子供との信頼関係を感じた実りある10月【令和2年度新任教師のリアル】
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これは、2020年4月に小学校の先生の道を歩き始めた、小学校教諭・優花と美咲(仮名)の対談連載です。 ともに1997年生まれ、学生時代から仲がよい2人が、10月後半の日々を語り合います。2人とも感じたのは「子供との信頼関係の構築」。いったいどんなことがあったのでしょうか。

●優花(ゆうか)……東京都出身。大学時代は道徳教育の研究に力を注ぐ。某県の教員採用試験に合格し、現在公立小学校3年生の担任。
●美咲(みさき)…… 東京都出身。楽器の演奏、運動や体操が好き。学芸会や運動会など大きな行事の運営を研究。私立小学校2年生の担任。
目次
「全部自分でやらなくていい」学級経営のコツ
―― 先生になって、半年が経過しました。変化を感じたことはなんでしょうか。
優花・ 授業のテンポ、生活のリズムが整ってきて、学級経営が安定してきたことを感じます。
美咲・ それは私もある。子供たちとの間に“暗黙の了解”事項が増えた気がする。
優花・ ある! 一人ひとりの性格がわかってきて、「この子はこう言われると、やる気になる」など、声掛けひとつにも変化があった。私の意図と心の両方が伝わっていると思うことも多いよ。
美咲・ 私はいろんなことを子供に任せるようになったよ。
優花・ え、それは何?
美咲・ 一番多いのは、「あの先生にこの教材を持って行ってください」というお使い。あとは、提出物やノートを出席番号順に並べることなどかな。これらを子供たちにやってもらうとすごく楽。
優花・ それはいいね! 私も子供たちに頼んでみよう。
美咲・ その子の意外な性格……というか性分のようなものがわかるよ。いつもはふざけがちな子が正確に几帳面にやり遂げたり、いつもはきちんとしている子が、適当に作業しているとかね。
あ、そうそう、途中まで作業していたのに、放り出して遊びに行っちゃう子もいるかな。でも、その子なりのいいところがある。この“先生のお使い”を通じて、保護者に褒めるポイントも見つかるよ。
優花・ 今年はコロナ対策で、子供のことを深く知る時間がないから、作業を通じて子供のことを知り、先生の時間もできて一石二鳥だね。
美咲・ 一石三鳥なのよ。なぜなら、子供たちって何かを頼まれたり任されたりすると、すごく喜んでくれるから。誰かの役に立てたという実感は、成長につながっていくと思う。
状況を把握せず、とっさに叱ってしまって…
優花・ お使いを通じて、子供との信頼関係もできるよね。あ、そうそう。私自身は反省することがあったな。1週間くらい前に、私のクラスの活発な男の子(A君)を叱ってしまったの 。
美咲・ 私なんて、毎日叱っているよ。
優花・ 「静かにしましょう!」などの注意ではないのよ。私のクラスに、会話のテンポがゆっくりしている女の子(Bさん)がいるのね。音楽の教室の移動の時に、BさんがA君に話しかけたときに、A君が無視したの。
美咲・ 男の子って会話に時間をかけたがらないからね。
優花・ 私は「A君! 無視しちゃダメだよ」ととっさに叱ってしまったの。でも、後でBさんが「先生、あのとき、A君は別の子から話しかけられていたんだよ。私のことを無視したんじゃないよ」って事情を説明しに来たの。
美咲・ 余裕がないと、一瞬の光景を切り取って判断してしまう。でも、友達を無視する行為は、いじめの発端にもなるから、優花ちゃんがとっさに叱るのもわかるよ。それでどうしたの?
優花・ A君に「さっきは勘違いしてごめんなさい。先生が間違っていたよ」と謝ったら、「いいよ」って。
美咲・ あ~、よかったね。人を許すのも学びのひとつだと思うよ。
優花・ うん。すぐに謝れてよかったよ。でもね、このA君のお母さんというのが、何かあるとすぐに学校に電話をかけてくる方なのよ。私はその日、「かなり強く叱ったから、また電話をいただくな……」とソワソワしながら放課後を過ごしていたの。
美咲・ そういうことがあると、9月までは“ビクビク”していたけれど、10月あたりから“ソワソワ”程度になったよね。
優花・ そうだね(笑)。でも、その日はA君のお母さんからは電話がかかってこなかった。以前なら絶対にかかってきたと思う。それで、これは私のことを信頼してくれているんだと思ったんだよね。
美咲・ 日々の生活で、お互いの人となりがわかり、保護者会などで会っている。相手の顔が見えているから、一方的に強い言葉を言われることは減ったと、私も感じるよ。
優花・ まあこれは、私の大きな学びになったよ。早とちり、早合点はいけない。あとは余裕をもつことが大切だね。