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メディアでも話題! ぬまっち先生の高学年学級開き

2019/3/20

子どもたちの自主性・自立性を引き出す、斬新でユニークな授業がテレビや雑誌で話題の「ぬまっち」こと、沼田晶弘先生。子どもたちの自ら成長する力を引き出し、チャレンジする力を育てる、ぬまっち流の型破りな学級開きとは・・・? 

「これからご紹介する内容は、全てやろうと思うと苦しくなってしまうかもしれません。何か一つでも取り入れてみようという気持ちで、取り組んでみてくださいね」(沼田先生)


授業は子どもと同じ目線になるように座りながら行う。撮影/下重修

「世界一のクラス」を目指すメンバーとの顔合わせ

≪1日目/おすすめミッション1≫全員の写真を撮影せよ

新学年の初日には、必ず一人ひとりの写真を撮ります。教室で子どもたちと顔を合わせてすぐに、あえてニコニコせずぶっきらぼうに言います。
「みんなの顔と名前を覚えたいから、全員の写真を撮るよ」
子どもたちは、新しい教室、新しい友達、そして、見た目の怖そうな担任を前にとまどいますが、その緊張した表情のまま写真を撮ります。これは、クラスがスタートした瞬間=子どもたちが出発点に立ったその瞬間の表情を、記録として残すためです。今後、徐々にクラスに慣れ、友達が増え、たくさんのイベントを一緒に体験していくことで大きく成長していきます。

02_写真撮影
一年後の子どもたちの成長や変化は、初日に撮影した写真と比べてみると一目瞭然

≪1日目/おすすめミッション2≫担任の自己紹介と目標を伝えよ

次に担任の自己紹介をします。比較的短く簡単に、名前とクラスの目標を伝えるだけです。
「はじめまして。沼田晶弘と言います。このクラスで目指したいことは、1つは世界一楽しいクラスにすること。もう1つは何でも自分でできる人になってもらうこと、です」

なぜ「世界一のクラス」を目指すのか、それは、いつか子どもたちが大人になって小学校時代を思い出したとき、「あのクラスは一番楽しかったな」「あの時、みんなであんなすごいことやり遂げた」と感じられる自信をつけさせたいからです。だから、子どもたちにも考えさせます。
「世界一のクラスってなんだろうね? 世界一楽しいって、簡単に比べられないよね。世界一かどうかが証明されるのは、君たちが大人になった時だ。大人になって、小学校時代こうだったよねってお互いに話した時に、相手のクラスもいいけど、自分たちのクラスも負けてないと思える。そしてずっと負けなければ世界一ってことじゃない?」
「世界一」という言葉は、目標として抽象的に思われるかもしれません。でも、子どもたちが「自分たちのクラスは世界一だ」と思うことが大切なんです。また、世界一という言葉は万能です。クラスが少し緩みがちなときには、「ほら、これで世界一って言える?」「そんな状態なら、世界一返上しようぜ」などと言ってハッパをかけます。そうすると、子どもたちはもう少し頑張ってみようという気持ちになるのです。「世界一」という、少し曖昧なようで、とんでもなく大きな目標だからこそベストなのです。

もう1つ、「なんでも自分でできる人」を目指すのは、子どもたちの自主性を伸ばしたいからです。どんなときも自分で考え、自分から取り組んでいくクラスだよ、ということを最初から伝えておくのです。

≪1日目/おすすめミッション3≫子どもたちの自己紹介で緊張をほぐせ

担任の次は全員に自己紹介してもらいます。子どもの話にツッコミを入れながら、気持ちをほぐしていきます。例えば、「サッカー好きです」と言ったら、「サッカーは何が好きなの? ボール?」とちょっとボケたり、「プレーするのが好き」と答えたら、「どんなプレースタイルが好きなの?」と突っ込んだりします。「お菓子が好きです」という子がいたら「何のお菓子? あれ旨いよね。あの店行ったことある? みんなは?」と全員に聞いたりもします。
自分のことを上手に話せる子もいますが、話すのが苦手な子には、できるだけイエス・ノーで答えらえるような質問をします。そうやって、その子ならではのネタを拾い、笑わせながら緊張をほぐし、心の距離を縮めていきます。
初めはちょっと怖そうだったけど、話してみるとなんか面白そうな先生だぞ。本音で話せそうな先生だな、と思わせる。そして、この教室では「何を言っても大丈夫」という雰囲気をつくることが狙いです。

子どもがやる気になる作戦を立て、信じて任せれば、子どもは勝手に伸びる!

≪2日目以降/おすすめミッション1≫叱るポイントを伝え、ホウ・レン・ソウの約束をせよ

2日目には、大きな方針を伝えます。「僕が本当に叱るのは、危険なことをした時と嘘をついた時です」さらに、「嘘をつかない」という約束には、「ホウ(報告)・レン(連絡)・ソウ(相談)」をしっかり守るように付け加えます。「担任に平気で嘘をついたり、隠し事をしたり、その日あったことを話さないなら、教師として君たちを守ってあげられないよ。目標である、世界一のクラスはつくることもできないよ」と、きちんと理由も伝えます。

≪2日目以降/おすすめミッション2≫初回の授業はなぜ学ぶのか考えさせよ

授業の1時間目は、「そもそも、なぜ勉強するの?」という問いかけから始めます。子どもたちから「将来の役に立つ」「勉強しないと大人になったら困る」などと意見が出たら、それらの意見に反論していきます。「大人じゃないのになんでわかるの」「プロスポーツ選手など、勉強以外で稼いでいる人もいるぞ」そんな話をしながら考えさせます。医者や弁護士を目指している子どもは、勉強をして資格を取らないとその職業に就けないことを知っているので、勉強する理由を持っています。しかし大抵の子どもは、家庭で「勉強しないと将来困るぞ」などと言われているだけで、勉強する理由を考えたこともないのです。
最終的に僕からは、福沢諭吉が『学問のすゝめ』で、学問の重要性を説いたことを話します。要するに、人はみんな生まれたときは同じ人間で大きな差はないはずなのに、仕事や身分や収入に差が出てしまう。その違いは何かというと、学んだか、学ばないかの違いであると言っている。そんな話をしながら、子どもたちに再度問いかけます。
「みんなはどうする? 勉強したかしないかで人生が分かれるんだって。だったら勉強した方が得じゃない?」
このようなやりとりで、何事も「そもそも、なぜ?」と考えることに慣れさせます。

≪2日目以降/おすすめミッション3≫自分から学び、意欲的に取り組める課題を与えよ

漢字練習や調べもの学習など、子どもは面倒なことが嫌いです。僕は、どうしたら子どもたちの学習意欲が上がるのか、勉強が楽しくなるのかを常に考えています。そして思いついたのが、ゲーム感覚でできる学習法です。

漢字テスト強化プロジェクト

03_漢字テスト
漢字テストは黒板にひらがな文章で出題

僕のクラスでは、日頃から漢字テストをし、「漢字テスト強化プロジェクト」を立ち上げました。略して「KTK」。漢字テストの結果がよい子をKTKメンバーとして選抜し、KTKメンバーカードを発行し、プロジェクトを任せてみました。メンバーは、自分なりに考え、予想問題や模擬試験をするようになりました。正式な漢字テストも、メンバーが丸付けをします。もちろん最終チェックは担任が行います。しばらく続けると、漢字テストの平均点が上がります。そして、メンバー希望者が増えます。でも、KTKメンバーになるには、選抜試験で上位8位に入らなければいけません。すると、みんなが猛烈に漢字の勉強を始めるのです。ちなみに僕の漢字テストは、文章をひらがなで黒板に書き、習った漢字はすべて漢字で書くというものです。だから試験範囲は、小学校に入ってからこれまで学んだことすべて。これは、実社会で漢字を使えるようになるために行っています。

04_SLAカード
SLAのライセンスカードは自分の机に貼っている

「OK!Google?」の先へ!

今は、どんなことでもGoogleで調べられる時代です。だからこそ、何でも調べたくなる意欲と、調べたことを生かす力を身につけさせたいと思い、子どもたちにはいつも「OK!Google?の先へ」と言い聞かせています。
その一環として「SLA(セルフラーニングアドバイザー)」というライセンスカードを発行。何かについて自分で調べ、自分の意見を足して提出するという課題を週に3回以上続け、その内容を僕が認めるとライセンスを発行します。しかし、このライセンスは一か月で失効します。すると、子どもたちはSLAカードが欲しいので毎日提出します。そして次第に調べること自体が楽しくなり、「なぜ日本と台湾は国交がないのに行き来できるのか」といった、ハイレベルなテーマも増えていきます。漢字同様、子どもたちは自宅でも夢中で取り組むので、保護者から「勉強しなさい」と言われるよりも、「もうやめて寝なさい」と言われることが多くなるようです。

≪2日目以降/おすすめミッション4≫掃除は自主性に任せ、楽しむべし

2日目以降、掃除の説明をする際に、「僕は教室の掃除はしません」と宣言します。「掃除はみんなの仕事です。後でこっそり僕がきれいにすることは絶対にないので、もし、教室がきれいで他の先生にほめられたら全部君たちのおかげ。もし汚くて叱られたら君たちの責任です」そのうえで、効率的な掃除の仕方を具体的に説明します。「これから音楽を3曲流すよ。音楽が終わるまでに、掃除を終わらせること。全部で10分程度。時間内で終わらせるために、無駄な動きや時間をつくらないよう自分で考えて動こう」と伝えます

05_掃除ダンス
曲のサビが流れると一斉に踊り出す子どもたち

音楽を使う理由は、何と言っても楽しいことと、曲の進行具合で残り時間が把握しやすく、あとどれくらい作業スピードを上げる必要があるのか判断しやすいからです。僕のクラスでは、音楽が鳴りだすとみんなてきぱきと進めますが、サビの部分になるとみんなで一斉に踊りだします。そしてサビが終わるとさっと作業に戻ります。最後は、全員で手拍子して終了。このダンシング掃除は、テレビなどでも取り上げられ、保護者からも大好評です。
また、ほうき担当、ぞうきん担当など、担当を決めないことも特徴です。周囲の動きを見て、自分のやるべきことを主体的に考える人になってほしいので、あえて係は決めません。すると、リーダーシップのある子が指示を出したり、磨くことが好きな子は黒板をピカピカにしたりします。自分の得意分野を発揮させることも、やる気にさせるしかけです。

沼田晶弘:1975年東京都生まれ。国立大学法人東京学芸大学付属世田谷小学校教諭。東京学芸大学教育学部卒業、アメリカ・インディアナ州立ボールステイト大学大学院にて修士課程を修了。2006 年から現職。著書に『「やる気」を引き出す黄金ルール』(幻冬舎)他。

『小五教育技術』2018年4月号より

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