ぬまっち流 全学年で運用可能!子供の基礎学力をアップさせる実践例

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国立大学法人東京学芸大学附属世田谷小学校教諭

沼田晶弘

子供たちの自ら成長する力を引き出し、チャレンジする力を育てるカリスマ教師・沼田晶弘先生。 今回は「学年末に近づいたのに、クラスの学力差が縮まらず、学力の遅れが目立つ子供がいます。限られた時数の中で基礎学力を伸ばす実践方法がありますか?」という質問に答えてもらいました。

ぬまっち連載
撮影/下重修

問題は「学力差」ではなく、身に付けるべき力が身に付かないこと

まず同じ学級でも、学力差があることは「あたり前」だということを知っておこう。

もしそこに不安を感じているのであれば、「全員に同じ学力をつけることが本当によいことなのか?」と自分自身に問いかけてみよう。

問題なのは学力差があることではない。運動能力は差があってもしかたがないけれど、学力には差がでるのはよくないと思いがちだけど、どちらも同じ。大人でも、文章力のある人とない人の差は大きいよね。

だから、できる子とそうでない子の間に大きな差があっても別に問題はない。
問題なのは、差があることではなく、できるべきことができてないことだ。

たとえ学力差は縮まらなくても、その学年で身に付けるべき基礎学力はちゃんと全員に身に付けさせて進級させることは必要だ

基礎学力のベースである「計算力」「漢字」「作文力」を伸ばすには?

「学力」と言ってすべてを一括りにしてしまいがちだけれど、やはり基礎学力のベースとなる「計算力」と「漢字」、そして「作文力=書く力」はとくに重要だ。

そしてこの3つの力を身につけるには、 たくさんの勉強法、工夫はあるけれど、結局はある程度何度も取り組ませるしかない。逆の言い方をすれば、数をこなせば誰でも伸びる。
これは運動も同じだよね。足の速い子はやっぱりたくさん外で遊んで走っているし、足の遅い子は圧倒的に走る回数が少ない。

だから、どうやって計算や漢字、作文に取り組む回数を増やすのかがカギになる。つまり、そこに教師の創意工夫が求められるわけだよね。

計算力がグングン伸びる「計トレ」

算数の基礎学力を伸ばすなら、ボクのやっている「計算トレーニング(計トレ)」はかなりお薦めだ。

「計算トレーニング」とは、縦9列、横9列のマスを描いたプリントを使った、百ます計算ならぬ「81ます計算」。

ボクが縦と横の端のマスに入れる数字を黒板に書き、スタートの合図で子供たちは81のマスを掛け算で埋めていく。ポイントは、子供たちが面白そうだなと思うような「ミッション」と「ルール」を与えること。そしてミッションをクリアするために「守らなければならない条件」を与えること

例えば1分21秒という制限時間を設け、1分以内に全問正解したら「U-1」というカードがもらえるルールを設けた。そして、ミスをすると20秒のペナルティが与えられ、次の計トレで1分21秒以上かかったり、計算ミスをするとカードは失効する。こうした制限を設けると子供は燃えてくるので、夢中で練習するようになる。

制限時間はクラス実態に合わせて変えてもよいだろう。1年生の場合はかけ算ではなく、たし算や引き算で取り組める。

「高学年では九九なんてやる意味がない」と思われるかもしれないけれど、くり返しやらせてみると、計算ミスが激減するし、計算力だけでなく、瞬発力や集中力もアップするので全学年で効果があると思っている。

しかも、計算スピードが上がると計算が早く終わるから、なんとなく自分が賢くなった気持ちになるんだよね。子供は自分が賢くなったような気持ちになると、自信がついて、他のこともがんばるようになる。一点突破することで、どんどんやる気が出てくるという効果もあるんだ。

漢字と作文の指導は、ネーミングとゲーム性がポイント

漢字の力を身に付けるための工夫の一つが、「漢字テスト強化プロジェクト」。略して「KTK」。
クラスの中から漢字テストの結果がよい子をKTKメンバーとして選抜し、KTKメンバーカードを発行。クラスの漢字力をアップさせるプロジェクトをそのメンバーに任せるというもの。子供たちは自分たちで模擬試験をつくるなど、さまざまな工夫を凝らすようになる。他の子供たちもKTKメンバーに入りたくて漢字を必死で練習する。漢字など、面倒な学習こそ、ネーミングを工夫したり、ゲーム感覚でできる学習法を考えたりすることが大事だ。

作文力については、ボクのクラスではたくさん文章を書かせるために、毎日、日記を書かせている。日記を書かせるメリットについてはぜひこちらの記事を参考にしてもらいたい。
日記といえども、毎日1ページ書いてくる子供の書く力の伸びようは半端ないよね。もちろん2行しか書かない子もいるし、その子は大きくは伸びないけれど、毎日書いているうちにやっぱり文章力は上達する。

さらに作文については、以前紹介した「インパクトライティング」のような方法も、「書きたい」という意欲が伸びるし、「作文の書き方」が自然に身に付くのでお薦めだ。

また、ボクが記者会見を開き、子供たちに取材をさせて記事を書かせるという実践もやっていたことがある。子供たちが記者になったつもりで教師にいろいろな質問を投げかけ、取材をして記事を書く。これは子供にとってすごく楽しい活動なので、喜んで書くようになる。以前のクラスでは毎週月曜日は「定例記者会見」を開いて記事を書かせていた。だから、毎週月曜日は200字作文を書いていたということになる。当然みんな書く力は上達するよね。

「キャンペーン効果」で子供のやる気に火をつける

しかし、三学期は忙しいし、限られた時数の中ではできることも限られるのも事実。

先生たちが「学校の中だけでどうにかしよう」と思っても難しいだろう。だから授業以外のところで、子供が自分から努力したくなるようなしかけが必要だ。

例えば、「今ががんばり時!」と思わせるために「キャンペーン」を張るのもよいだろう。

ボクは時々、期間限定で「字をていねいに書こうキャンペーン」とか「計トレを全員で1分21秒を切るキャンペーン」をする。そして、「ラスト●日だぞ!」「来週テストするよ」などと気持ちをあおる声かけを何度もして、プライドをくすぐりながら奮い立たせる。子供たちは「期間限定」だとちょっとしたお祭りモードになって頑張れるんだ。
「こんなアプリが役立つよ」など、子供がやりたくなるような教材を教えておくと、自宅で取り組む子も出てくる。各家庭の協力が得やすくなるので、保護者にもキャンペーンのお知らせをしておくとよいだろう。
三学期は「ラストスパート」という言葉を使いやすいので、キャンペーンには最適な時期だと思う。
ただし、キャンペーン期間は長くても2週間が限界。期間の長いキャンペーンは飽きられるので、1週間程度で短く、回数を多くやるほうがいい

「好きなこと」「得意なこと」をつくることも大事

小学校では、基礎学力をまんべんなく身に付けさせることに注力しがちだけれど、本当は、「自分はこれが得意だ」「これが好きだ」と思えることを、1つでもよいから作ってあげることが大切だと思っている。

好きなことなら、学校以外の場所でもやりたくなるよね。

小学校レベルの学習では、最終的には「好きこそものの上手なれ」だから、きっと短期間でも力を伸ばすことができるだろう。

そして何かが得意になると、他の勉強も楽しくなったり、別の何かも一生懸命やるようになる。

だから、長い目で考えると、クラスの中の学力の差を気にするよりも、一人ひとりの個性に注目してあげることのほうが大事だと思うよ。

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沼田晶弘先生
沼田晶弘先生

沼田晶弘(ぬまたあきひろ)●1975年東京都生まれ。国立大学法人東京学芸大学附属世田谷小学校教諭。東京学芸大学教育学部卒業後、アメリカ・インディアナ州立ボールステイト大学大学院にて修士課程を修了。2006年から現職。著書に『「変」なクラスが世界を変える』(中央公論新社)他。
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取材・構成・文/出浦文絵

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