コロナ禍で行事が中止続きの六年生、どう声かけしたらいい?|沼田晶弘の「教えて、ぬまっち!」

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国立大学法人東京学芸大学附属世田谷小学校教諭

沼田晶弘

独特の実践で子供のやる気を伸ばすカリスマ教師、沼田晶弘先生。 今回は、「修学旅行や課外活動など、楽しみにしていた行事が中止になってしまった六年生。小学生最後の年、卒業までの期間、どのように声をかけ、何をしてあげればよいでしょうか?」という先生の質問に、アドバイスをいただきました。

撮影/下重修

「思い出深い、特別な一年になる」と、くり返し伝えよう

確かに、2020年度は、修学旅行や学芸会、運動会など、学校行事が中止になってしまった学校も多いだろう。六年生にとっては、最後の年に、楽しみにしていた行事がなくなるなんて想定外だし、つらい思いをしている子供もいるだろう。

ボクは昨年度五年生の担任だったので、昨年受け持った六年生がたまに教室に遊びにくる。だから六年生の話を聞く機会も多いし、子供たちに同情したくなる気持ちもわかる。

でもボクは六年生に対して、「楽しみにしていた行事がなくなるって悲しいよね。でもきっと今年の1年間は将来、どの学年よりも思い出に残るはずだよ」と伝えている。経験できなかったこともあるけれど、分散登校したり、自宅で担任とオンラインでつながったり、6年間で一度も経験したことがないことを経験できたことも確かだからだ。

そして「思い出深い特別な年だからこそ、そこでできる最小限のこともすごく楽しいんじゃないかな」「『行事が縮小されて残念 』 ではなく、特別な行事になったと考えてみたら? ありきたりの行事に参加するよりも、普通と違う、制限がかかった中でやる行事だからこそ、面白いことを発見できるチャンスなんじゃない?」などという話もした。

これはボクの性格でもあるけれど、いろんなことができなくなったこと自体はつらいけど、逆にその中でできることは何か、自分なりに模索することで、有意義な時間に変換できると思っているんだ。

この一年間、自分がどう過ごしたのか、語れる子供に育てる

例えば、2020年に生まれた子供は、本当は「東京オリンピックの年に生まれた子」って言われるはずだったのに、「新型コロナウイルスが流行した年に生まれた子」って言われてしまうかもしれない。

でも、4年ごとに定期的に行われるオリンピックよりも、突然全世界を巻き込んだコロナの方が有名だし、人々に与える印象や共感度が強くなるという考え方もできるよね。

オリンピックならば、恐らく中には興味がないという人もいるだろうけれど、コロナは世界中の誰もが自分事として捉えているだろうし、全く関係がないという人はいないだろう。

この先何年経っても、2020年は世界中のみんなにとって忘れることのない年になると思う。だからこそ、その年に何をしたのか、自分はどんな状況だったのかということを語れるようになっているとよいよね。

六年生に限らず子供たちに、教師として、今年度大変だったことや、つらかったこと、よかったことや新しく発見したことなど、見たものや聞いたこと、一つ一つの経験がこの先の人生にとって、意味のあるものにしてあげたいなと思う。

「できない」ことはマイナスじゃない。新しいことを見つけるチャンス

「できない」ことはマイナスだと思っている人が多いけれど、ボクは「できない」からこそ見つかることはいっぱいあると思っている。ある程度制限がかかってる方が、新しいことが生まれる可能性も高いと信じているんだ。

授業もライブが一番だと思っていたけれど、今年度、ライブでの授業ができなくなり、オンライン授業にトライしたことで、ライブ以外の新たな武器を手に入れたなと思っている。

また、ボクは沖縄の人と仕事をすることが多い関係で、2年前くらいからオンライン飲み会をすでにやっていたんだけど、今年はオンライン会議が一般的に広がったおかげで、より多くの人とオンライン飲み会ができるようになった。これまでハードルが高いと思っていたオンラインサロンも身近なものになったし、なかなか会えない人とも、つながりやすくなったのはうれしいよね。

もちろん嫌なことや、思うようにならないことはいっぱいあるだろう。でも、できなかったこと悔やんでもしかたがない。「クラブが2回しかできない」と子供ががっかりしていたら、「コロナでも、クラブが2回もできたね」と前向きに捉え直してあげよう。子供ががっかりしていたら、同じモードで暗くなるのではなく、「じゃあ、卒業までの期間に、何か新しいことを探していこうよ」と楽しいことを考えられるように促してあげるべきだと思う。

まずは先生自身が、「いまできることを探して、その中でなにか新しいこと、子供たちの心に残ることをやってみよう」と気持ちを切り替えることが大事なんじゃないかな。

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沼田晶弘先生
沼田晶弘先生

沼田晶弘(ぬまたあきひろ)●1975年東京都生まれ。国立大学法人東京学芸大学附属世田谷小学校教諭。東京学芸大学教育学部卒業後、アメリカ・インディアナ州立ボールステイト大学大学院にて修士課程を修了。2006年から現職。著書に『「変」なクラスが世界を変える』(中央公論新社)他。
沼田先生のオンラインサロンはこちら>> https://lounge.dmm.com/detail/2955/

取材・構成・文/出浦文絵

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