子供たちを“評価”する難しさに直面【令和2年度新任教師のリアル】

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これは、2020年4月に小学校の先生の道を歩き始めた、小学校教諭・優花と美咲(仮名)の対談連載です。ともに1997年生まれ、学生時代から仲がよい2人が、毎月の出来事を振り返ります。12月のテーマは「成績をつけること」。最も長い2学期は、子供たちの成長に大きな差が出る期間です。2人はどのように締めくくったのでしょうか。

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写真AC

●優花(ゆうか)……東京都出身。大学時代は道徳教育の研究に力を注ぐ。某県の教員採用試験に合格し、現在公立小学校3年生の担任。

●美咲(みさき)…… 東京都出身。楽器の演奏、運動や体操が好き。学芸会や運動会など大きな行事の運営を研究。私立小学校2年生の担任。

クラスを支える中間層の子どもたちへの評価が…

―― 2学期が終わりました。まずは成績表について伺いたいと思います。1学期はコロナ禍による休校で、正式な成績をつけられなかったと伺いました。

優花・ はい。今回初めて、正式に成績表をつけました。今年から評価の仕方が変わり、“知識・思考・意欲”の3観点からになりました。周囲の先生方は、「観点が変わると難しい」とおっしゃっていましたが、私はそれしか知らないので…というか、右も左もわからないので、指針通りに成績をつけました。成績処理はかなり早めに終わらせていたので、12月は比較的余裕があったかもしれません。

美咲・ 私はけっこう大変でした。というのも、私立なので、独自の基準で評価するんです。

優花・ へえ、どうやってやるの?

美咲・ 公立は教科の中でも、思考や知識なども評価して、“A・B・C”とか“1・2・3”とかつけるじゃない? 私の学校は、教科ごとの評価しかつけず、所見欄に重きを置いているんだよね。長所と短所だけでなく、その子がどんな取り組みをしたかなども書く。

優花・ それはけっこう大変だと思う。私もやってみて、文章にすることは難しいと思ったよ。言葉(発言)で伝えるのとは全然違う。

美咲・ そうなの。私もその子にとって“いいこと”を書きたい。なんでも積極的に取り組んだり、他者に対して思いやりがある子供の成績はスラスラと書ける。でも、そうではない子は倍以上の時間がかかった。

優花・ 一事が万事ではないけれど、ほめにくい子は、なかなか大変だよね。

美咲・ 私個人としては、その子のよさはたくさんあると思うけれど、成績をつけるというのは、“学校”と“教育”というフィルターを通さなければならない。だから、難しい。

優花・ 所見欄は私も手こずった。無理にほめるところを探すのも、違うしね。いわゆる優等生や、勉強ができない子、協調性がない子の所見欄はすぐに書けた。でも、クラスの半分近くいる、中間層の子供たちが何をしているのか、どんなことに取り組んでいるかが、けっこう頭から抜け落ちてしまっていたんだよね。

美咲・ そうだよね。クラスを支えてくれている子供たちって、手がかからないから、細かいところまで見ていない。トラブルも起こさなければ、リーダーシップを取って何かをすることもないから。

優花・ 3学期は、今回のことを踏まえて、その子の個性に目を向けようと。これが私の大きな学びになったな。

先生はチームで仕事をしていると感じた2学期

―― 2学期を振り返って、心に残っていることがあれば、お願いします。

美咲・ 毎日が事件(笑)。

優花・ ほんとにね。私は学校の先生はチームなんだな……と改めて思ったことが大きかったかな。

美咲・ 何があったの?

優花・ 私のクラスには、2つの女子グループがあるの。1つは勉強ができて利発なA奈さんグループ、もう一つはカリスマ性があっておしゃれなB美さんグループ。ここが10月にちょっと対立したんだよね。その結果、Aグループのサブリーダー的立ち位置のC子さんが、悪口を “言った・言わない”問題に巻き込まれてしまった。その結果、クラスで孤立するかしないかのところまで追い込まれてしまったの。

美咲・ 3年生くらいになると、大人も顔負けする。先生が介入するのは大きな賭けになる。

優花・ 私も気付いて見守っており、学校では何事もなかったんだけれど、学校外でいろいろあったようで、C子さんのお母さんが、娘の変化に気付いて、学校に相談にみえた。

美咲・ LINEとか塾とか、子供の世界は学校だけではないから。

優花・ そうなのよ。子供はとてもよくわかっている。先生や大人の前では問題行動を起こさない。だから、このまま放置したら、いじめや不登校につながっていくと感じて、A奈さん、B美さん、C子さんの3人を話し合わせたいと思ったの。

美咲・ 当事者の話合いが一番いいよね。先生は見守るだけ。

優花・ そう。でも、その時間ってとれないじゃない。そのことを学年主任に相談したら「その問題は、“鉄は熱いうちに打て”だよ。すぐに自習にして3人を話し合わせなさい。子供たちは私が見ているから」と言ってくれたの。

美咲・ 優花ちゃんの学校の協力体制ってすごいね。

優花・ あれはありがたかった。3人に私が加わり、話合いをしたところ、それぞれが誤解していることがわかり、3人は和解したの。みんな泣いていた。

美咲・ よかったね。やっぱり、友達同士、仲良くしたいんだよ。

優花・ その後は、クラスの雰囲気もよくなって、とてもいい2学期になったんだ。美咲ちゃんは何かあった?

見栄なのか保身なのか、真意がわからず…

美咲・ 個人面談で大きな気付きがあった。後味悪い話だよ。

優花・ どんなこと?

美咲・ う~ん。なんというか……そもそも、私たちは“先生”だから、嘘をつかずに仕事をしているでしょ?

優花・ そうだね。正直でいないと、あとで大変なことになるし、そもそも、嘘をつかずに生きてきた。

美咲・ そうだよね。私も嘘はつかない。でも、保護者の中には、わが子を守りたいのか、見栄を張りたいのか、嘘をつく人が結構いるとわかったの。

優花・ あ、それは私も感じた。

美咲・ 生活習慣で嘘をつくのはいいのよ。「朝ごはんは食べません」とか「深夜までスマホ見ています」って先生の前では言わないじゃない。でも、家庭学習の提出物を全く出していないのに、「やっています。ウチの子にはさせています」と言ったり、塾に行っているのに「学校の勉強が一番大切ですので、塾には行っていません」と言ったり、何の意味もない嘘をつく保護者が何人かいて驚いたよ。

優花・ 子供は嘘をつく親の背中を見て育つんだね……。

美咲・ やはり、嘘をつく保護者の子供は、それなりに問題があることが多いよね。ごめんね、後味悪い話で。

優花・ ううん、いろんな人がいるから、世の中が成立しているのは学びだね

美咲・ 最初の話に戻るけれど、嘘をつかないってりっぱな長所だよね。所見欄に「嘘をつかないところがいいですね」と書ければいいのに。

優花・ 書けないけれどね(笑)。成績をつけて、いろんなことが見えた。3学期も楽しみだね!

美咲・ 子供たちの成長、自分の成長を観察していこうと思っているよ。

取材・文/前川亜紀

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