言葉に敏感になり楽しく挑める作文の指導【ぬまっち流】

国立大学法人東京学芸大学附属世田谷小学校教諭

沼田晶弘

斬新な授業で、子どものやる気をグングン引き出すカリスマ教師「ぬまっち」こと、沼田晶弘先生が、低学年の自主性を育む実践を紹介します。今回は「作文マイスター」を育てるその指導方法を伝授してくれます。

小学1年生の国語授業風景
撮影/浅原孝子

魅力的な文章を目指す「作文マイスター」

作文に対して苦手意識を持っている子どもは多いものです。書くことが楽しいと、どんどん書きたくなり上達します。しかし、高学年になっても作文が苦手だと、書くこと自体が億劫になります。では低学年のうちに、どのような指導をすればよいのでしょうか? 

作文指導というと、テーマと原稿用紙の使い方だけを伝えて、子どもに自由に書かせることが多いのではないでしょうか。この方法では、子どもは読み手を意識することなく、思いついたことやあったことを時系列にそって羅列するだけになってしまいます。しかも、文末はすべて「楽しかった」「がんばった」とワンパターンになってしまうことでしょう。

ボクは常に子どもたちに「話すときは、聞く人が興味をもつような話をしよう」と伝えています。作文でも同様に、「読んだ人が最後まで読みたいと思うような作文を書かせる」ことを目標に指導します。授業の名前はズバリ「作文マイスター」です。

「インパクトライティング」3つのポイント

まず、よい作文には、読み手を惹き付ける「インパクト」があります。そこで、「作文を書こう」ではなく、「インパクトライティングやるよ!」と、子どもたちがワクワクするような声かけをしながら、読み手の印象に残る作文の書き方を教えていきます。具体的には、次の3つのことを意識させています。

①インパクトスタート

相手の心をキャッチするためには、インパクトのある「冒頭」が大事です。自分の気持ちや、一番伝えたいことを、強烈な言葉や印象的な表現で、冒頭の一行目に書くように伝えます。

例えば、連休にあったことがテーマの場合、家族で遊園地に行った子なら、「おねえさんとジェットコースターに乗りました。たのしかったです」といった文になりがちです。そうではなく、一番印象に残ったことを強い言葉で冒頭に表現させるのです。すると

「そこは天国だった」

「ドキドキ、ドキドキ・・・。こわい! そしてぼくは風になった」

など、子どもたちはそれぞれの表現を考えるようになります。それだけでもう個性的なインパクトスタート完成です。

②クリアストーリー

冒頭で表現した印象的なフレーズを説明してクリアにする部分です。ここでは、できるだけ短い文でテンポよく事実や状況を書くように伝えます。時系列でその日あったことを全部書かせて説明させようとすると、子どもは疲れて書くのが嫌になるからです。

③ドラマティックフィナーレ

最後は、気持ちを強く表現するような言葉で思い切り盛り上げます。事実は事実として、やや大げさに書いてOKとしています。

読み手の印象に残る文章のコツを指導

板書の3つのポイント
板書の3つのポイント
(クリックすると別ウィンドウで開きます)

実際に作文を書く授業では、「インパクトスタート」「クリアストーリー」「ドラマティックフィナーレ」という「インパクトライティング」の3つのポイントを解説します。原稿用紙の使い方のルールも確認します。

「NGワード」と「ルパンタイム」を設定し、豊かな表現を蓄積

インパクトスタートとNGワードの例

板書のNGワード
NGワードの板書例
(クリックすると別ウィンドウで開きます)

実際に書かせるとき、前述した3つを意識させるとともに、より豊かな表現を身に付けさせるために、「NGワード」を設定します。

例えば、「うれしかった」「楽しかった」「がんばる」など、作文のテーマに合わせて、子どもたちが最も思いつきそうな言葉を封じるのです。子どもたちは初めブツブツ文句を言ったりしますが、次第に面白がって、自分たちからNGワードを提案するようになります。子どもは「制限をかけられるとかえってやりたくなる」という性質があるのです。

「かきごおりをたべた」という事実から、どのような「インパクトスタート」が考えられるか意見を出させました。「たのしい」「おいしい」など、子どもが使いそうな言葉をNGワードに設定して封印することで、さまざまな表現方法を連想するようになりました。

文章表現を盗む 「ルパンタイム」で苦手な子を支援

しかし、表現が苦手で語彙の少ない子にとって、NGワードを使わないで書くことは至難の業です。そこで、ある程度書かせたら、途中で「ルパンタイム!」と声をかけます。

ルパンタイムは、友達の作文から、自分の作文に使えそうな文章表現を盗む(真似をする)時間。お互いの作文を読み合い、気に入った表現をお手本にして、自分の作文に付け加えるのです。真似ることは学ぶこと。インパクトのある文章を目指して、友達の作文を読み合いながら、新しい表現を自分の中に蓄積し、作文力はどんどん上達していきます。

取材・文・撮影/出浦文絵

沼田晶弘先生 撮影/下重修
沼田晶弘先生 撮影/下重修

沼田晶弘先生
1975年東京生まれ。国立大学法人東京学芸大学附属世田谷小学校教諭。東京学芸大学教育学部卒業後、アメリカ・インディアナ州立ボールステイト大学大学院にて修士課程を修了。2006年から現職。著書に、『家でできる「自信が持てる子」の育て方』(あさ出版)等がある。

『教育技術 小一小二』2019年11月号より

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