをカードに、何に対してかというように分けて書き出していきます。カードの色を分けておくとよいでしょう。すると、のぶよの気持ちが、母や弟に対してだけでなく、走ることに対してもあることに気付くでしょう。
カードを時系列で貼っていくことで、走ることや家族に対しての気持ちが同時にあることを視覚的に捉えることができ、一つの言葉や文から、いくつかの対象への気持ちがあり、それが変化していくことが分かります。
▼のぶよの気持ちを書き出した表
それぞれに対する気持ちが変化していることが分かるね。
同時に三つのことに対する気持ちがあることが分かるね。
走り出したときののぶよには、お母ちゃんやけんじ、走ることについてのいろんな気持ちが体にからみついていたから、心も体も重く感じたのだね。
けんじやお母ちゃんに対する心配やさびしさが、二人の明るい声を聞いて、安心に変わったのだね。
アイデア3 中心人物について感想を交流する
中心人物の気持ちの変化について考えたことを友達と交流します。二次で、のぶよの母や弟、走ることに対しての気持ちを分けたものを統合します。どちらのパターンでも、中心人物の複数に対する気持ちをまとめ、物語を読む楽しさを味わわせます。
パターン①中心人物になりきって日記を書こう
のぶよの「運動会の一日」日記を、のぶよになりきって語らせます。
▼のぶよの日記「運動会の一日」
■のぶよの気持ちカードを参考にして、書きましょう。
■お母ちゃん、けんじ、走ること、それぞれに対する気持ちを入れながら書きましょう。
のぶよの気持ちカードを分けたから、のぶよの気持ちがよく分かったね。
出来事ごとに、分けたカードをまとめながら書くと、のぶよになったつもりで書けるね。
パターン②この物語を説明しよう
「走れ」のあらすじをまとめ、この物語の中心人物の気持ちが複数に分かれて変化していくお話であることを説明します。
▼「走れ」あらすじ
この物語は、のぶよの運動会の一日にあった出来事のお話です。運動会の日の朝、のぶよは、ゆううつな気持ちでいました。走るのが苦手なだけでなく、去年の運動会にいそがしいお母さんが、弟の短きょり走に間に合わなかったことを思い出してしまったからです。今年は間に合うのか不安になりました。
…走っていると中、二人のおうえんする声が聞こえると、のぶよは、それまであった心配や不安な気持ちがなくなっていき、体も軽くなってしまいました。ゴールした後も、どこまででも走り続けられる気がするくらいに、気持ちが変わってしまったのです。
▼「走れ」特徴
「サーカスのライオン」の中心人物、じんざの気持ちは、男の子に対してあり、変わっていくが、「走れ」は、中心人物のぶよの気持ちが、お母ちゃん、弟、走ることの三つに対してあり、それらがまざりながら変化していくお話です。
■あらすじをまとめよう。(三百字ていど)
■お母ちゃん、けんじ、走ることそれぞれに対する気持ちがあり、それが変化していくお話であることを説明しよう。
中心人物の気持ちがいくつかのものに対してあるお話だということを説明するのだね。
こんなお話って、ほかにもあるのかな。読んでみたいな。
イラスト/横井智美
『教育技術 小三小四』2020年6月号より